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10 Best Albums Of 2020

 noteを始めた2020年。記事にしたアルバムには点数をつけていますが基本その場のノリなので、こうして改めて年間ベストとして考えると順位と当時の点数が合わずに反省します。しかしそれらは時間という試練を乗り越えた、長い付き合いになり得る作品なのだろうと自分に言い聞かせています。
 Paul McCartneyを待ってからにしようと思っていたのですが、恐らくベストには入らないだろうと思い直しました。10枚と言いながら次点からいきます。

次点 The Killers / Imploding The Mirage

 バンド内の不和により迷走気味だったモンスターバンドが放った起死回生の一撃。このバンドには「俺がザ・マンだ!」というギラギラした強がりよりも「どんなに遠くても君の元に帰りたいんだあああ」という情けない決意の方が似合います。たとえ不和(というか離脱メンバーへの片想い?)は解消されていないとしても。

10.The Flaming Lips / American Head

 誰もが現実逃避したかった2020年、20年振りくらいに鳴らされたドリーミーでノスタルジックでダウナーな脳内お花畑ワールド。歳を取って学生の頃のように音楽に没入する時間がなくなり、あんなに好きだったサイケ=没入音楽もすっかり聴く頻度が減った人間を見事に引き込んでくれました。
 サイケの大家、Sonic Boomの新作にあまりハマらなかったのを鑑みるにこのドリーミーでノスタルジックというのが大事かと。今年くらいは夢の中に引きこもる時間があってもいいんじゃないですかね。

9.The Avalanches / We Will Always Love You

 サンプリングで作り上げられる桃源郷、極上のサウンドジャーニー第三弾。ボイジャーのゴールデンレコードで知られる夫婦にインスパイアされた…という話に引きずられてる気もしますが、今までで一番スペーシーな印象を受けます。WeezerのRivers、Blood Orange、Leon Brigdesなどゲストによるボーカルもとにかくエモくてソウルフル。最早元ネタがどうとか全く気にせず聴いています。人工的に創り出されたキメラに魂は宿るのか?その答えはこのアルバムにあります。

8. Bob Dylan / Rough And Rowdy Ways

 上半期ベストの時に、咀嚼しきれていないけど凄みは伝わる、と書きました。半年経ってもまだまだ咀嚼しきれていません。音楽的にはここ30年くらい同じようなこと(自身のルーツと"声が出なくなったBob Dylan"の融合)を繰り返している御大ですが、中でもここ数年カバーしまくったことで見事に血肉化された、スタンダード色の濃い曲が秀逸な作品だと思います。
 「伝統を受け継ぎつつ、新たな詩的表現を生み出した」ことを讃えたノーベル委員会の審美眼を証明する貫禄の一作です。

7. Jarv Is... / Beyond The Pale

 Jarvis Cccker Is Back!メディアの年間ベストでも割と上位にランクインしていますね。
 変わらぬ生き辛さと洞察に満ちた歌詞や曲者揃いのメンバーなど注目点は多いですが、裏返りすぎて声が出てないアーゥッ!というシャウトであったりセクシーさと運動不足の息切れが絶妙に混じった吐息であったり、ソロでは影を潜めていたボーカリスト・Jarvis節が久々に聴けるだけでも十二分に楽しめます。

6. Honne / No Song Without You

 君がいないと歌もない。今年聴いた中で1番ロマンチックな言葉かもしれません。ソウルミュージックは聴く者のソウルを震わせてナンボ。
 現行R&Bに目配せした前作は、彼らの魅力であったインディーソウル感が薄れたうえに言うほどモダンでもなくイマイチでしたが、本作ではキャリアで最もシンプルかつ生音志向にしたことが奏功、寒い夜も暖めてくれそうな優しさを取り戻しています。正確にはアルバムではなくミックステープという扱いなので、次の「アルバム」も楽しみですね。違いはよく分かりませんが。

5. The Cribs / Night Network

 ズッコケ3兄弟、大人になる。自らのポップネスを恥じらうようにパンクにシャウトしていた彼らが、円熟味すら感じる素直なポップ・アルバムを出すなんて予想していませんでした。このまま職人的ポップ路線に行くのか、またパンク・スピリットを爆発させるのか。どこまでも楽しませてくれる兄弟です。

4. Catherine Anne Davies & Bernard Butler / In Memory Of My Feelings

 The Cribsが円熟を感じさせるならば、こちらは円熟しきったオトナのロック。久々のリード作で遠慮なく弾かれるBernard Butlerのギターを聴くだけでもファン冥利ですが、そのクールで物憂げなボーカルによるグラム、ソウルとの親和性たるや。Catherineさんの新曲のMVを見るに、つまりは2人ともボウイが好きなんでしょうね。

3. Fleet Foxes / Shore

 デビュー当時よく言われた神聖・荘厳みたいなイメージが強くて襟を正さないと聴けなかった彼らですが、本作はかなり俗世に降りてきた印象です。要するに一番ポップで聴きやすい。ドラムとフロントマンのRobinが弾くメロディアスなベースからは時折ロックバンド的ダイナミズムすら感じます。バンドメンバーは参加していませんが。
 讃美歌的コーラスワークス等、特徴的な荘厳さも残しつつ、ソフトなウォールオブサウンドに乗せて届けられる、亡き人々に思いを馳せた真摯な歌。太陽に温められた生ぬるい海の水は、本作を見事に表したジャケットです。

2. Waxahatchee / Saint Cloud

 なぜこの何の変哲もないアメリカーナのアルバムがこんなに好きなのかずっと考えているんですが、悲しいことに「曲がいいから」以外の言葉が浮かびません。
 多くのメディアの年間ベストでも上位にランクインしていますが、どれも要は曲がいい、歌がいいと(豊かな語彙と文脈で)評している感じがします。その辺の一音楽好きもプロの批評家も、いい歌と暖かい演奏の前ではただ聴き惚れるしかないのです。

1. Mystery Jets / A Billion Heartbeats

 上半期ベストの時と1・2位を入れ替えました。その理由は元々Mystery Jetsのファンなので結局こっちの方がよく聴いたから、という身も蓋もないものです。こちらはメディアの年間ベストでは忘れ去られていますが。
 時代の寵児The 1975がいかに80sとエレクトロとアメリカーナと泣きのバラードを乱れ打ちしようとも、それらは全てMystery Jetsが過去に辿ってきた道。これまでの冒険で練り上げられたソングライティングに裏打ちされたアンセミックなロック・ソングを、さりげなく凝ったプロダクションにより野暮さ・大仰さゼロで聴かせる、2020年型ロックンロールの最高峰です。

雑感

 因みにヘッダーは今年のベストジャケットですが、アルバムとしてはそこまで好きではありません。できるだけ幅広く音楽を聴きたいと思ってはいるのですが、改めて年間ベストとして考えると、結局Waxahatcheeを除いて昔から好きなアーティストばかりになりました。しかし自分に限らず、コンフォートゾーンにいたいというのが2020年という時代の気分だったのかなと思います(事実、所謂懐メロのストリーミング数が例年より上がったそうです)。
 刺激的な音よりも自分にとって心地良い、いい歌。そんな気分の一年に、昔馴染みのアーティスト達が力作・傑作をリリースしてくれたのは幸せだったと思います。

 発表されてる中で楽しみな来年のリリースはFleet FoxesのフィジカルとMaximo Park(新曲微妙ですが)、忘れちゃいけないFoo Fightersあたりですかね。あとはライブに行けるといいのですが、果たして。

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