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【音楽×珈琲 鑑賞録】2月28日~ ポール・デュカス 交響詩『魔法使いの弟子』 × 重澤珈琲マンデリンとあさくまブレンド

音楽観を鍛える鑑賞録。
それにあう珈琲をそえて。
2月28日のテーマは【ジャンル】

とりあげる作品は、
ポール・デュカス /
交響詩『魔法使いの弟子』

 ×
重澤珈琲マンデリンとあさくまブレンド
です。

ポール・アブラアム・デュカス
Paul Abraham Dukas
1865年10月1日 - 1935年5月17日
フランスの作曲家。

今回とりあげるポール・デュカスは、極度の完璧主義者として知られ、自らが佳作と認めない作品は生前にすべて破棄してしまい、13曲しか作品を遺していないそうです。
この交響詩『魔法使いの弟子』は1897年に作曲され、自信作のひとつ。
これがのちの1940年、デュカスの死去から5年後、ディズニー映画『ファンタジア』でミッキーマウスが「魔法使いの弟子」役を「演技」したことにより、いっそう有名になったそうです。
生前は、パリ音楽院での教授業を営みながら、1年に1作ペースで作品をつくるスタイル。制作は完璧主義者というパーソナリティに「トム・ショルツかよ。」と思わされましたが、1920年代に大半の作品を破棄したというエピソードを鑑みると、見えないところで泥臭く制作を続けていたんだろうなぁと、わたしとしては襟を正す気もちになりました。

偉大なアーティストが全身全霊をアートに捧げ、糊口をしのぐにやっとの生活をしたエピソードも美談に感じますが、
デュカスのようにセキュア・ベースを用意しておき、プライベートの時間において未来に遺したい音楽を魂こめてつくったという選択も学び深いところがあります。
こういった「二足のわらじ」の選択は、ややもすると中途半端な仕事になりがちです。

デュカスは孤独を愛したとありますが、孤独な時間は制作に努めたのでしょう。
その結果として後世に遺る曲が書けたのは間違いありません。
デュカスもべつに孤独になりたくてなっているわけではなくて(畏友のドビュッシーがいたわけですし)、天命にちかい使命感にかられて曲を書いていたのではないでしょうか。そしてその使命感が強いがために、もがき苦しみ、選抜した。
多作だったかどうかは窺い知れませんが、苦悩した時間は他のアーティストと引けをとらないでしょう。その姿勢を翻せば、「わたしのライフワークはなにか?」という問いに真摯になります。

ライフワークをベンチマークする際、たくさんの輝かしい栄光をもつアーティストから知己を得ます。なかでもデュカスの姿勢からは、「ほんとうに遺すに値するアートとはなにか」という問いと向き合うことになります。
ハードなライフワークに身をやつすのであれば、むしろ心身ともに健やかでないとできるものではない。だからこその「両利きの経営」。そしていずれにしても妥協のない姿勢こそ学びえたいポイントです。

『魔法使いの弟子』という軽快な交響詩にあって、その実は圧倒的な熱量に満ちている神秘の音楽でした。

音楽にあう珈琲を考えてみる

このデュカスの音楽を受けて、淹れる珈琲も思考してみましょう。
完璧主義の姿勢とは妥協を許さず、岩をも穿つ雫のように地道なもの
ぜひこの心情を養えそうな珈琲抽出方法の「コーノ式点滴抽出法」を試してみてください。
正調コーノ式の細かいルールはあるものの、要は「コーヒー粉にお湯を染み渡らせる」ことが重要です。じっくりと一滴一滴したたらせ、ドリッパー内でコーヒー粉からコーヒー粉へ湯を伝播させる。そうして抽出される濃厚なコーヒーエキスの総和がコーヒーになるといった具合です。
藤岡弘、さんのやり口が印象深いですが、何十分もドリップし続けると空気に触れる時間が長くなるため、酸化し味が劣化してしまいます。
適切な時間、適切な量をベースにしたうえで、丹精こめる。
うまくできると、馥郁たる香りとコクのある、唯一無二の珈琲ができあがります。
なんだか示唆深いですよね。

今日の珈琲は、
KONO コーノ 名門フィルター 2人用(MDK-21)で淹れました。

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重澤珈琲マンデリン10g、あさくまブレンド10g、合計20g
5分かけて230ml抽出。
特別ではある。けれど完璧じゃない。
まだ修行が足りません。
一筋縄ではいかない点滴抽出。
ぜひその魔性の魅力をお試しください。


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