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Hampton Hawesの異色作の魅力

ジャズのピアノトリオといえば、名作アルバムが数多ありどれか一つには絞れないほど色々な魅力がある。
先日の記事でも書いたように私はずっとピアノトリオのジャズをほとんど聴かなかったので、実のところピアノトリオのアルバムをあまりたくさんは持っていないのだけれど、ここ数年でにわかにピアノトリオのアルバムを聴くようになったので、少しづつ買い揃えている。

今朝はハンプトン・ホーズのアルバムを聴いていた。ハンプトン・ホーズは色々な管楽器奏者のリズム隊の一人として録音を残して入るけれど、なんと言っても彼の真骨頂はピアノトリオであると思う。もちろん、管楽器と共演しているアルバムにも名盤は多く、私はArt Pepperのアルバムなんかが好きなのだけれど、それでもアルバムを聞く頻度としては彼のピアノトリオの方が圧倒的に高い。

ハンプトン・ホーズのピアノトリオは、いわゆるハードバップのオーソドックスな音楽をやっているといえばそうなのだけれど、リズムの感じとか、ピアノのフレーズには彼独特のものがある。ビル・エヴァンスのトリオのように精緻で知的というのとも違うし、レッド・ガーランドのようなオールドスクールでもない。かと言って、個性は強いので彼には彼のスタイルがあるのだ。

ハンプトン・ホーズというピアニストの作品を聴くようになったきっかけは彼のNorthern Windowsというアルバムを聴いたことがきっかけなのだけれど、このアルバムで彼はエレピ(Fender Rhodes)を弾いている。アコースティック・ピアノとエレピの両刀使いのアルバムなのだけれど、ハンプトン・ホーズはエレピの魅力を存分に引き出していて、とてもスリリングな演奏になっている。

ハンプトン・ホーズは若くして亡くなっているのだけれど、彼がエレピを弾くようになったのはキャリアの後半のようだ。その割に、彼はエレピ(Fender Rhodes)を演奏しているアルバムを何枚かリリースしているのだけれど、彼の弾くエレピは1980年代にフュージョン志向のプレーヤーがエレピを弾いているのとはちょっと違って、ハードバップをエレクトリックにしたような要素が残っている。

また例に挙げてしまい恐縮なのだけれど、ビル・エヴァンスが弾いているRhodesのような暗さではなく、ハンプトン・ホーズのスタイルのまま、音使いをちょっとエレピに寄せている感じといえば良いのだろうか。ハンプトン・ホーズのピアノトリオのちょっと作り込んだ感じというのがRhodesの入ったピアノトリオの演奏でもいきてきている。

彼のアコースティックピアノでのピアノトリオの演奏をその後に聴いたせいかもしれないけれど、アコースティックピアノでもモダンであり、独特のハンプトン・ホーズ節のようなものが聴ける。

彼のリーダー作にもう一枚異色な作品があって、これもキャリアの後半の作品なのだけれど”Blues For Walls”というのがある。管楽器やパーカッションが入った騒がしいアルバムなのだけれど、ここで彼はFender RhodesだけでなくARPシンセサイザーも弾いている。サウンドは、どこかサイケデリックなハードバップといったところで、彼の若い頃のピアノトリオを聴き慣れている人にとってみれば、なんじゃこりゃ、といったようなアルバムなのである。

しかし、そのアルバムをじっくり聴いていると、やっていることはフュージョンのようでもあり、よく聴いていると楽器がエレクトリックに、ビートがファンクビートになっただけで、大元にはハードバップが残っているようなアルバムに仕上がっている。こういうアルバムを作ったのは時流に乗ったからなのかもしれないけれど、その中できちんとジャズをやっていて、そういうのが好きな人には良いのだけれど、当時はどんな評価だったのだろう。

ハンプトン・ホーズが好きな私にとっては、この”Blues For Walls”も楽しく聴けてしまうのだけれど、エレクトリックマイルスのような音楽を期待すると、ちょっと物足りないかもしれない。

ハンプトン・ホーズ好きのための隠れアイテムとして、こっそり聴いている。

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