書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く #8(第4章_前半)~強みにおける「行動の落とし穴 7選」~
こんにちは。紀藤です。本日も強みシリーズ「書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く」をお届けいたします。
さて、今回のお話は第四章の「強みにおける落とし穴、誤解」というタイトルの章です。強みの実践者が陥りがちな落とし穴や誤解をまとめた章で、読んでいると「あー、あるある!」と膝を打ってしまいました。
特に、強みの活用を支援している方にはお薦めの内容となっています。
ということで早速みてまいりましょう!
(前回までのお話はこちら↓↓)
強みにおける「行動の落とし穴」 7選
「強み」という言葉は、解釈の幅の広い言葉です。
よって「強みの活用を促す実践者(ストレングス・コーチなど)」にとっても陥りやすい落とし穴(行動)がいくつかあると述べています。今回の章では、一般的な落とし穴として7つが紹介されていました。
(以下、書籍から、私が読み取った意訳にて解説をしています)
1,表面的な強みだけ見る(Just show up)
なんとも曖昧なタイトルですが「ただ現れている表面的な強みのみしか注目しない」ということと言えそうです。強みは様々な種類、次元があり、文脈で現れる強みが違うものです。しかし、強みは曖昧で主観的な領域であるがゆえ、「私の強みは忍耐力です。以上!」みたいになってしまうことがある。しかし、それで終えては非常に浅い洞察となってしまいます。
よって、強みの実践者は、きちんと準備をして、クライアントの強みがどのような文脈で、どんな種類で、どのように立ち現れているかを見る必要があるようです。
2、弱点・欠点、弱みの補正をしようとする
これもめちゃくちゃあるあるの話ですが、VIA等の強みアセスメントで、「自分の下位の強みに注目してしまう」という現象です。正直、仕方ないところもあるのです。というのも我々は、生物学的に欠点や脅威などに注目するネガティブバイアスを持っており、長所より短所のほうが私達に強力に影響するから。
そのため、「VIAサーベイの下位の強みを上に引き上げたい」などの欲求がクライアントから出ることがあります。しかし大事なのは、クライアントの「特徴的な強み(その人の中核的な強み)」に注目することであり、それが自分の中で働いていることに注目させることが、その人の本来感・幸福感等にもつながります。よって上位よりも下位の資質にスポットがあたってしまう現象は適切に視点の変更を促すことが重要といえそうです。
3,理解する前に行動に移ってしまう
これは実践者あるあるですが、「VIAサーベイ」などの強みを特定させるアセスメントを行って、強みの探索を深く行わずに、すぐにアクションプランを考えようとする、というパターンです。
実践者がアクションに焦る理由は、クライアントを早く助けたい、クライアントが具体的な解決策を望んでいる、等様々な理由があります。いずれにせよ探索をスキップすると、クライアントが自分の強みを十分に理解しないまま行動に移ることになり、適切な行動を得られない(腹落ちしないアクションプランとなる)など、効果が十分に発揮されない可能性があります。
4,「何が上手くいかなかったか」から始めてしまう
私達は「できたこと」よりも「問題や困難」について話すことのほうが、信頼性が高いという認識を持っているようです。たしかに、批判的な側面を話したほうが知的に見えるなど、いくつかのメリットもある気もします。
しかし、強みに関していえば、ポジティブ心理学の基本的な原理から「何が上手くいったか?」から始めたほうが、考えがポジティブな方向に向かい、強みが強調されることに繋がります。
5,トップの強みについて厳格になってしまう
強みには、その人の中核的な強みを意味する「特徴的な強み(シグニチャー・ストレングス)」の重要性が何度も述べられています。一般的には上位5つの強みを意味する事が多いのですが、かといって「トップの強み(トップ5)にのみ固執して、他の強みを無視する」ということは望ましくありません。
なぜならば、ことVIAでいえば、「24のすべての強みが重要であるという原則」に反してしまうからです。その強みが中位・下位にあったとしても、クライアントはある文脈ではその強みを使っていることもある。その可能性を見逃してはいけません。
6,強みを過剰に使用してしまう
非常に代表的な強み活用の誤りなのですが、「強みを過剰に使うと、問題を引き起こす可能性がある」という話です。たとえば、「忍耐力が強い」というのも言い方をかえれば「頑固で頭が硬い」と見なすこともできます。
ポイントは「その強みを、いつ・どのように行うか」によって「強みの過剰使用」になる可能性があります。実践者はクライアントにそれを自覚させることが重要です。よって、実践者はクライアントに対して「手放しで強みを認める」のではなくて、「強みの過剰使用」についても指摘した上で、強みを適切に承認することが重要です。
7,指示的/権威的なアプローチをとってしまう
平たく言えば「強み教」のごとく「強みを使うことが大事なのだ!」と、ストレングスが目標になってしまうことです。性格(Charater)の心理学は歴史があり、権威的なアプローチで支配されてきており、時に探求するのではなく、押し付けになってしまう可能性を孕んでいます。
しかし、強みは探求するものであり、「あなたの強みはこうである!」というように、権威的なものになるのは望ましくありません。
以下、7つの落とし穴のまとめの表の引用です。
まとめと個人的感想
強みに関する研修を行っていると、特に「2、弱点・欠点、弱みの補正をしようとする」「6,強みを過剰に使用してしまう」というのは、多くの人が陥る落とし穴だと感じました。
一方、それ以外にも、「1,表面的な強みだけみる」とか「7,指示的/ケニ的アプローチをとってしまう」などは、強みの実践を支援する人にとっても陥りがちで、特にストレングスコーチの中にも「強みは絶対いいんです!」となってしまう人も少なくないようにも思います。
今回の書籍は「強みの実践者のための書籍」であり、かなりマニアックな本です。しかし、日本でもGallupのストレングス・ファインダー認定コーチなども増えており、少しずつ市場が広がっている気もしましたので、こうした知識のまとめは大変有益だなと感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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