青葉光る季節に子の成長を思う。【49日目】
剣道をやっている長男が、ついに面をつけることになった。
昨年の5月。
学校から持って帰ってきた一枚のビラを差し出してきた長男。
「友達がやってるんだって」
手に持っていたのは、学校で毎週行われている剣道の会のお知らせ。
子どもが好きそうな鬼滅の刃のキャラクターグッズなどと一緒に、活動日が書いてある。
それまでは「なんでもいいよ」が口癖だった長男が、初めて「やりたい」と言い出した剣道。
親も剣道をやったことがないので、これにはかなりの驚きだった。
「え? 剣道やりたいの?」
「うん」
あまり多くを語らないのは相変わらずだったが、本気でそう思っている様子は目の色で伝わってきた。
恐る恐る、書かれた連絡先に体験希望の旨を伝える。
参加した日は、小学生数人が真剣な表情で竹刀を振っていて「しっかりしているなぁ……」とひたすら感心していた。
長男と同じ学年の子どもたちと比べると、穏やかで優しい性格の長男が幼く見える。
それは、これまでいいことだと思っていた部分だった。
けれど、もしかしたら、そうもいかないのかもしれない。
そんな不安が少しずつ湧いてくる。
優しすぎるのは、大変かもしれない?
体験を何度かやっていくうちに、剣道をやりたい気持ちはますます強くなったようだった。
1ヶ月の体験ののち、長男は入会を決めた。
少年団の活動になるため、親自身も手伝いがある。
当番で場所の確保や準備などを協力して行う必要があるし、子どもたちの見守りもある。
やったことがない競技での手伝いは初めてのことばかり。
先輩のお母さんたちに教わりながら、少しずつ慣れていく。
秋ごろ。
手伝いながら見守るのについてきていた次男も「やる」と言い出した。
二人で道着を着て、練習に参加する。
叱られることもたくさんあるけれど、褒めていただくことも増え、礼儀が少しずつ身に付いてきた様子も見えるようになった。
同学年の子達は、3年生くらいから始めている子が多い。
長男と同級生の子たちは、面をつけて試合に出る子ばかりだ。
防具をつけずひたすら竹刀を振る低学年に混ざる長男は、どんな気持ちなんだろう。
少しドキドキしながらも、あまりツッコむこともできず。
「長男はどっしり構えているタイプだから、あまり気にしていないかもしれない」
そんな希望的観測を胸に、練習には一切口を出さずにきた。
複雑であろう胸の内を、表にほとんど出さない長男。
彼がついに、面をつけられることになったのだ。
剣道を始めてから一年が経っていた。
背中しか見えないけれど、嬉しそうな様子が伝わってくる。
ようやく、前で戦う同級生と並ぶことができるのだ。
ここにくるまでに、できることはどんどん増えていた。
「蝶々結びなんてできない」と言っていた長男が、自力で紐を結び防具を身につけられるようになった。
声が小さかった頃が嘘のように、担任の先生に「気持ちのいい返事をしてくれます」と褒めていただいた。
買い物に行くと、スッと荷物を持ってくれるようになった。
こうやって、少しずつ成長していっちゃうんだなあ。
立ち止まって振り返ると寂しい気持ちがじんわりと沁みてくるけれど。
それ以上に、彼の背中を頼もしく思う。
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今日の投稿は放課後ライティング倶楽部(AWC)の『66日ライティング✖️ランニング』のお題で書いております。
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