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【音楽×珈琲 鑑賞録】5月16日~アルバン・ベルク オペラ『ルル』

音楽観を鍛える鑑賞録。
5月16日のテーマは、【逸話】

とりあげる作品は、
アルバン・ベルク /
オペラ『ルル』

です。

アルバン・マリーア・ヨハネス・ベルク
Alban Maria Johannes Berg
1885年2月9日 - 1935年12月24日
オーストリアの作曲家

今回とりあげるオペラ『ルル』(Lulu)は、1929年から手がけたベルクの未完の遺作です。
虫刺されからできてしまった腫瘍が原因で、50歳という若さで敗血症により亡くなってしまいました。
偉大な作曲家の未完成作品を補筆し完成にもっていきたいと考える人は多いものですが、ベルクの『ルル』は、かなり特殊なかたちで補筆され完成されています。

ベルクの妻へレーネは、ベルクが亡くなった後も師匠であるシェーンベルク以外の補筆は許さんという姿勢でしたが、秘密裏に出版社ウニヴェルザールがフリードリヒ・チェルハへ補筆を依頼していました。
12年の年月をかけ、1976年にヘレーネが亡くなった後に『ルル』の3幕版を完成させたといいます。
へレーネが設立したアルバン・ベルク基金と当然揉めましたが、最終的に2幕までと3幕の補筆版とを分けることで出版を認めることに。
『ルル』3幕版は1979年に出版され、演奏されました。

最終的なゴールまでくれば、頑張るに値する補筆だと思えますが、
作品が生まれた1929年から1979年までの50年間、なぜここまで多くの人がこの作品に力を注いだのかが気になりました。

ひとつには、この作品がもつ「音楽性」にあるのでしょう。
師匠シェーンベルク譲りの十二音技法を利用したり、回文的音楽をシーンに合わせて用いるなど、手がこんでいます。
白眉なのは、「登場人物それぞれに固有の音列を与えている」手法です。
ややこしい設定なので詳細は省きますが、
ライトモチーフの手法として周到です。
知らなきゃ気づかない。
けど知らなくても、なんとなくテーマがあるように聴こえる音づくりになっていて、感嘆しました。

プログレ的要素がふんだんで、
学者的音楽家にはたまらん仕立てになっているのではないでしょうか。
数学の定理を追求する姿勢と同様、
知的好奇心を刺激する音楽性がこの作品の魅力のひとつです。

たまにはこうした難しい音楽に勉めるのも豊かな時間の使い方ですね。

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