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仕事・学び・人間関係・恋愛etc...それぞれの生活の場面で使う「強み」は違っているのか?を調べた論文

こんにちは、紀藤です。さて本日も強みの論文のご紹介です。今日の論文は、「生活の様々な場面で発揮される強みは、違っているのか?」という疑問について探求をした論文となっています。

同じ人を見ても「仕事」で発揮される強み、「家庭」で発揮される強み、「余暇」で発揮される強みは、それぞれ違っているような感じは、誰しもが多少あるかと思います。(仕事では「分析的な思考」を強みとして使うけれど、家庭では「愛情」を使っています、みたいな感じ)

そうした生活の場面ごとに発揮される強みを、203名の方を対象に調査をした、という内容でございます。ということで早速みてまいりましょう。

<今回ご紹介の論文>
『仕事、教育、余暇、人間関係といった生活領域における性格的強みと繁栄の関連性』
Wagner, Lisa, Lisa Pindeus, and Willibald Ruch. (2021). “Character Strengths in the Life Domains of Work, Education, Leisure, and Relationships and Their Associations With Flourishing.” Frontiers in Psychology 12 (April): 597534.


人生のさまざまな領域における「強み」の役割

性格的強みの発揮は、幸福や繁栄に関連があるとされ、先行研究でも明らかにされてきました。特に性格的強みは、「良い人生」に影響する要素として考えられ、幸福度との関係が示されています(Seligman, 2004)。この関係は、多くの論文で触れられています。例えば、VIAの性格的強みのアセスメントでは、好奇心、熱意、愛、感謝、希望といった性格的強みが、文化圏を超えて主観的幸福と一貫して最も強い関係を示しています。

本論文では、人生のさまざまな領域における強みの役割として、以下のような関連があると整理しています。

「仕事」と強み

これまでの研究では特に、「熱意」と「忍耐力」という性格的強みが、仕事に関連した成果(仕事満足度、仕事の意義、エンゲージメントへの認識)に関連しているとされています。

「教育」と強み

教育的文脈における性格的強みの役割は、主に青年を対象として研究されてきました。研究によれば、いくつかの性格的強みが、学校関連の幸福、積極的な学級行動、学業成績などの教育的成果と関連していることが示されています。 例えば、

・教育環境において一般的に関連する強みは忍耐力と学習意欲
・積極的な学級活動に関連した強みは慎重さと自己調整
・学業成績の一貫した予測因子として忍耐力
・大学での満足度は、希望、自己調整、熱意、忍耐力

といった性格的強みと高い相関があることが明らかになっています(Lounsburyら、2009;Karris Bachikら、2020)。

「余暇」と強み

余暇活動における性格的強みの役割について考察した研究はほとんどありません。ただし、世界的に評価された余暇時間の満足度は、好奇心、熱意、愛情、感謝、希望、ユーモアと正の相関があることが判明しています(Ruch et al.)。特に、好奇心、学習好き、美や卓越性の鑑賞といった特定の性格的強さは、文化的活動を伴う余暇活動でより一般的に関連性が高いようです(Ruch et al.)。

「親密な人間関係」と強み

「親密な人間関係」とは、家族や友人との親密な関係を指します。この領域では、誠実さ、熱意、愛情、優しさ、社会的知性、チームワーク、公正さ、リーダーシップ、許し、謙虚さ、感謝、ユーモアといった性格的強みと一貫して関連しています。

「恋愛関係」と強み

恋愛関係にある人やパートナーと同棲している人は、恋愛関係のない人や一人暮らしの人と比べて、いくつかの性格的強みの特性レベルが異なると報告されています。
 大学生を対象にした研究では、愛とチームワークにおいて高いスコアが報告されています(Baumannら、2020)。
 また、好奇心、学習好き、展望、熱意、愛、親切、社会的知性、チームワーク、自己調整、感謝、希望、ユーモアの性格的強みは、愛着回避または愛着不安と負の相関があることが判明し、恋愛関係の領域における関連性を間接的に裏付けています(Lavy and Littman-Ovadia, 2011)。
 さらに、愛情、チームワーク、公正さ、感謝、希望は、家族やパートナーシップに対する満足度と正の相関が報告されています(Ruch et al.)。

研究の全体像

さて、先行研究から上記のようなことがわかっている生活領域における強みですが、本研究は具体的にどのようなアプローチを行ったのでしょうか。以下、研究内容を示します。

参加者

スイスとドイツ在住者の成人203人(男性21.2%、女性78.8%)
・平均年齢は29.4歳
・大多数の被験者(69.5%)が現在教育機関(学校、大学、現職研修)に在籍し、パートタイムで勤務

調査方法

(1)性格的強み
※VIA-ISドイツ語版による性格的強みを用いました
(2)強みに関連した行動
※異なる生活領域における関連性と強みに関連した行動を測定するために、ACS-RS(Harzer and Ruch, 2013)を使用しました。
一つの生活領域における24の性格的強みのそれぞれの適用可能性を、(a)促進、(b)有用性、(c)重要性、(d)行動の4つの側面から測定することが行われました。
(3)繁栄(Flourishing)
※繁栄の測定には、ドイツ版Flourishing尺度(FS; Diener et al.)の8項目が使用されました。

結果

以下の研究の結果です。

わかったこと1:繁栄との相関が高い強み

繁栄との相関が最も高かったのは、希望、熱意、愛、好奇心、忍耐力、自己調整、チームワークといった性格的強みでした。

わかったこと2:強みの中で特に効果量が高いもの

「性格的強みの関連(図A)」について、最大の効果量である全体平均からの正の乖離が最も強かった項目は、リーダーシップ(生活領域:仕事)、学習好き(生活領域:教育)、創造性(生活領域:余暇)、愛(生活領域:親密な人間関係と恋愛関係)でした。
 「強みに関連する行動(図B)については、平均値からの乖離が最も強かったのは、「リーダーシップ」(生活領域:仕事)でした。

図A「性格的強み」と各生活領域の関連性
図B「強みに関連する行動」と各生活領域の関連性

わかったこと3:生活領域のごとの類似点と特徴

●生活領域間の類似点
「親密な人間関係」と「恋愛関係」という生活領域と、「仕事」と「教育」という生活領域には類似点があることがわかりました(一方、明確な違いも見られました)。一方、「余暇」の領域は、他の生活領域と比べて類似点が最も少ないことが示されました。

●生活領域ごとの特徴
 「仕事」という生活領域については、判断力、チームワーク、リーダーシップ、自己調整といった性格的強みが特に関連性が高いことが証拠として見つかりました。
 また「教育」では、慎重さと自己調整、判断力が他の生活領域よりも関連性が高く、好奇心との関連性も示唆されました。

まとめと個人的感想

各生活領域と強みの関連性について考慮することで、生活の様々なシーンで必要とされる強みがより明確になったと感じました。

改めて、人は多面的な存在であり、「一つの自己」は存在しないことを認識しました。また、これらの生活領域において発揮される強みの違いにも気づくことができれば、自分自身についてより深く理解することができると思います。興味深い研究でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

(余談:Noteの「AI添削」を使用して文章を書いてみたところ、通常よりも短い時間で書くことができ、テクノロジーの力を実感しました。このような方法も使えるな!と思いました)

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