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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月13日~アルヴォ・ペルト ヨハネ受難曲

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月13日のテーマは、
【主題】
とりあげる作品は、
アルヴォ・ペルト /
ヨハネ受難曲
です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt)
エストニア生まれ。
ヨハネ受難曲は、新約聖書「ヨハネによる福音書」の18-19章のイエスの受難を題材にした受難曲。最も有名なものはヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品。
ペルトの『ヨハネ受難曲』はバッハのような感情の起伏がなく、内省的。
ペルトの表現は、ティンティナブリの様式と呼ぶ。(ティンティナブリは「鈴の音」の意味。)特徴は、簡素な和声、非装飾音符、全音階的旋律、三和音がしばしば用いられ、単調なリズムなどが挙げられる。

アルヴォ・ペルトの名言
"I have discovered that it is enough when a single note is beautifully played."
「単音を美しく奏でれば十分だと気づきました。」

ペルトの経歴を知ればお分かりになるかと思いますが、作曲家としての才能を持ちながら、エストニアというソビエト連邦の支配下にあった国で、感性を磨く人生を歩んだようです。それからオーストリアのウィーンに移住、ベルリンでの活動へと変遷していきました。
つまり、才能の塊が特異な場所で錬成された結果、つるんとしたミニマルな音楽に落ち着くという、まるでフリーザ最終形態といわんばかりの作曲家といえましょう。

バッハの受難曲は聴いていて「名曲」と感じる旋律がある一方、
ペルトの受難曲は「敬虔さ」を感じる旋律があります。
音楽が心を振るわすもの、感動をもたらすものであるなか、この敬虔な意思を歌声で表す手法、音楽のアートを一周して基本に立ち返った構図です。
もはや華美な装飾は不要であり、削ぎ落とされた美というもの。
この音楽性は、宗教観の垣根を超えて、共通善に近しいものを見出してしまう。
作品を聴いて、"Bravo!"と言うより、"Oh My God!"と言いたくなる。

これもまた別角度の芸術です。
定まらない人の心というものが、いかに救われたがっているのかを知らしめるものです。
そして、実はその解法があるんじゃないかと思わせてくれる楽曲の仕立ては、まさに天才の所業だと思わざるをえません。

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