見出し画像

どストレートに進み、価値を創る | 株式会社TR-55 広岡一実 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。
今回は株式会社TR-55の広岡一実さんです。

広岡一実(ひろおか・かずみ)
豪化粧品JurliqueとAesopのマーケティングに従事した後、日本初のGPSゴルフナビゲーション事業の立ち上げに事業統括として参画。その後インフォコム社にて新規事業の立上げや、M&A、スタートアップ投資に従事し、2013年4月よりアドイノベーション社に参画し取締役CFOとして累計4.2億円の資金調達や全社戦略、およびIPO準備等に従事。2015年4月当社創業。

ど真ん中のプロジェクトがもっと増えてほしい

COTENインタビュアー(以下、ーー)株式会社TR-55について、簡単にご説明いただけますか?

広岡さん:現在は2つの事業を進めています。1つはグロースハックスタジオという新規事業の創出や成長戦略の実装支援、もう1つはプロダクト開発です。直近ではコラボレーションツール「Nproc(エヌプロック)」を開発しています。Nprocはオンライン上のホワイトボードに共同編集可能なドキュメントエディタ、カンバンやタイムライン管理が可能なマルチビューテーブル、課題を立ててディスカッション可能なスレッドを統合したコラボレーションツールになっています。今期中にクローズドでリリースする予定です。

――2つの事業を並行して始めようと考えたきっかけは何ですか?

広岡さん:実は当社は元々PDCA管理ツールを無料で配布し、アドネットワークへのつなぎ込みでマネタイズをするというストーリーで2015年に起業し同年VCから調達をしています。「データドリブンにどうPDCAを実施していくか?」という問いだったのですが、実際にその一部を作って運用してみた結果「これはGoogleが標準装備する領域である」と認識できてしまい、エクイティストーリーが早々に破綻しました。そこで「自分が新規事業やスタートアップに関わっていた経験が長いこと」、また「デジタル化がプロダクト・ライフサイクルをますます短命化させること」、最後に「Googleが来ない所」の3つをかけ合わせた結果、新規事業領域へピボットをしたという経緯があります。

――一度ピボットを経験されているのですね。実際スコープを変更してみてどうでしたか?

広岡さん:最初は新規事業の共通言語がなさすぎるということで新規事業創出ガイドTHRUSTER(スラスター)の整理をしました。THRUSTERのバージョンアップは現在も行っています。その後様々な企業の新規事業開発、特にエクイティストーリーの整理や仮説検証活動を支援しているのですが、その活動を進めていくうちに自分のビジネスパートナーが「正しい計画が初めから設計できないプロジェクトを、どうマネジメントするのか?」という問いを発見し、そのコンテキストからプロダクト開発への挑戦も開始したという流れになります。ちなみに余談ですが創業初期にVCから調達した資金はエクイティストーリーが変わりすぎていますし、時間もたっていたこともあり買い戻させていただいております。本当に不徳のいたす所という気持ちになりました。

――そうした流れの中で「Nproc」にたどり着いたんですね。

広岡さん:最初は新規事業から入ったこともあり、正確な計画が設計できないプロジェクトとできるプロジェクトがある前提から入ったのですが、途中で正確な計画が設計できるというのは時間軸を短くしてみたり、アウトカムを無視してQCDだけ成立させたりしているだけで本来的には計画なんてものは正しく設計できないのが前提なのではないか?という気づきがありまして。

例えばデータから抽出できる客観性の高い仮説というのは、とある前提条件の元で成り立ちます。しかし事業の課題やリスクを深堀りしていくと、その前提そのものが疑わしいと感じる論点はそこら中に存在します。

しかし実際にはそういう前提がひっくり返るような論点はあまりテーブルに乗りません。というか、乗せないようにする圧力があります。また仮に乗ったとしても「リーダーがそのコンテキストを吸収した意思決定をしない、仮にしてもブラックボックス化しててよくわらない」ということが発生し、多くの現場は常にブルシット・ジョブで溢れかえっています。

