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【音楽×珈琲 鑑賞録】12月7日~柴田南雄 交響曲『ゆく河の流れは絶えずして』

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【25日】
12月7日のテーマは、【周辺】

とりあげる作品は、
柴田南雄 /
交響曲『ゆく河の流れは絶えずして』

です。

柴田 南雄
1916年9月29日 - 1996年2月2日
日本の作曲家、音楽評論家、音楽学者

ゆく河の流れは絶えずして』は1975年、昭和50年記念作賭して中日新聞から依頼を受けた柴田南雄が作曲した合唱交響曲です。

三大随筆のひとつ、鴨長明の『方丈記』をテキストとして作曲、全8楽章構成で、混声合唱を含む大規模編成のオーケストラです。
演奏時間が70〜90分と、公演するには規模が大きすぎるし長すぎるため演奏された機会は数えられるほどのようです。

柴田南雄の音楽観と西洋音楽を経た近代日本音楽の歴史を総括するような作品で、第1楽章から第5楽章までを第1部として、古典派からロマン派、そして20世紀の現代音楽が展開しています。
そして、第6楽章から第8楽章が第2部となり、方丈記の名文を引用しながら、さまざまな混声合唱を聴かせます。
総じて、前衛的で大掛かりな作品に仕上がっています。

映像をみると、これこそ20世紀昭和の日本の雰囲気をびしびし匂わせ、懐かしくもあり、良くも悪くも日本独特のらしさが垣間見えます。

最近、中田敦彦さんのYouTube大学で「方丈記」が取り上げられ興味が湧いたため、読んだ記憶がなかった「方丈記」を読んでみたら非常に面白く、感銘を受けていたタイミングでした。
今回この交響曲を聴いてより日本独自の文化を考え、自分もなにか寄与できるものはないかと思索しています。

冒頭の名文、
”ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。”

交響曲では繰り返し歌われていますが、このメンタリティが現在でも延々と続いていることに驚かされます。
いま流れている時間、物事のすべては変化しているというのに、その残像に延々と思い耽っています。
観ていた映像の時代とは明らかに趣味嗜好も雰囲気も違いながら、なぜか過去の残滓にすがり、現状を維持しようとしています。
維持したいという行動はすでに過去に逸していて、止まっているというよりむしろ後退していることを改めて見つめ直したいものです。

方丈記が書かれた1200年代の精神性から未だに学び育まれておらず、思考の進化の遅さに打ちひしがれてしまいますが、気づいたのなら変われる可能性が浮かびあがります。
昭和の50年に大々的に表現したものを経て、いま現在にできる最善の行動を果たしていきたいですね。

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