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図々しい夏

例年より涼しい夏がやってきた。あの図々しくも暑苦しい夏はどこに行ったんだよ。探しても見つからない。東京メトロ日比谷線の六本木駅に降り立ち、地下から地上へ登った途端日が照りつけジリジリと体温が上がっていくのを肌で感じながら地面から10cm程浮くのを実感するあの狂おしいほど愛しい夏は一体どこに雲隠れしてしまったんだ。この季節になると毎年必ず思い出す光景がある。それは紛れもなく大好きなきみから目が離せなくなった日のこと。2016年7月31日。正直いつ降りたとか、いつ好きになったとか明確なことは覚えてない。唯一はっきりと自分の中で「記念日」と呼べるのはこの日だろう、と思う。

あの年はサマステ ジャニーズキングと題した公演が行われていた。7月31日の平プリ公演にもメインでは無いものの今では一番の大好きな男の子であるきみも出演していた。相変わらず目が死んでるきみ。衣装のパンツからシャツが飛び出てるきみ。今でも懐かしくて当時のきみに会いたくなる。元気にしてますか?8人の中でそんなどこかすかした雰囲気でありながらも今思えば必死に、必死に食らいついてた姿だったと思う。当時私はきみの名前とらじらーで喋る声、後は少クラでたまに観る意外にもシャカリキなダンスぐらいしか知らなかったけど担当になる前のきみはもう既にとびきり可愛くて公演中そしてMCの時間になった時、目が離せなくなった。MC中ステージ上にはいるものの勿論メインではないので喋らない。いつものあの笑い声で、いつものあの大袈裟な拍手で目尻を下げて笑ってた。今では考えられないが先輩がMCで喋ってるのに意識があらぬ方向へ行ってるときもあった。MCに集中して!って思ったこともあった。そんな姿に文字通り目を奪われてから今夏で何年経ったんだろうか。2017年夏、彼らは4人でぎゅっと固まって絶対に繋いだ手が離れないように「4人いれば充分だぜ!」そう、声高々に言った。メンバー変動が当たり前のこの世界ではおおきな、おおきな、そして力強い決意表明だった。当時私は4人の彼らに未来を見た。誰がなんと言おうと彼らはこの先沢山のペンライトの海の中をローラーで駆け抜けていく、なんなら未だに4人に対してそう思ってる。彼らが当時のことを語る時今と引き合いに出すために限界だった、と言うけどそんな事ない。絶対にそんな事ない。確かに今の君たちは素晴らしいバランスで最高で最愛の5人だよ。でも、私が愛した4人を、君たち自身が愛した4人を否定しないでよ。今の5人がいるのは4人が繋いだ手を離さなかったからだよ。あの夏、彼らだけに与えられた時間は三曲。あれから毎年歌ってる曲。毎日観客の反応を気にしてた台詞のある曲。そして、「簡単に歌える曲だとは思ってない」とひとつひとつ言葉を選んで伝えてくれた曲。たった三曲だったけど君たちの意思が伝わる充分なセットリストだった。いつまでもあの時の君たちに抱いた感情は忘れないし、忘れてたまるもんかと思ってるから気が向いたら復活祭やってよ。そして2018年、5人になって初めての夏だった。今でも忘れない2018夏。今では考えられないが、あれだけ譲り先を必死に探しても中々見つからず定価割れしてる現実に彼らはそんな定価割れするようなグループじゃないのに、って悔しくて悔しくて下唇を噛んだ夏だった。だけどそれは一瞬にしてまるで魔法のように状況が一転した。幕が開くとあれよあれよとあれだけ余っていたチケットが一瞬にしてなくなった。評判が評判を呼んだんだ。彼らの勝ちだと思った。あの時絶対にそうなる未来になると信じていたひとりだった私が頑なに定価を守った理由。あの爽快感は一生、忘れない。そして普段そんなこと言わないはずのきみが「ステージ上で死ぬってすごいアイドルじゃない?」と言ったのも、蒼弥が「皆そこに立ってるだけでいいよ、俺らがもっと楽しい所に連れて行くから!5人で絶対連れてくから待ってて!」そう言ってくれたのもこの年だった。そしてオーラスのダブルアンコールできみが「この夏の青春を全部この曲に込めて下さい!」そう言って君たちの代名詞であるイントロが流れた。そして、2019年夏。きみはすっかりアイドルの顔をしていた。目を離したつもりなんてないのになあ。ほんとうに不思議だよ。当時、地下三階の小さいはずのステージの上に立つ5画面に映し出された彼らや客席の光とそのまた先をひとつひとつ指さしてるきみを見てたら何故か、もっと大きな、もっと広い会場に居る彼らが見えた。間違いなくあの光景は東京ドーム並みの、いやそれ以上の光景だった。一体どこだったんだろう、いつか答え合わせができる時を楽しみに待ってる。「伝説のグループになる」と宣誓したきみの腹を決めた姿を見た夏だった。

去年からきみは、「求められる人になる」とインタビューで口にしてる。ここ最近ずっとその言葉について考えてた。目の前のひとつひとつの仕事に向き合い、努力することの出来るきみはもう既に求められる人、だ。きっときみは求められたその先に次なるキャリアが広がってることに気付いている。そんな気がしてる。

2020年の今年、一体君たちと過ごす今年の夏はどんなにたのしいんだろうとワクワクが止まらない。これからも簡単な世界じゃないからワクワクする、そんな彼らのファンで居たい。

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