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【音楽×珈琲 鑑賞録】6月29日~フランシスコ・タレガ アルハンブラの思い出

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【186日】
6月29日のテーマは、【周辺】

とりあげる作品は、
フランシスコ・タレガ /
アルハンブラの思い出
です。

フランシスコ・タレガ
Francisco Tárrega
1852年11月21日 - 1909年12月15日
スペインの作曲家、ギター奏者

「アルハンブラの思い出」(Recuerdos de la Alhambra)は、1896年にタレガが作曲したスパニッシュ・ギターの名曲です。
タレガ自身「ギターのヴィルトゥオーソ」「ギターのサラサーテ」という異名を持つほど名手でした。
10歳にして神童と呼ばれ、バルセロナでカフェやレストランでギターを演奏していたそうです。
22歳でマドリッド音楽院に進学し、ギター教師として生活するなかでこの音楽は生まれました。

この「アルハンブラの思い出」は、延々と続くトレモロ奏法が特徴ですが、クラシック・ギターの名手がこぞって演奏をしているので、多くの人が聴いた覚えのあるものではないかと思います。
改めて、哀愁ある美しいフレーズを傾聴すると、トレモロ奏法と分散和音の意味合いに思いを馳せてしまいます。
トレモロ奏法で鳴らされるフレーズは、どんなギターの名手でも一様に同じ音色にならず、ときにミストーンをはじいてしまったりします。それが悪いわけではなくて、まるで日常の営みのように、一時も同じ時間はないという示唆、刹那の連続を想起させるものにも思えます。
そのトレモロ奏法が縦横無尽にメロディを奏でるなかで、ベース部分と和音が思い出を切り取った写真のように、区切りや節目を表しているかのようです。

人生の悲喜交々を表現しているといえば大げさかもしれませんが、
100年以上経ってなお弾き継がれ愛聴されているのは、音楽の響きから彷彿とする物語との重ね合わせゆえかもしれません。

フレーズのスケールがイ短調のため、日本人にも馴染む哀愁がありますし、ナイロンガットの音色を聴くだけでノスタルジーを誘うのは、この楽曲が由縁なんじゃないかと思うくらいです。
クラシックギターではお馴染みの曲であり、トレモロ奏法はソロギターではよく聴かれるものかもしれません。ところがポピュラーミュージックになると途端に取り入れられている楽曲は少なくなり、ニュアンスでの用途がほとんどです。
こうした歴史と意図を汲んだ奏法として取り入れるのも考えかたとしてストックしておきたいと思います。

「すべての1音1音に同じものはない」という事実。
これが表現にしっかり落としこまれ、認知と感動を呼び起こす作品づくりに励みたいものですね。

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