見出し画像

コッツウォルズの4週間

コッツウォルズの4週間(8-4)
 5 第二週
 今日から第二週目。結婚して以来夫とこんなに長く離れて暮らすのは初めてだ。時差は十六時間あり日本のほうが早く、イギリスの朝が、日本の前日の夕方になる。毎朝安否確認も兼ねてライン電話を夫にかける。以前は国際電話料金は高価だったが、今やラインを使える人同士は無料である。夫は私のホームステイ希望を受け入れたものの、出発一か月前に足の小指を骨折しギブスをはめ両松葉杖となっていた。自炊ができない夫だが、食事を買いに行ければ問題なかったのに、外出できないこととなり、私の出発は危ぶまれた。しかし幸いなことに出発直前に片松葉杖で外出可能となり、予定通りの出発となった。
 二回目の月曜日、朝食はオレンジジュース、パンケーキ、トースト、チーズ、ヨーグルト。通学途中でラテを買う。授業には三人が遅れてくる。私はいつも早めに教室に入り、担任や早く来た生徒たちと少し話す。授業に遅れる人は、留学生活も長くなり飽きたりもするが、それでいいという考え方だ。年齢も様々だが、スイス人のソフィーは高校生。ホストマザーは日本人だとか。食べ物が合わないらしく、担任のアドバイスは、アジアン料理は合わないと伝えなさいと。タイ人のシティパンはイベント会社の経営者で、国の会社は従業員に任せて、家族で子供の教育のためにイギリスに住んでいる。親自身も英語を勉強中というわけだ。お昼は今日もランチ会を計画しているステファノとバレリイ、台湾のヒューゴも加わりスパニッシュレストランへ。学校の周りにいろんな国のレストランがありありがたい。ランチはメインを三つ選びシェアする。薄くスライスした本格ソーセージ、パエリア、エビのフライにオリーブオイを添えたパン。学校は町の中心部にあるため、郊外へ通じる道路が多数ある。通りは、バースロード、ロンドンロードなどと名付けられ、それぞれバース、ロンドンに通じる道だ。道に迷うことなく便利そうだ。 

ダイニングテーブルでの宿題

その日は宿題がでたが、自分の部屋はベッドとサイドテーブルしかないので、ホストマザーのジリーに椅子を貸してくれるよう頼んだ。ところが部屋へは椅子を入れないで、ダイニングで勉強するようにとのこと。理由はわからないがきれいにしてある部屋なので家具は動かしたくないということか?午後のひと時ダイニングテーブルで宿題を済ませた。
 翌日は授業以外にこれからの滞在中の計画も立てた。イングリッシュガーデナー希望のユウコから日帰りで緑の美しいガーデンに行かないかと誘われていた。ガーデンの本も貸してくれて、その美しさにすぐに賛成。また学校の隣には豪華な歴史あるシアターがあり、そこでの上映中なのはディズニーの美女と野獣のミュージカル。これも日本からの留学生ユキエと行くことにした。   
 

国際交流のランチ会 於SVEA

授業が終わると、今日は私が、以前行った可愛い飾りつけのスェーデン料理店スベアでのランチ会を企画。ホームステイ先で一緒のウクライナ人オクサナを誘い、いつものメンバーにも声をかけると、ウクライナ人は初めてだし、スェーデン料理も良いねと、楽しいランチができた。こんな風に自分も楽しみながら人と人を紹介し友達になれる場所を作れるのはとても嬉しい。この日はさらにネット購入済の音楽フェスティバルチケットを印刷し、学校主催のエクスカションバースツアーも予約した。帰宅すると、緑の美しいガーデン、ローシャムガーデンへの行き方を検索した。盛りだくさんの一日となった。
 ホームステイ先での生活も慣れてくると、ホストマザーのジリーとは年齢も近いこともあって、いろいろ話す。彼女の目下の話題は、出産後の娘が仕事に復帰するにあたって、ベビーシッターを雇うことへの戸惑いだ。「ねえ、ヒサミ。私たちは子育てしながら家事や育児さらには仕事もやってきたわよね」もちろんその通りだし、ジリーに至っては各部屋や庭をとても見事に掃除し飾り付けている。私もその考えには賛成だが、さて今の世代の若者の気持ちはどうであろうか?一緒にホームステイしている三十歳くらいのオクサナは宿題まで見てくれるナニーと家事のためのお手伝いさんを雇っているというし。もちろん普通の主婦としてはジリーの考えに賛成だが。彼女はとても働き者で三階建ての自宅を階段を上り下りして家事をこなす。私の洗濯物まで引き受けてくれ、アイロンまで当ててくれる。夕食後は食洗器にお皿やグラスを詰めて洗浄開始、排水口の金具を毎日ブラシでこする念の入れようだ。ある日は日本でいう雑誌「美しい部屋」のような雑誌の取材陣も来訪するほどだ。

