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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月12日~パブロ・デ・サラサーテ ツィゴイネルワイゼン

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月12日のテーマは、
【音楽史】
とりあげる作品は、
パブロ・デ・サラサーテ /
ツィゴイネルワイゼン

です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

パブロ・デ・サラサーテ(Pablo Martín Melitón de Sarasate y Navascuéz)
スペイン生まれ。
表題曲は、1878年に完成した管弦楽伴奏付きのヴァイオリン独奏曲。
題名は「ジプシー(ロマ)の旋律」という意味。

冒頭の旋律から馴染み深い名曲ですが、展開が目まぐるしく、印象的なフレーズかつ超絶技巧の目白押しなので聴いていても飽きません。
サラサーテ本人の演奏も聴いてみましたが、さすが「本人が弾いてみた」というもので、素晴らしい演奏と歴史を体験することができます。
上記のイツァーク・パールマンの動画も演奏が素晴らしく、ユーモアと表現力に溢れていて見事です。

それにしても、この楽曲の冒頭から中間部の旋律は人生の悲哀部分をクローズアップしてしまうような印象があるのはなぜだろう?と思ってしまいました。
人によって、国によって印象が異なるのはもちろんあると思いますが、この胸を締めつけるようなフレーズは万国共通で悲しみを誘う気がしています。
それが後半部分になると、急速なフレーズになり、コミカルなタッチになり、怒涛の展開で幕引きとなります。
鈴木清順監督の映画は、ツィゴイネルワイゼンのタイトルで映像を充てたわけですが、可視化すると、より一層この旋律の悲哀が増されて狂おしいものです。
映像で観て、この情感に浸るのもよいですが、今回一通り聴いてみて、ハイフェッツの音源がもっとも胸を打つものに感じました。

4:37あたりからの、か細くも哀切に溢れた演奏は、
生きとし生けるもの常に道半ばにあり、過去にはもう戻ることができない。
という事実を突きつけられている感覚があります。
悲哀に暮れそうになりながら、それが急展開するフレーズで一気に駆け抜ける。
まさに人生を正視するような楽曲だとまざまざと思い知らせました。

この演奏に出会えたことはある意味幸運というもので、
時折、聴くべきときに聴き直したいものだと言えます。
また、サラサーテ本人の演奏を100年越えて、思うがまま聴けるという時代は、幸福でありながら、一介の情報として受け取るだけになってしまうことを危惧してしまいます。
出逢いやめぐり逢いといった、思いもよらないことに深く感慨を落とし込む楽しみが持てること。ある意味、悲しみに暮れるという時間もかけがえのないもので、この感慨に浸れるだけの人生を歩めるようにしたいと思えるからこそ、失敗だらけの行動も楽しめるというものです。

ぜひ上記のような音楽から、「自分の人生って・・・」と問いを立てることに楽しみを見出していただきたいと願っています。

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