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【音楽×珈琲 鑑賞録】9月23日~滝廉太郎 花

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【100日】
9月23日のテーマは、【音楽史】

とりあげる作品は、
滝廉太郎 /

です。

瀧廉太郎
1879年8月24日 - 1903年6月29日
日本の音楽家、作曲家

今回とりあげる滝廉太郎の「花」は、1900年(明治33年)11月1日付に共益商社出版から刊行された歌曲集(組歌)『四季』の第1曲です。
「春のうららの隅田川」から始まる歌詞で有名な作品ですが、あまりに教科書的な学びしかしていなかったため、改めて学び進めていくと知らないことも多く、感慨深いものがありました。

歌曲集『四季』の曲構成は、
第1曲が「花」(作詞:武島羽衣、女声二部合唱とピアノ)、第2曲が「納涼」(作詞:東くめ、独唱とピアノ)、第3曲が「月」(作詞:瀧廉太郎、無伴奏の四部合唱)、第4曲が「雪」(作詞:中村秋香、四部合唱、ピアノとオルガン用)。

第1曲目の「花」が有名すぎて他が影に隠れてしまっていますが、この組曲は音楽性の起伏に富み、捉えどころが難しい音階もあって、他に類をみない音楽に仕上がっています。
「花」のようなバロック的なメロディで美しく、聴き馴染みよいものが取り上げられがちですが、滝廉太郎の真骨頂は、オリジナリティ溢れる音像と日本語の純真な融合です。
滝廉太郎自身、
「日本の歌曲は、教育用の学校唱歌ばかりで質の高いものが少ないため、微力ながら日本語の歌詞に作曲した曲を世に出すことによって、日本歌曲の発展に寄与したい」
と発言した記録もあり、いかに国語としての日本語、そして日本国ならではの音楽を大事にしたかったかが窺い知れます。

この機会に滝廉太郎の音楽34作を聴いてみましたが、軍歌や民謡、雅楽など伝統の邦楽を基底にしながら、独創的なメロディは少なからず西洋の風が影響を感じさせます。
年代を追うごとに世界観が拡がり、唯一無二の音像が現れてくるのが聴こえてくるなか、23歳という若さで亡くなり、作品も34作しか残っていないというのはほんとうに惜しいとしか言いようがありません。
立場からしてみても、日本の音楽教育の道筋を描いていた人であり、滝廉太郎の音楽の世界観が日本にもっと浸透できていたなら国民の文化的価値観は違ったでしょう。

今回の機会に改めて遺作の「憾」(うらみ)を聴き、まさに日本人的美意識とショパンのピアノ曲と思しきロマン派の融合作品で感動しました。
最終音のレ、ニ短調(D Minor)の音像がこの世の無常さと儚さ、その無念を叩きつけるかのようで、聴くと胸に迫るものがあります。

改めて今ある生を噛み締めて、この国、この世界で生き抜くことを考え、限りある時間を大切にしたいと思う一日でした。

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