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「マインドフルネス✕強み活用の実践(MBSP)」のやり方を全公開します

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日の論文は「マインドフルネスに基づく強みの実践(MBSP)」の具体的な方法論について記載された論文です。

別記事にて、MBSPを行った結果、幸福感・職務満足度・タスクパフォーマンスの向上に繋がったというスイスの研究を紹介いたしました。
なるほど、色々いいことがあるのだとわかったものの、具体的に何をどのように行うのかは説明がされていませんでした。

今日ご紹介する論文では、そのMBSPの全体プログラムから、セッションの標準的な内容、また応用編のプログラムまで記述されています。これは実践者としては役立ちそうで、気になるところです…!

ということで、早速まいりましょう!

<今回ご紹介の論文>
『マインドフルネスに基づく強みの実践(MBSP):幸福感を高め、問題を 管理し、肯定的な人間関係を高めるために』
Ryan M NIemiec & Judlth Lisssing(2016) “Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP) for Enhancing Well-Being, Managing Problems, and Boosting Positive Relationships.” Mindfulness in positive psychology,


「マインドフルネスに基づく強みの実践(MBSP)」とは何か

そして、マインドフルネスと性格的強みを融合させた実践。それが「マインドフルネスに基づく強みの実践(MBSP:Mindfulness -Based Strengths Practice )」であり、実践的なプラクティスとして注目されています。

ちなみに「マインドフルネス」は、リラックスをした、一瞬一瞬の体験に集中をすることを通じて、ストレスへの対処や幸福感などを高めるアプローチです。そして「性格的な強み」はポジティブ心理学における”背骨”のような重要な立ち位置を締めています。

両者には共通項目があるとされます。たとえば、「自律心」「好奇心」の性格的な強みは、まさにマインドフルネスの本質と近く、創造性や大局観、親切さなどの成果は、どちらもマインドフルネスと性格的強みがもたらす成果とされています。これらを統合し、相乗効果を狙った実践的アプローチがMBSP。様々な効果があることが知られており、その内容も近年発展してきました。

MBSPのアプローチの特徴

MBSPのアプローチは、以下の特徴を持つと述べられています。以下論文よりまとめてみます。

【マインドフルネスに基づく強みの実践(MBSP)のアプローチの特徴】
1,強みをターゲットにする

・参加者自身が選んだ特定の強みを意識的にターゲットにする。そのことを通じてVIA24の強みのいずれかの性格的強みを高める機会とする。

2,処方ではなく探索をする
・性格的強みの発見と適用は、開発しなければならない一握りの強みに焦点を当てるのではなく、「どのような状況で強みが活用できるか」という記述的で探索的なアピローチを優先させる

3,性格的強みの組み合わせを考える
・個人には異なる強みが複数あり、それらが文脈や個人差によって、現れた方が変わってくる。マインドフルネスの実践はこれらをサポートする。

想像通りですがマインドフルネスを通じて「強み」にフォーカスをすることに力点を置いているようです。具体的にやることは、後半にご紹介いたしますが、「強みの使い過ぎor使わなさすぎ」や「強みを活用した目標設定」など、現代的な強みのテーマを取り上げた実践となっています。

では、具体的にどのようなプログラムなのでしょうか? 以下詳しく見ていきたいと思います。

MBSPプログラムの概要

MBSPのプログラムは6カ国で実践され、異文化でのパイロット調査を含めてなども繰り返し実施されたコンテンツへと昇華されていきました。そしてマニュアル化された8週間の8つのセッションが開発されており、その内容が紹介されていました。こんな内容となっています。

(1)MBSPのプログラム全体像(コアトピック)

Niemiec(2014)によって概説されているMBSPプログラムが以下のものとなります。セッション1~2がマインドフルネスと性格的強みについての入門編。セッション3~8が統合と応用編となっています。1セッション1週間ごとに進める、合計8週間のプログラムとなっています。

