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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月3日~クロード・ドビュッシー 交響詩 『海』

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月3日 本日のテーマは、
【周辺】
とりあげる作品は、
クロード・ドビュッシー /
交響詩『海』

です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

クロード・ドビュッシーが1905年に発表した、
"海、管弦楽のための3つの交響的素描"
(フランス語: La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre)
第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」
第2楽章「波の戯れ」
第3楽章「風と海との対話」
1. De l'aube à midi sur la mer
2. Jeux de vagues
3. Dialogue du vent et de la mer
演奏所要時間は23分~24分。

とても詩的で、たゆたうような海を思い浮かべられる広がりと、幻想的な雰囲気のある交響曲でした。

この楽曲の初版スコアの表紙には、葛飾北斎『冨嶽三十六景』の1つ「神奈川沖浪裏」がカバーになっており、日本人としては嬉しい仕様になっていました。
ドビュッシーの部屋にはレプリカの浮世絵が飾られており、『海』というタイトルを踏まえると、なんらかのインスパイアがあるのではないか、と推測したくもなります。

ドビュッシーは言及こそしていませんが、少なくとも、この絵はきらいではなかったとは思います。そして、ことヨーロッパの人が極東日本のアートを愛でてくれていたという事象は、思いを馳せるに、よい問いを立てさせてくれます。
日本のアートを世界が認め、誇れるものになるにはどうしたらよいか?
この問いの解をしばらく考えていたら、ちょうどよいタイミングで、
"村上隆×みの"の対談動画の会話がリンクしました。

上記の対談は、まさに"日本アートの海外での勝ち筋を考える"という内容で、文化や人種観や哲学、宗教観を含めて非常に示唆深い。
今日のトピック、ドビュッシーの交響詩「海」から翻すと、
なぜドビュッシーは、日本のアートをスコアの表紙にしたり飾りたいと思えたのか。
いわゆる"ジャポニスム"の影響が色濃いわけですが、それでも美的感覚を刺激し、飾るに値するレベルの愛着への昇華はどう醸成されたのか。
おそらくは、大胆でダイナミックなタッチと色彩、奥行きを感じさせる描写など、さまざまなセンスのよさで説明がつけられそうですが、誰しも後づけで良さを評価されるのではなく、現行で、ぐうの音も出ないかたちで評価されたいもの。

そのチャレンジをするに際して、
このドビュッシーが描いた交響詩『海』はなんらかのヒントになるのではないかと思うのです。
フランス生まれのドビュッシーが浮世絵を愛でていたという事実は、現在の日本文化がフランスにうけていることになんらかの寄与があると思います。
理解されたいのなら、理解する。
その足がかりとして、ドビュッシーの音楽から学ぶべき点は大いにありそうです。

時代が回り回って、評価されるということはアートの世界ではよくあること。
しかし、死して完成するアートは、本人は永遠に窺い知れないという事実がある。
もういいかげん、アーティストが無念のまま人生を終えないように。
真善美の発露か否かを見定められる審美眼のアップデートを図っていけるよう努めたいと思いました。

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