見出し画像

【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月14日~アントン・ブルックナー 『テ・デウム』

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月14日のテーマは、
【ジャンル】
とりあげる作品は、
アントン・ブルックナー /
『テ・デウム』

です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

ブルックナーの名言
"It is no common mortal who speaks to us in this music."
「この音楽で語りかけているのは、一般的な人間ではありません」

ヨーゼフ・アントン・ブルックナー
(Joseph Anton Bruckner, 1824年9月4日 - 1896年10月11日)
オーストリアの作曲家、オルガニスト。
交響曲と宗教音楽の大家。

『テ・デウム』は、1883年~1884年にかけて制作され、まさしく当時の宗教曲の頂点を極めた楽曲。
聴けば力強い迫力と荘厳なシンフォニーに圧倒されます。
ブルックナーは、毎日祈りの言葉を何回唱えたかと記し、生涯敬虔なカトリック教徒で、音楽にその信心を捧げたといっても過言ではないでしょう。

偉大な音楽家とは、特別なことに没頭できたかどうかで、後世に語り継がれるのではないでしょうか。
作品のクオリティは当然重要ですが、なによりも、情熱を傾けた年月と技術、知識の重層さが作品をアートへと昇華させます。
ブルックナーの場合は明確で、"神”のために音楽を創り続けた功績がいまも遺っています。
上記の名言にある"mortal"は、
『死ぬべき運命の、死の、死にぎわの、死に伴う、致命的な、(死ぬべき)人間の、人生の、永遠の死を招く、地獄に落ちる、許されない』
という意味で、
"no common mortal"『一般的な人間ではない=神』にあたるのではないかと思い、邦訳を考えてみました。
(原典が探せなかったので定かではありませんが)
これは宗教観や信心深さが引き出したものかもしれませんが、結果的にカトリック教会の宗教曲、その集大成を遺したことは学び深いものがあります。

いまを生きるわたしたちは、かような「敬虔さ」をもつことができるものでしょうか?
「神は妄想である」と喝破してしまったのは、リチャード・ドーキンスですが、現代において、ブルックナーがもっていたアート的衝動の動力であった、「敬虔さ」を駆動させることは難しい。
その道のスペシャリストとして生きるためには、ジェネラリストとしての教養も求められます。それは、神を信じ神を否定する行為でもあります。
なにひとつ絶対はないと制限から解放されたいま、どこに向かえばよいかわからず彷徨っているのが現代人ではないかと思う節があります。

人間である以上、時代が進んでも悩み、迷い続ける生き物であることは間違いない。
もはや、その悪戦苦闘、試行錯誤の過程として作品を積み上げ続けることしかできないと開き直ってみる。
ブルックナーのような、『集大成、ここに堂々と完結!』はできなくても、『俺たちの戦いはこれからだ!エンド』も作品です。
それでいいとやっていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?