<入門編>
セッション1:マインドフルネスと自動操縦
セッション2:あなたの強み
<統合と応用編>
セッション3:障害はチャンス
セッション4:日常生活におけるマインドフルネスの強化
セッション5:人間関係を大切にする
セッション6:黄金の平均を意識する
セッション7:本来感と良さ
セッション8:人生へのエンゲージメント

MBSPのコアトピック

思考の自動操縦、強み、障害、人間関係、本来感(自分らしさ)など、仕事などタスクベースのことではなく「自分自身を全体的に見つめ直すプログラム」という印象を受けました。

(2)標準的なMBSPのセッションの例

さて、次に各セッションがどのような流れで進むのか、についても紹介がされていました。各セッションには、「瞑想」「マインドフルネス/強みの統合のエクササイズ」「ディスカッション」「講義」などを組み込んだ構成が用意されています。以下は、標準的なMBSPのセッションの例です。

【標準的なMBSPのセッションの例】
パート1:オープニング瞑想
パート2:ディスカッション(全体と小グループ)
パート3:講義とインプット(コアテーマと新しいツールを提供)
パート4:体験(コアテーマについて体験する)
パート5:美徳の輪(マインドフルリスニング、強みの注目、感謝の練習等)
パート6:宿題について
パート7:クロージング瞑想

基本は、「瞑想」でサンドイッチしつつ、新しい考え方のツールを学び、実践するという構造になっているようです。これもトレーニングの王道のパターンのようにも見えます。

(3)統合されたMBSPのプログラム(10セッション)

これらを統合して、MBSPのプログラムを更に発展、統合させたモデルも開発・実践されているようでした。その内容としては、以下のようなものになります。

以下、1、2,3、7、8が「性格的強みの活用」がテーマで、4、5,6,が「マインドフルネス」がテーマとなり、9,10はどちらも活用した内容となっています。

【統合されたMBSPのプログラム(10セッション)】
1,特徴的な強みの使用
2,ストレングス・スポッティング(強みへの注目)
3,強みの評価
4,瞑想の障害に立ち向かう
5,マインドフルな生活に強みをもたらす
6,ボディ・マインドフルネス瞑想
7,強みの使いすぎと使わなさすぎのバランスを取る
8,特定の強みをターゲットにする
9,強みを活かした前向きな再評価
10、性格的な強さ

MBSP統合された10のバージョン

これまでの論文で、より詳しいプロセスも紹介されているものも組み込んだ統合的な内容となっています。たしかにこれだけ学んでいけば、強みについての理解も深まるだろうな、と思われます。

MBSPプログラムの結果

さて、MBSPプログラムの結果、参加者ができるようになったと報告している主な分野は以下の通りです。

  • 性格的な強み(「マインドフルな強みの活用」の要素)をより意識し、強みをより頻繁に活用するようになった

  • 以前からあるマインドフルネスの実践を深めることができた。

  • 問題や困難に対処するために、マインドフルネスとキャラクターの強みの両方を活用することができるようになった。

  • 他人の強みをより頻繁に発見し、評価するようになった。

  • 職場で試験的に実施したところ、MBSPはスタッフ同士が共通言語を身につけるのに役立ち、緊張や紛争の解決に役立った。

とのこと。他にも、参加者からの具体的な成果としてのコメントが記載されていたり、職場における実践で、CFOからの成果のコメントが紹介されていました。定量的な調査ではありませんが、実践的な意味を感じさせられるコメントが見受けられました。

まとめ(個人的感想)

論文では、その結果だけ書かれる事が多く、具体的な進め方については、あまり言及されないことが多い印象です。しかし、このような統合された全体像と、それに対する成果が紹介されると、このようなプロセスを参考に現場で実践をするヒントとなると感じました。

一方、10のセッションの統合とすると、どの要素がどのように機能したか、というのはなかなか判別が難しそうです。このMBSPプログラムは、あくまでも実践者のためのもの、という印象もうけました。いずれにせよ、この統合されたMBSPの10のセッション、機会があったら自分もやってみたい(体験したいし実践もしたい)とも思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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