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【音楽×珈琲 鑑賞録】11月16日~ベドルジハ・スメタナ オペラ『売られた花嫁』

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【46日】
11月16日のテーマは、【周辺】

とりあげる作品は、
ベドルジハ・スメタナ /
オペラ『売られた花嫁』

です。

ベドルジハ・スメタナ
Bedřich Smetana
1824年3月2日 - 1884年5月12日
チェコの作曲家・指揮者・ピアニスト

『売られた花嫁』(Prodaná nevěsta)は、チェコの代表的な国民オペラ作品として名高い3幕のオペラ・ブッファ作品です。

台本作者はカレル・サビナ(Karel Sabina) 、1863年から1866年にかけて作曲され、1866年5月30日に初演された後、1870年9月25日にプラハの国民仮劇場において決定稿が初演されています。

スメタナにとっての代表作というだけでなく、チェコの国民にとっても国を独立に促した音楽であるとして重要な作品です。
当時のチェコは、啓蒙専制君主から汎スラブ主義への運動が加速し、チェコスロバキア共和国独立に向かうナショナリズムが芽吹いていました。
スメタナはその機運と展望に希望を見出し、民族のための音楽を模索します。

スメタナの場合、作曲技法において「民族芸術は現代の作曲技法を採用すべき」と主張していて、具体的な場面描写以外での民謡を引用しませんでした。
この作品では、当時主流であったロマン派音楽でボヘミアの農村を描写し、全編チェコ語のオペラ。
こうした音楽が流布したことで、チェコ国民音楽もロマン派音楽の一派として拡がっていき、ヨーロッパでの認知度を高めました。

スメタナのすごいところは、運を自ら引き寄せる気概です。
当時のチェコの人々はチェコ語よりもドイツ語が主流で、母国語で表現するのは難しいなか、スメタナは日夜チェコ語を勉強し、話すようにしてものにしています。
そうして培われたチェコの言葉を使い、世間に拡めるべく流行りのロマン派をとりいれた音楽をつくる。
発表当時の初演では普墺ふおう戦争前の緊張感と、年間最高の気温だったらしく、閑古鳥が鳴いてしまったそうですが、諦めず改訂し、4年後の公演で大成功を収めています。
政争に揉まれながらも挑戦し、自らの立ち位置を確立しただけでなく、チェコ独立の象徴のような音楽を手がけたうえで、後進への道筋をつくった偉業は計り知れません。

社会や環境は、個人のチカラで変えることはできないように思えますが、個人が仕向けたベクトルが契機になって社会を変えることがあります。
スメタナのこの作品の例はタイミングがよかったのかもしれませんが、スメタナの祖国を大事にする想いと行動が社会を変える機運となったことに変わりはありません。

もし変えたい変えるべきものがあると心から思えるならば、このスメタナの姿勢は大いに学ぶところがありますね。

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