手入れの行き届いた庭

もちろんガーデンの手入れにも余念がなく、各部屋は統一した色でコーディネイトされている。夕食は八時、就寝は九時、朝はご主人のコリンが食洗器から食器を棚に戻し、ジリーへ淹れたてのコーヒーをベッドに運ぶ。仲の良いご夫婦だ。
 ある夜日本にいるときと同じように寝る前十一時頃に入浴した。バスルームはご夫婦の寝室と私の部屋の間にある。翌朝、コリンから、眠れないから入浴は早めにと言われた。なるほど夜更かしの私には何でもないことだけど、九時就寝の彼らにはそれはうるさかっただろうと反省した。日本人の睡眠時間がいかに短いかも・・夕食は夜八時なので、食後一時間で入浴するのはあわただしく感じられたが、広いバスルームを一人でぜいたくに使い、バスタブに浸かるのはリラックスできる。プライベートバスルームを借りたのは正解だった。バスルームは大きな鏡付きの洗面台、トイレ、バスタブ、シャワーコーナーがある四畳半ほどのスペースだ。私の滞在中にジリーの誕生日が来たが、その日彼女から、今日は誕生日だからバスルーム使っていい?と聞かれ驚いた。各ベッドルームにはシャワールームしかないようで、バスルームは私が借りてる一つのみだったようだ。もちろん貴方のあなたのお家ですからいつでもどうぞと答えた。
翌日の授業では、各自が与えられた記事を、ニュースキャスタ―役で話すというもの。
記事の内容が十分にわからないままだったが、担任のウィルは良くできたと。何事も話してみること、繰り返すことが語学の基本と再認識した。毎日同じメンバーで学ぶことで、だんだん慣れてリラックスして学んでいける。生徒の出身国のイントネーションのくせもわかって理解しやすくもなる。担任とは会話できるが学校のスタッフは話すのが早くていつも聞き返すことばかり、学ぶのと日常で話すのの違いもまた良くわかる。
 その日のランチはスワンという雰囲気のあるカフェ、翌日はイタリアン。午後にはチェルトナムに行って初めて知ったが、クラッシックの名組曲「惑星」を作曲したホルストはこのチェルトナムの出身でそのミュージアムが学校の近くにあることがわかり、歩いて行ってみる。平日にもかかわらず訪問客も数名いる。

Holst Victorian Hause

彼が暮らしていた当時のままの建物、室内はベッドやタンスなどの家具の置いた部屋や台所、ピアノやオルガン、薬品類、洗面用の大きなきれいな柄の陶器の水差しや美しい食器類が飾られていて見ごたえがあり、当時の生活をしのぶことができた。曲を聞いたことがある程度の作曲家だったが一気に親しみを覚えることになった。
 翌日はこの学校に英語教師になるために社会人入学制度があり、その生徒になってみないかと誘われる。私を担当するのはデヴィーという女性。カイロポディストと言う足の怪我や病気を調べたり治療する訓練をされた人だ。在校中数回彼女の授業を受ける。日本にはない職業なので、こちらからもその職業について尋ねたり、なぜ外国人に英語を教える仕事に変わりたいのか尋ねたりした。十年後の今時々足がしびれたり痛むので、今なら診てもらいたいくらいだ。
 

チェルトナムの二階建てバス

その日の帰り道、いつものようにバスに乗るが、日本と違い次のバス停などの案内のアナウンスはない。つい自分が降りるバス停前でブザーを押すタイミングを逸し、過ぎてから押してしまった。すぐに気が付きバス停一つ分なら歩いて戻ればいいと思っていたら、割合早くバスが停まり降りることができた。何気なく降りたもののそこはバス停では無い草が生えている歩道、どうやらバスのドライバーが、気を利かせて停まってくれたとわかり、うれしい驚き。いつも同じ時間帯に乗る私が降りる場所を覚えてくれていたのかどうかはわからないが、親切に感謝しながら帰宅した。
(この文章は2013年5〜6月のコッツウォルズ滞在記です。毎月1回投稿します)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?