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クラシックを弾かない人へのクラシック・ギターのススメ

私はトランペットと並んでギター音楽というのが好きで、ギターものであればロック、ジャズ、ソウル、からクラシックまで色々と聴いている。
クラシック・ギターは自分では弾けないのだけれど、マニュエル・コントレラスというクラシックギターを一台所有している。クラシックは弾けなくてもそのギターを持っている理由は、楽器として美しいだけでなく、音が美しいからだ。

コントレラスは普通のクラシックギターよりも5mm長いスケールになっていることもあり、またサウドバックにハカランダが用いられているということも相まってスッキリとして艶やかで、ハキハキした音がする。そして、きちんとコンサートに耐えうる仕様になっていて音が正面に出てくる。

コントレラスのギターはエレキギターやマーティンのギターとは異なり、ネックが全面にせり出すかのような作りになっており、当然弦高もフォークギターなどに比べれば高めに設定されている。サドルをいっぱいに削っても、12フレット上で6弦6mm、1弦3mmぐらいだろうか。
エレキギターなどになれているともしかしたら弾きづらく感じてしまうかもしれない。

一時期のクラシックギターはコンサートでの音量をかせぐことを目的として、トップ板を十分に鳴らすことができるよう、上記のような作りになっているものがある。近年のクラシックギターは、製作家にもよるけれどももう少し弦高が低く設定されているかもしれない。近年はブレーシングの構造や、ダブルトップ構造など音量についての改善(改善?)がなされているので1970年代のような作りにしなくてもいいのだろう。

クラシックギターの音色については、人それぞれ好みがあるし、弾き手のプレイスタイルによって同じ楽器でも随分と違う音が出てくるので簡単に良し悪しは決められない。しかし、純粋にコンサートで演奏するときの音の遠
達性(そんな言葉あるかしら)を追求したギターは必ずしも美しい音が出るとは限らない。また、プレーヤーによってはハキハキとした明るい音色よりも、もう少しぼんやりとした暗い音色を好む方もいるので(くっきりとしていても暗い音色もあるのだが)どれが良いとは一概には言えないのだけれど、私の好みはハッキリとしていて、ふくよかな木のなりのなかに少し硬質さも持っている音色のギターが好きなので、結果として今持っているギターが気に入っている。

はっきりとして、硬質さがある楽器が好きなのであれば、いっそのことフラメンコギターを使えば良いのだろうけれど(こちらの方が一般的に弦高が低めで私には弾きやすい)、やはりフラメンコ向けギターとクラシック向けのギターは異なるもので、クラシックを演奏しなくてもクラシック・ギターは一台手元に置いておきたい。

私の好きなカントリーギターの神様チェット・アトキンスもクラシックギターのかなり良いやつを使っており、そういうのを聴いているとやはりクラシック用のギターの音色というのは独特の魅力がある。

今日は、店で村治佳織さんのアルバムを聴いていて、その透明感のある音色、くっきり・スッキリしていながらもどこか暗さのある音色に聴き入っていた。村治佳織さんのような名人であれば、たとえどんな楽器を演奏してもこの人の音色というものを生み出せそうな気もするが、やはりそれでもロマニリョス等の数々の名器を演奏されているところを見ると、楽器はかなり慎重に選び演奏しているのだろう。

ギターという楽器は自分の所有しているものをコンサート会場に持ち込めるので、「自分の楽器」という感覚があり、それゆえに色々と好き嫌いがあったり、自分の楽器を選んだり、楽器の性格を理解したりとそういうステップがある。これは、エレキギターもそうなのだけれど。
かたや、ピアノのような会場に備え付けられている楽器を弾く場合が多い演奏家は楽器に対する興味がそれほど深くない方も一定数いるようだ。ピアニストが楽器にあまりうるさかったら商売にならないのかもしれない。

話が横道に逸れそうになってしまったが、一口にクラシック・ギターといっても楽器によってかなり性格が違うので、それが面白い。普段エレキギターを弾いている方にも、是非一度じっくりと自分のためのクラシックギターを選んでみると、ギターという楽器をより深く理解する足掛かりになるのでお勧めだ。
きっと、クラシック・ギターの深い溝にハマってしまうだろう。

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