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北アルプスへの道③ ダイジェスト:台風、地震ニモマケズ

第一関門・・・台風との戦い

2021.9.19〜22
一の沢登山口〜常念岳〜大天井岳〜東鎌尾根〜槍ヶ岳〜上高地
Total 42km +3400

「槍ヶ岳に会いにいこう!」山の相棒・Kちゃんと1周年記念アタック。お酒持ち&用心棒としてNくんが加わり、3人での山行となった。

コ○ナ禍で山小屋は完全予約(クリック合戦)。幾度となく行程を組み直し、やっと整ったと思ったら台風発生! 直撃コースで「さすがに無理かも…」と諦めかけたが、私たちの気迫が台風に競り勝ったようで、無事、飛行機は飛んだ。

一の沢登山口をスタートし、その名のごとく沢に沿って登っていくルートで常念岳を目指す。「胸突き八丁」とこれまた名前に嘘なしの急坂を登り切ったそこには、、、雲一つない青空と穂高連峰がドドーン。槍ヶ岳の△を見た瞬間、柄にもなく熱いものが込み上げてくる…。隣のKちゃんを見ると涙目。二人顔を見合わせ「ついに来たよ、私たち〜」。汗だくのまま抱き合って泣いた。

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第二関門・・・えっ、地震!!!

山小屋の早い夕飯を堪能していたところだった。

ゴゴゴゴゴ…ガタガタガタガタ!

地震!!! 簡易的な木造家屋の軋む音、食器が触れあう音、登山客の悲鳴で辺りは騒然。その後も余震が続き、「この先どうなるんだろう…」と眠れない夜を過ごした。

当初、初日に槍ヶ岳を目指す予定だった。しかし、山小屋が確保できず断念。逆回りを余儀なくされたが、これが功を奏すとは…(直登の別チームは「危険を感じて下山した」との連絡)。翌日、飛びかう救援ヘリコプターを横目で押さえながら、大天井岳の山小屋「大天荘」で様子をみることに。被害調査の結果、「一部ルートに崩落があるが、迂回すれば槍ヶ岳登山は可能」とのこと。とはいえ、余震と天候(ガスって視界不良)次第では、別ルートで下山しようと決め、朝を待った。

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目覚めて真っ先に外を見ると、昨日までのガスガスは嘘のよう。漆黒の世界から曙色に包まれた世界へ…大自然が織りなす色彩ショーは息をのむ美しさだ。そして、モルゲンロートに照らされた槍ヶ岳の隣には、まんまるの中秋の名月。「人生の運を全て使い切ったかも…」それでもヨシと思えるほど、全方向に絶景が広がっていた。

第三関門・・・崖、ハシゴ、鎖、、ラスボス・槍ヶ岳

今回の最難関、東鎌尾根をヘロヘロになりつつ踏覇し、ラスボス槍ヶ岳山頂へ。「ガスってきたけん、休まず登るよ!」Nくんに発破をかけられ、最後の力を振り絞って山頂を目指す。崖をよじ登り、ハシゴを踏み、鎖に翻弄されつつ、槍ヶ岳(3180m)を制覇。360度広がる北アルプスの景色は、登ってきた者のみの特権だ。

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思い返せば病気になったのが悔しくて、やけっぱちで挑んだ富士登山から12年。槍ヶ岳に挑めるまでの心・技・体を手に入れたんだ…ちょっとだけ、自分を誇らしく思えた。生きているって素晴らしいじゃないか、と。下山する頃にはガスが立ちこめ、30分遅かったら雨と強風で登頂アウト。今回も奇跡的にすり抜けた。

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第四関門・・・雨、降るの?降らないの?

最終日、ガスに覆われ視界3mといったところ。「天は十分に味方してくれたよ。もう雨でも仕方ない」とゴールの上高地を目指す。ガレ場を越え、色づく木々を抜けるにつれ、細かった沢水が徐々に太く勢いを増し、雄大な梓川へと姿を変えた。何年も何百年も何千年も何万年も変わらぬ自然の有様。圧倒的な存在に包まれ、自らの非力さを思い知らされることで得られる一種の安堵感こそこが、私が山に向かう理由なのかな、、、長い長い帰り道を歩きながら思った。

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少し余裕があったので、明神から右岸側(明神池側)へ。木道が整備され、これぞ高原リゾートな森を越えたら、ゴールの河童橋が迎えてくれた。3泊4日の旅、無事終了。きついはずなのに、もう少し歩けそうだった。夢から覚めたくなかったんだろう。

少し早く到着したのでバスを一本繰り上げようと、急ぎ足で上高地バスターミナルへ。缶ビールを片手にバスに飛び乗るやいなや、窓の外は大雨…。「私たち、勝ったね」いやいや、本当に全行程において天が味方してくれた、怖いくらい神がかった旅だった。

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山の楽しさを教えてくれたKちゃんとの出会いがなければ、今回の旅は実現していなかっただろう。この1年間、毎週、毎週、取り憑かれたように山に登り、まさに一歩一歩を重ねてこれたからこそ、見ることができた景色だったと思う。Kちゃん、本当にありがとう。それをあたたかく、時に厳しく、サポートしてくれたNくんにも感謝しかない。

ということで、幸運の代償として、なんてことない場所で浮石にのって転倒し両脛打撲。乗り換え駅のトイレにドリンクボトル置き忘れ(着払い発送待ち)、、、だったかな。これぐらいで済んだのは、私にしては上等。

あんなにキツかったのに、次はどの山を登ろうか…そんなことばかり考えている。「山、、、特別好きでもないな」なんて言っていたが、これにてやっと「山、、、結構好きやね」と言えるような気がしてきた。

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