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【音楽×珈琲 鑑賞録】5月20日~ホアン・クリソストモ・アリアーガ 『交響曲』ニ長調

音楽観を鍛える鑑賞録。
5月20日のテーマは、【音楽史】

とりあげる作品は、
ホアン・クリソストモ・アリアーガ /
『交響曲』ニ長調

です。

フアン・クリソストモ・ハコボ・アントニオ・デ・アリアーガ・イ・バルソーラJuan Crisóstomo Jacobo Antonio de Arriaga y Balzola
1806年1月27日 - 1826年1月17日
スペインの作曲家
「スペインのモーツァルト」との異名をとる

アリアーガは20歳の目前に夭折したスペインバスク地方の作曲家です。
著名なクラシック音楽家のなかではもっとも早い死になっているのではないでしょうか。

13歳の時に作曲したオペラ「幸福な奴隷」がビルバオで上演されると、評判を呼び、支援を受けパリ音楽院に留学した先で亡くなったそうです。
死因は肺疾患とも慢性疲労とも言われていますが、定かではありません。
モーツァルトと同じ誕生日であったことから、「スペインのモーツァルト」と異名を付けられましたが、たしかに誕生日が同じだけで妙な親近感を覚えるものなので、本人も周りも意識した部分はあるでしょう。

今回とりあげる、交響曲ニ長調/ニ短調(Symphony in D Major/D Minor)は、1824年に作曲された、おそらくアリアーガの作品で唯一残った交響曲です。
ニ長調とニ短調が入り混じったもので、全体を通して雰囲気は統一感がありながら、気づくと長短の変化に面白さがあります。メロディも偉大な音楽家の影響を滲ませながら、荘厳さや流麗さ、優雅にも関わらず豪胆さも窺えて時代に左右されない音響があります。
これを十代で描き切ったというのだから、たしかに天才だったとしか言いようがありません。

翻して思うのは、あいも変わらぬこと。
「いつのときも何が起こるかわからないから、今できる最大限のことに力を尽くそう。」というもの。

アリアーガが経てきた経験や才能を思えば、更なる飛躍は間違いなかったでしょう。ただ、どんな理由かはわかりませんが、早くに病でこの世を去ってしまった結果があります。
そして、楽曲がとりあげられたのは、死して数十年後、スペインのナショナリズムを焚きつけるかたちで脚光を浴びました。
今現在では、そういった若き天才の作品とか、政治的背景などに囚われず聴くことができるかもしれませんが、その人その環境下で受け取る印象は変わります。
だからこそ、すべての人にとって人生は固有。今ここに在るものがすべてです。

わたしたち個人個人が努めることができるのは、今現在の行動のみです。
過去に学び、未来に想いを馳せて、現在に生きる。
アリアーガの作品を聴いて、このループを繰り返していることに気づくことができました。
今日も明日もいつまでも今の刹那の連続体。
それを肝に銘じて、現在に努めようと思います。

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