【音楽×珈琲 鑑賞録】8月31日~クロード・ドビュッシー 喜びの島
音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【123日】
8月31日のテーマは、【周辺】
とりあげる作品は、
クロード・ドビュッシー /
喜びの島
です。
クロード・アシル・ドビュッシー
Claude Achille Debussy
1862年8月22日 - 1918年3月25日
フランスの作曲家
今回とりあげるドビュッシーの「喜びの島」(L'Isle joyeuse)は、1904年作曲。
イ長調で4分の4拍子という馴染みやすい調性と拍ながら、教会旋法であるリディアン(リディア旋法)に拠っていて、美しい響きのなかに幻想的な雰囲気が混在しています。
ドビュッシー作品らしく、美しい印象画的な作風ですが、モチーフになっているのは、アントワーヌ・ヴァトーの「シテール島の巡礼」(L'embarquement pour Cythère)です。
「シテール島への巡礼」なのか「シテール島の巡礼」なのかを考えることで、ヴァトーの作品だけでなく、ドビュッシーの「喜びの島」という作品においても味わい深くなります。
シテール島は、愛の女神ヴィーナスが上陸したという伝説をもつ、桃源郷のような場所です。
そこに向かう「シテール島への巡礼」と考えると、これからの愛を育む期待に胸を膨らませて旅立つ様が思い浮かびます。
かたや「シテール島の巡礼」と考えると、桃源郷での愛に満ちた日々を終え、日常へ帰ろうというような名残惜しげな様にも見受けられます。
現在の見解では、ヴィーナスの彫像が描かれているので、「シテール島の巡礼」とする傾向にありますが、こうした視点が180度変えることができる味わい深い絵画というのは非常に面白いものです。
そして、ドビュッシーがこの作品にインスパイアされ、作曲した年は1904年です。すでに人気のドビュッシーが、交響詩「海」、「映像 第1集」で新境地に踏み出す直前。プライベートにおいてエンマ・バルダックとジャージー島で逃避行中の時期に書き上げたものです。
ジャージー島で思いを馳せた「シテール島の巡礼」。
ドビュッシーの遍歴を思うと、「喜びの島」という作品の味わいが途端に複雑味を増します。
プライベートとアートは関係ないとすることもできますが、社会に生きる限り、経てきたものすべてが渾然となり、生まれてくるアートに意味が付与されます。
個人的には純度の高いツルツルな耽美的アートよりも、こうした角度を変えれば如何様にも見えるアートに美を感じてしまいます。
ドビュッシーの生き様はマネできませんが、作品の味わい方の面白さを窺い知る、よい機会でした。
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