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【音楽×珈琲 鑑賞録】8月30日~ヨハネス・ブラームス 大学祝典序曲

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【124日】
8月30日のテーマは、【作曲・演奏】

とりあげる作品は、
ヨハネス・ブラームス /
大学祝典序曲

です。

ヨハネス・ブラームス
Johannes Brahms
1833年5月7日 - 1897年4月3日
19世紀ドイツの作曲家、ピアニスト、指揮者

今回とりあげるブラームスの大学祝典序曲ハ短調 作品80 (Akademische Festouvertüre c-Moll op. 80)は、悲壮感をたたえた『悲劇的序曲』(Tragische Ouvertüre)作品81と対になる、演奏会用序曲のうちの一つです。

この楽曲のエピソードは、
1879年、ブラームスがブレスラウ大学から名誉博士号を授与された際に、感謝状を書いて送っただけに留めていました。
しかしながら、以前ケンブリッジ大学からも無償の名誉博士号を授与されたことがあり、申し訳ないなーと思っていたらしく、推薦人で支持者のひとりであった指揮者のベルンハルト・ショルツに相談したところ、「曲を書いたらどうだ」と言われ作曲したという経緯があります。

そして出来上がった楽曲が、この大学祝典序曲と悲劇的序曲。
大学祝典序曲を「笑う序曲」、悲劇的序曲を「泣く序曲」と、自ら形容したくらい明暗分けて創作しています。
今回とりあげている大学祝典序曲は、約10分の演奏時間で、学生歌から主題を引用しているのが特徴です。
ただ主題を抜き取り、装飾をあてがったというわけではなく、対位法(複数の旋律が独立して鳴りながらも調和感のある技法)や、主題労作(主題となるモチーフを曲の中で散らして構成すること)という、やっつけではなく、一筋縄でもない音楽性に富んだ作品を創作してしまうのは、真面目なブラームスらしさが表出しているものといえましょう。
快活で明快な音楽で、10分の演奏時間のなかで聴かせどころも多く、大団円的に帰結するので、今日のオーケストラレパートリーにはうってつけの名曲だろうな、と思いました。

翻して、なんだかんだ誰かに望まれて曲を手がけた方がコンセプトも生まれ、気合いも入り、聴き心地の良い音楽ができるものなのだろうな、と思いました。
もちろん、自身のアーティスト性の粋をエゴイスティックに発揮して、生まれ出るものも、古今東西、類を見ない作品に仕上がることもあり、一概にアートワークを規定すべきではありませんが、当人以外が触れることを前提にする限り、外圧は必要不可欠です。

悲喜交々。
感情に真摯に向き合い、なぜそう感じたのかと思いを来たす。
他者との関わりを想いながら、手がけるものはポジティブもネガティブもどちらもいけること。アーティストとしての造形の深さは経験値の深さに起因するものだと思わされました。

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