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もしもタイムマシンがあったら

「もし過去に戻れるとしたら、いつに戻りたい?」
私は度々、友人にこんな質問をする。
正確に言うと、友人の中でも “この人の考えていることをもっと知りたい” と強く思った人達に。

この質問の答えには、その人の人生観とか価値観、そういったものがよく出てくると思っている。
何を幸せとするのか。今まで生きてきた時間をどう振り返るのか。日頃どんなことを感じているのか。
そんなものたちを、私はよく友人達の答えの中に垣間見る。

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ただ、質問するということには聞き返されるということがつきものだから、聞いたからには私にもこの問いが返ってくることになる。

「じゃあ奏葉は? もしもタイムマシンがあったらいつに戻りたいの?」と。

そう聞かれたら、私はいくつかの選択肢の中から答えを選ぶことにしている。
「遊ぶことしかしなくて良かったから、小学生の時かなあ。」
「可愛がってもらえたし何にも悩みがなかったから、幼稚園の時かも。」
「タイムマシンがあったとしても、私はいつにも戻りたくないかな。」

答えるのは大体この3つのうちのどれか。
後攻の私はずるいから、相手の答えを聞いて、考えてから答えを選ぶ。
どんな話なら引かずに聞いてくれるのか。この人とはどこまでお互いの内面を分かり合えるのか。私はこの人とどんな話がしたいのか。
小心者の私はついついそんなことを推し測りつつ、その時に適切だろう答えを選んでしまう。...こうやって文字にしてみると、何だか改めて申し訳ないけれど。

もちろんその選択肢の中に私の本当の答えも含まれている。何も考えなくていいこの場所で、誰かにあの質問をされたなら私はこう答えるだろう。

「タイムマシンがあったとしても、私はいつにも戻りたくない。」と。

確かに幼稚園の時は幸せだっただろう。記憶はおぼろげだけれど、大の仲良しの香菜ちゃんがいて、大人はみんな可愛がってくれた。小学生の時も多少悲しいことはあったけれど遊んでいれば良かったし、今みたいな現実的な悩みはなかった。

それでも私は今を選ぶ。
乗り越えてきた色々なことを、また経験するなんてまっぴらごめんだ。高校や大学受験はもちろん、悩みが尽きなかった中高生の日々や、家族のことを引きずって周りの人を傷付けた日々を、私はもう二度と繰り返したくはない。

大人になって良かったことは、少しずつ色々なことから自由になれたことだ。昔は子供だけでは行けない場所ばかりだったけれど、働いてお金さえ稼げばもうどこにだって行ける。スクールカーストが怖くて怯えていたこともあったけれど、もう彼らと人生が交わることはない。小さい頃は家族と学校だけが世界の全てだったけれど、今ではそれ以外にも世界があることを知っている。

今でもまだ容姿だとかアイデンティティだとか私を縛るものはあるけれど、きっとそれらからもいずれは自由になれるのだろう。もっと歳を重ねればいずれはみんな同じような顔になるのだろうし、守りたい家族ができれば生きる意味なんてもうどうでも良くなるのかもしれない。

ちなみに、私に最も影響を与えた存在である祖母は(小さい頃からずっと2人で暮らしてきた)
「60歳になって1番嬉しかったのは、もう恋愛に悩まなくて良いのだと思ったこと」だと語った。それを考えると、私のこの少々現実的すぎる考え方も祖母譲りのものなのかもしれない。

私の人生も、私そのものも決してキラキラしてはいないけれど、私はこれからだって1つ1つ変わり映えのない毎日を積み重ねて生きていく。この先もきっとたくさんの辛いことや苦しいことが待っていると思うけれど、その時にはただ歯を食いしばって1日1日をやり過ごせたら良いのだと思う。
華麗な乗り越え方とか、逆境からの大逆転!とかそんなことができる人間ではないのだから、自然に命が尽きるその日までただ生きていられさえすれば、きっと私としては上出来な人生だ。


“もしタイムマシンがあっても、私は過去には戻らない。”
何十年後かに私の命が尽きる時も、そんな風に思えていたら良いなあと思う。もしかしたらその時には、もはやもうタイムマシンは存在しているのかもしれないけれど。

大した人生ではなかったかもしれないけど、自分はちゃんとこの日まで生きてきた。そんな多少の自負を持って人生を終えられたなら幸せだ。
...なんて、23歳のひよっこの私は思っている。

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こんにちは、奏葉です。

「もしもタイムマシンがあったら?」
今回は私なりにこんな質問への答えを書いてみました。

最初に “この質問にはその人の人生観とか価値観がよく出ると思っている” と書きましたが、
ひょっとしたらこの投稿を読んで下さった方々にも、私の中の色々なものが垣間見えたのでしょうか。
そう思うと嬉しいような気恥ずかしいような、そんな気持ちになります。

そしてこの話には少し続きがあるのですが、それはまた次の機会に。

やっと土曜日ですが、今日は暑いですね。
やたらと疲れやすい季節の変わり目、どうかご自愛ください。

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