「強みに基づいた効果的なフィードバック」の9つのポイント
こんにちは。紀藤です。本日も強み論文のご紹介です。ちなみに「強み論文100本ノック」と名したプロジェクトも、残すところあと8本・・・!
本業が忙しくなると、論文を読んだり、探したりする時間もなくなり、大変なこともありますが、それでもプロジェクトとして「やる!」と宣言することで、足を動かし続けることができます。
そうした強制力を元に行動した結果、読んでみると新しい視点や知識を獲得することになり、それが自分の知識の土台を強固にしてくれているように思います。最後まで、走りきりたいと思います。
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さて、本日ご紹介の論文ですが、2012年の組織における強み活用についての比較的初期のものです。「強みに基づいたフィードバックのための9つの提言」なるものが書かれており、参考になりました。ということで、早速みてまいりましょう!
30秒でわかる本論文のポイント
強みに基づくパフォーマンス・フィードバックは、従業員のエンゲージメント、モチベーション、職務満足度を高める可能性を秘めている。
しかし、管理職はパフォーマンス・フィードバックを行うことに抵抗を感じることも多く、不適切なフィードバックが行われ、悪い結果になることのほうが多い。
本論文では、従来の弱みベースのフィードバック(従業員の弱点に焦点を当てた否定的コメント中心)から、強みベースのフィードバック(従業員の肯定と励ましが中心)という、より建設的なアプローチへの転換について説明する。
その上で、強みに基づく効果的なパフォーマンス・フィードバックの実施方法について、研究に基づいた9つの提言を行う。
との内容です。やはり、強みに基づく効果的なパフォーマンス・フィードバックの9つの提言が気になりますね。早速みてまいりましょう。
パフォーマンス・フィードバックとは
パフォーマンス・フィードバックは、「ある基準を元に、従業員の行動と結果に関して、過去の行動に関して情報を伝えること」と述べられています。
そしてパフォーマンス・フィードバックの目標は、従業員 のエンゲージメント、モチベーション、仕事への満足度だけでなく、個人とチームのパフォーマン スを向上させること(Aguinis, 2009)とのこと。
しかしながらKlugeとDeNisi(1996)によると、131の研究において、業績フィードバックは3分の1以上のケースで業績を低下させる結果になったと結論づけているとのこと。うーん、フィードバックは昔から今に至るまで、実に悩ましい問題のようです。。。
管理職は、弱みに過度に焦点を当てすぎる?
そして、本論文の著者はこう述べます。
とのこと。また「弱点ベースのフィードバック」とは、「管理職は従業員の弱点(職務遂行能力、知識、スキルの不足など)を特定し、従業員が間違っていること、あるいは従業員が達成できなかったことについて否定的なフィードバックを行い、最後に弱点を克服することによって行動や結果を改善するよう求めること」としています。(Steelman&Rutkowski, 2004)。
弱点を従業員に知らせ、パフォーマンスを改善する動機づけになるという考えを持ち、そのようなコミュニケーションを取るのですが、その結果必ずしもよい結果にならないとのこと・・・。
その主な理由は、否定的なフィードバックは、不正確であると受け取られやるく、またそれを受けた人は受け入れにくく、意欲の低下、従業員満足度の低下にもつながる可能性があるからです。(ちなみに、これが悪いというわけではなく、あくまでもこうした可能性を孕んでいる、という話です)
「強みに基づいたフィードバック」の9つの提言
では、その代替案として、具体的に「強みに基づいた効果的なフィードバック」とはどのように行えばよいのか? 本論文では以下の9つを提言しています。
まとめと個人的感想
改めて、こうした9つの提言として示されると「型」のようなものが手に入ったと感じ、大変有用であると感じました。
一方、こうした論文のタイトルをみると、「強みのフィードバックだけすればよいか?」という話と誤解されるかもしれませんが、そういう話ではありません。上記の提言を見ても、「否定的アプローチは知識やスキルに紐づける」と行うことを否定しているものではありません。また、その後に続く別の論文では、強み活用と欠点修正の複合アプローチが最も成果が高かったという研究も紹介されています。
また、こちらは2012年の論文です。当時はまだまだ「強みの基づくアプローチ(フィードバック)」が注目され始めた時期のように見えます。それから10年以上経っているため、研究の世界では「強みに基づくフィードバックの効果」は確認されてきています。一方現場では「弱みを是正するパラダイム」しか持っていない管理職はまだまだ多いようです。
そんなとき、こうした論文の「そもそもなぜ強みアプローチが大事なのか?」「何をすればよいのか?」というメッセージは、納得感がありますし、新しい選択肢を示すためのきっかけになると感じます。何事も、初めての時はこうしたフレームがあるとチャレンジしやすくなるものですから、実に実用的な論文だと感じました。
そして、またこの後に続く論文で、これらの提言が検証されていくことをみると研究のバトンを感じるな、、、と毎度のことながら思った次第です。
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