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【音楽×珈琲 鑑賞録】8月2日~ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 『ピアノ・ソナタ』第8番「悲愴」

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【152日】
8月2日のテーマは、【作曲・演奏】

とりあげる作品は、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン /
『ピアノ・ソナタ』第8番「悲愴」

です。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
Ludwig van Beethoven
1770年12月16日頃 - 1827年3月26日
ドイツの作曲家、ピアニスト

今回とりあげるベートーヴェンの楽曲は、ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『大ソナタ悲愴』(Grande Sonate pathétique)
1798年から1799年に作曲されたといわれています。
出版されてから今現在にも人気の衰えないピアノ曲で、ベートーヴェンの三大ピアノソナタのひとつにして人類の至宝ともいえる楽曲でしょう。

課題図書「366日の西洋音楽」には、ハ短調に注目した解説があります。
ベートーヴェンの時代には調(Key)は特定の感情を表す「調性格論」というものがあったらしく、ハ短調といえば「悲愴な感情」を表していたといいます。
"pathétique"という言葉は多義的で、悲しくいたましいというものだけでなく、喜びなどにおいても使われ、心が揺さぶられている状態を指すもの。
言葉を分解すれば、
"path"は「道」、"éthique"は「倫理」を意味しています。
「倫理の道」が「悲愴」だと意味づけられれば、とても味わい深いタイトルです。

当時のベートーヴェンは二十代後半ですでに難聴に悩まされていました。
悲愴感でいっぱいだったのかもしれません。
第一楽章の速度記号にグラーヴェ(grave)が指示してあり、冒頭から重々しい雰囲気を表現するCmのフォルテピアノの音がきます。
そこから展開される音響はベートーヴェン自身の運命を指し示しているかのようです。
苦難で悲観にありながら、主体的で意志の強さがある。
自らが信じる倫理の道、pathétique。いい言葉です。

日本語だと、悲愴と悲壮でちょっと意味が違いますよね。
「悲愴」は「ただただ悲しい」ことを表現していますが、
「悲壮」は「悲しい中にも雄々しくりっぱなところがあること」
ベートーヴェンの楽曲は「悲壮」を意味するところにある気がしますが、
字づら的には「悲愴」がいいのは確か。

いずれにしても、どちらの意味に捉えても音楽の良さは変わりません。
わたしたちが行く道にもpathétiqueはあります。
だからこそ、この音楽はいつまでも鳴り止むことがなく、わたしたちの胸に響いてくるのだと思います。

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