コオロギ食は日本にどのくらい浸透するか?
こんにちは。先日昆虫食業界(?)で話題のコオロギビールを飲んできました。とても美味しく、食材としてのコオロギの可能性を垣間見た気がします。
コオロギビールを提供するANTCICADAさんは今年の4月にはコオロギラーメンを提供するお店を開業するらしく、期待が高まります。
また、無印良品さんも今年の春からコオロギせんべいを出すとのことで、今年は昆虫食の中でも特にコオロギが盛り上がっているなぁと感じます。
コオロギを使ったお菓子や食べ物はこんなにもあります。こういったコオロギ食がどのくらい日本に浸透するのでしょうか。
コオロギ新時代
コオロギ食関係で、下記の記事が目につきました。
日本でのコオロギ加工品の先駆者であるBugMoの代表の方が、
「良質な栄養を豊富に含むが、これだけではサプリメントなどと戦うのは難しいと考え、約1年前から方向転換を図った。高栄養だけを訴求するのではなく、コオロギの持つオーセンティックなうまみやコクといった“感性に訴える味”を周知することが必要だ。」
https://news.nissyoku.co.jp/news/sinohara20200312125951967
といったことを述べていました。
BugMoさんが出した商品、コオロギ50匹分のプロテインバーを2年前に食べ、新時代感あるなと感動したのを覚えています。
そのBugMoさんが高栄養の訴求から美味しさの訴求へ方向転換をしたということを知り、「コオロギ界は次のステップに進んでいるのか!」と一人熱くなっていました。
栄養価や環境負荷はあまり重視されない
栄養価が高いことや環境負荷が少ないという点で注目されてきた昆虫食ですが、一般的に食品を選ぶ際は、あまりそれらの点は重視されません。
農林水産省のデータによると、栄養価を重視する人26%、環境への配慮を重視する人は7.8%とのことです。価格やおいしさ、好みなどと比べるとどうしてもそれらを重視する人は少なくなります。
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki/h29/zuhyou/z2-6.html
現在のコオロギの食品としての浸透度
では、栄養価が高いことや環境負荷が少ないという点が訴求ポイントとしてあまり強くない中、これからどのくらいコオロギ食が日本に浸透していくのか。
現状でも、食べようと思えばネットで買えますし、食べられるお店もありますし、ある程度浸透しています。しかし、一般的かと言われるとそんなことはありません。
食として浸透しているかどうかを一言でいうのは、なかなか難しいなと。まず現状を知る上で、他の幾つかの食材との比較で浸透度を考えてみようかと思いました。
比較する食材は、
環境負荷の話でよく出てくる牛肉、
味が近いと言われるエビ、
比較的最近一般的になったと個人的に思っているパクチー、
ギリギリまだ一般的じゃないけど知られ始めたかなという菊芋、
を選びました。
生産量と消費量
まずはどの程度育てられ、食べられているのか、生産量と消費量とで比較しました。
牛肉:https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/attach/pdf/bukaisiryou-7.pdf
エビ:https://region-case.com/rank-h28-product-lobster/
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_4_2.html
人口:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2017np/index.html
パクチー:https://region-case.com/rank-h28-product-coriander/
※牛肉平成27年、エビ平成29年、その他は平成28年のデータ。ごちゃごちゃですみません。。エビの消費量は450g/人×1億2670万6千人という計算を行った。
すぐにインターネットで調べられる範囲では、生産量や消費量が少ない(であろう)菊芋やコオロギの情報は出てきませんでした。
レシピ数
ということで、何か浸透度の目安になる指標はないかなぁと思い、次に思いついたのが、投稿型レシピサイトcookpadさんのレシピ数での比較です。
一般の人が自分で作った料理を投稿している数というのは、世の中一般に浸透しているかどうか測る目安としていいのではないかと思います。
レシピ数は現在、こんな感じです。
(https://cookpad.com 2020年3月30日にHP内の検索窓にそれぞれのワードを打ち込み検索)
