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こぼれ落ちたものを

こぼれ落ちたものを、

ひろい集めにいこうと思う。

桜の花がはらはらと落ちるのを見て

これまで何度となく繰り返してきた春を思う。

桜が大好きで、桜が咲くこの時期になると

なにもなくとも祝福されている気分になる。

広い空の下で、めいっぱい伸びた枝。

ひらひらと舞い落ちる花びらは、

地面の色も変えていく。

辺りを、明るい色に染めあげていく。


悲しみや痛みでいっぱいになって、

気づけなかった大切なものが

たくさんあった。

罪悪感や怯えでいっぱいで、

見えなかったよろこびがあった。


春のやわらかな光は、

すべての重たさを溶かしてくれるような

心地がする。

花が開いていく、その神秘的なまでの美しさ。

毎日を明るく温かく照らしてくれる太陽。

全身をめぐり、手のひらのその指先まで
絶えずめぐっていく血液と、

やわらかな手のぬくみ。

やすらかな呼吸のリズムと、心臓の鼓動。


いつだってこの世界は

いのちを生かそうとする力に満ちていて

本当は、自らの内にも、

その力はある。



感じる時間を、持ちたいと思う。


いのちを生かそうとしてくれる

この世界の優しさに

耳を傾けていきたい。

世界に舞い落ちる

祝福の音を聞いていたい。



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