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カフェの音楽空間論 vol.1

ごぶさたしております。
久方ぶりにnoteを再開し、新たな論考を記録していきます。

私ごとではありますが、昨今はカフェ事業に務めており、
改めて飲食業のむずかしさとやりがいに
日々悪戦苦闘しております。
この現在進行形の試行錯誤がありながら、
やはり音楽にも興じたいという想いがあり、
いつかは自身の楽曲をパブリック・スペースで響かせたいという野望も携えてしまっております。
とはいえ、素人のよくわからない楽曲を鳴り響かせ自己満を晒し、来店されるお客さまに半眼の仏さまのような面持ちで視聴されても詮ないものです。
無音よりはマシなBGMとして鳴らすぶんには可能かもしれませんが、他者に音楽情動を喚起したい欲があるからこそ、音楽制作に興じたいところでもあります。

飲食業に右往左往する思考と行動の一方で、聴いてもらうに値する音楽も悶々と考えている今日このごろですが、よそはどうしてるのかしら?とふと思い当たりました。
クラシックやジャズなどの王道、ソフトなポップスやメロウなアコースティックもの、ビートルズやサザンオールスターズなど特定のアーティストをずっと流しているお店など多種多様。カフェのBGMに定番はあっても、ルールみたいなものはないように思われます。
とはいえ、ミュージックカフェ、ジャズ喫茶と銘打つ飲食店は分かりやすいですが、ボタニカルな雰囲気をもつお店や施設など、この場所にはこのような音楽がふさわしいというものがある気はします。
ことの大小ありながらも、BGMというのはその場所に携わる誰かの、何かしらの意思表示が成されているもの。ひるがえしてみれば、その空間の領域展開をしているひとのセンスを表しているということでもあります。

見出し画像のカフェは長野県佐久市にある"YUSHI CAFE"という、古民家を喫茶店にした、空間デザインが見事なお店です。
うかがったときに流れていたBGMをアプリの"SoundHound"で検索してみると、
アヌーシュカ・シャンカール / Land Of Gold
が検出されました。

こんなシブいアーティストを選出しているのか、ランダム再生されただけなのかをお伺いするには憚られたので、懐かしのスピーカーTRIOから流れる音楽を聴きながら思索に耽りました。
そこでふと思ったのは、喫茶中のこの空間において、いまここで誰ひとりこのとりまく音楽に想いを馳せているひとはいないだろう、ということ。
この音楽はまるで空気のような存在。しかも絶対に必要というわけではなく、ただなきゃないでさみしい程度のか細いもの。なんという"侘び"なものなんだろう。
制作者がそのときにもてる力を最大限に注ぎこみ創りあげただろうものが、なんということもなく流れ過ぎ去っていく。
これはもはや術式反転。
制作者の情熱と技術、時間を注いであればあるほど、聴者に関心をもたらさないことで侘び寂びが増幅されていく無量空処。
ようするに、最高の贅沢を無意識下で味わっているということに気づきました。

こうした気づきを経て、改めて環境音楽への興味関心が湧いてきたところです。
今後はカフェを主に訪れた場所におけるBGM、音楽性について気づいたことや学びをまとめていきます。
自分自身の作品づくりにおいてだけではなく、カフェや音楽に興味がある方にも何かしらの寄与ができるよう記していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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