個人的には、パクチーが2万近くになるのに菊芋が1000に満たないことに驚きました。それほどまでに差があるのかと。。
あとコオロギレシピすでにあるんだ!って思いました 笑
コオロギ食について調べたり食べたりしていると、もう結構浸透して一般的なのかな?なんて思うことがあったのですが、これを見るとやはりまだまだコオロギ食は一般的ではないなと思います。
(食べたことない人にとっては、当たり前だろ!と突っ込みが入りそうですが・・)
食材としてどこを目指すか
コオロギ食が一般に浸透するかどうかは、食材としてどんなポジションを目指すのかによって決まるのではないかと思いました。
というか、そう考えた方がワクワクするなと。
これからのコオロギ界は俺たちが作っていくぜ! みたいな。
・栄養推し
例えば菊芋は、健康にいい(高血糖を抑えるなどと言われています)と話題になりましたし、販売者もその点を訴求しています。
このように「栄養推し」の路線にいくと栄養で食材を選ぶ市場の規模に落ち着くのかなと。
(もちろん市場規模や販売量だけで、食材として勝っている劣っているということはありません。)
また冒頭で挙げたBugMoの代表の方の発言にもありましたが、栄養推しになるとサプリメントなどが競合になってきます。
コオロギに含まれるタンパク源やミネラルなどの良い点を知ってもらいたいですが、そればかり訴求しても中々一般に広げるのは難しそうです。
・味推し
かたやパクチーは美味しいということを訴求し、しかもそれが多くの人が受け入れたため大きく広がったのかと思います。嫌いな方も多くいるようですが、味に特徴があり好きな人も多いです。
また、パクチーを料理に使うアジアの食文化が先に日本で広く受け入れられていたからこそ、急速に広がったという話もあります。
・味推し+歴史
クックパッド力(?)6万近いエビクラスになると、日本でも昔から獲れて食べられてきましたし、美味しいという事実があります。
コオロギをここまで浸透させていくのは険しい道になるとは思いますが、世界では少なくとも20億人※の人の食生活に浸透していると考えれば、日本でも食虫文化を広げていくのは不可能ではないと思います。
※ https://globe.asahi.com/article/12611838
すでに食べられている地域の食べ方ごと取り入れられたらいいなと思います。このレシピが美味しそうでした。
100億人時代 肉なき後
さらにですね、時代の変化によって食べるものが変わることは大いにあり得ます。
それこそ時代の変化で食生活が変わったのは、牛肉が代表的な例としてあげられます。
昔からある程度牛肉は食べられていたようですが、西洋的な食事が広がったのは明治時代からですし、昭和30年代の戦後の経済成長とともに牛肉は大きく拡大してきたそうです。
経済的に豊かになった昭和30年代に、明治の肉食解禁後ほぼ1世紀かけて蓄積した食文化が、一斉に開花した感があります。
生産面でも、若齢肥育牛が普及しました。乳用種雄の肥育牛が、食用に転用され、雌牛とともに大衆肉として出回るのです。
http://jbeef.jp/daizukan/encyclopaedia/article.html?encyclopaedia_article_id=654
これからの時代を考えると、正直残念なことに日本の経済成長は鈍化していますし、環境負荷を考えると牛肉を食べることがどんどん困難になっていくのではないかと予想しています。
(全くなくなることはないかと思いますが、高級になっていくと予想しています。)
時代が変わり、肉が食べづらくなった先に、どういう食生活に変わっていくのか。
代替肉や培養肉を食べるのか。
食虫文化を広げていくのか。
終わりに
「コオロギ食は日本にどのくらい浸透するのか?」
それはコオロギなど新しい食材を広げていきたいと思う人たち次第なのかなと思っています。
正直コオロギは美味しいです。
もっと正確に言うと、美味しい食べ方がどんどん生まれてますし、生まれる可能性がたくさんあります。
例えばコオロギパウダーをベーグルサンドにまぶすだけで美味しさが増します。なかなか手軽に取り入れられます。
我々の農園でも現在食べ方の研究しています。
是非皆さんもコオロギ界を一緒に盛り上げていきましょう!
それでは!
書いた人 山田直明
北海道大学卒業。現在、株式会社えと菜園・NPO法人農スクールのスタッフ。小学生の頃「誰が一番、誰も食べそうにないものを食べれるか」を競って虫や連絡帳を食べる同級生達がいた。マジかよ胃袋力高いなと圧倒されていたが、大人になって虫は食べれるようになっている。連絡帳は食べない。
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