本来は、意思決定を繰り返しながらリーダー自身の解像度を高めることで仮説や計画の確度は上がるわけですが、まるで「上手くいっていないのは自分のせいではない」と言わんばかりのリーダーを目にすることが多くあります。Nprocは「どうするとリーダーとステークホルダーがより良くコラボレーションできるか?」を主眼に開発しているツールになります。

ちなみに、上述の通りNprocにとって自分は投資側のロールになります。そちらからの観点でいえば、グローバルに時価総額も資金調達額も巨大な競合他社がおり、普通にやると勝てるわけがないように感じる市場。それでも、可能性のある論点を見い出せたならば、それがどれほど難しいことだとしても、まずはノールックで投資して実装できるまでやってみる。そして成功するまでプロジェクトを止めない。それがこれからのビジネスにとって最も重要な姿勢になると思い実験している部分もあります。

なぜ、日本でスタートアップが成長しにくいのか

――日本でスタートアップが成長しにくい背景について、広岡さんはどのようにお考えですか?

広岡さん:大きく2つですかね。1つ目はグローバルな視点でとらえた課題にリーチしづらいことです。というのも、日本は単一民族、単一言語の島国なので、長い歴史の中で独自の文化が形成され、特殊な課題が存在します。そんな日本で浸透したビジネスモデルをグローバルに持ち込んだところで、それはさすがにフィットしづらい印象です。また仮に何らかのグローバルの課題を認識できたとしても、そこには世界の競合がひしめき合っているので、日本のエコシステムだけでは投資額の観点からも勝ちづらいと思っています。みなさんも法律が絡むようなバックエンド系のツールは国内プロダクトを使いますよね。世界的にフレームが決まっているCRMのような世界では、外資プロダクトが日本でも多くのシェアを持っているという印象があると思いますが、それがこの論点かと。

また、2つ目はGAFAのようなニューエコノミーのコアに近い事業を立ち上げきれなかったこと。これによりスタートアップのM&Aの出口を作りづらい状況になっているという印象です。オールドエコノミーの会社からすると、ニューエコノミーのスタートアップの買収って1つのポートフォリオ拡大要素くらいにしかならなず、既存事業の強化に使いづらい印象があります。

――だからこそグローバルでど真ん中にくるようなプロジェクトを生み出す人が増えてほしい、と。

広岡さん:そうなれば、もう少し希望に溢れる時代がまた生まれるかもしれないですよね。スタートアップや新規事業などは、突き詰めると覚悟や腹の決まり方が事業の成否を決めているように見えます。「Nproc」は現実的には「勝てるわけがない」と考えながらも、可能性を見いだして難しいからこそ挑戦しているプロダクト。絶えずアプローチしていけば、新たな知見が蓄積されて新しい可能性は必ず生み出せるように思います。

矛盾を抱えながら「どストレートに進む」

――いかに覚悟を決められるか、ですね。

広岡さん:どの企業も「社会や顧客のために」という理念を掲げる一方で、その意思決定のほとんどは自分たちの経済合理性を主眼に行われていると捉えざるを得ないことが多くあります。本来は企業や事業は社会や顧客のためになる活動をすべきではありますが、当然、自分も儲かりたいと。このような矛盾が誰の中にも存在していると思っています。別に自分を犠牲にしろと言いたいわけではありません。この点を意識していないと「自身のエゴ」によって自分自身がコントロールされてしまうということが起こると思っていて、それは分裂を生んでしまいます。これからのリーダーはストレッチ・コラボレーションが必要になると言われる所以もこのあたりから想像できますよね。

――“矛盾”と向き合うことが大事。

広岡さん:競争はあったほうがいい。かといって、愛がなさすぎる世界は良くない。そんな社会に対する矛盾を抱えて、内省しながら“どストレート”にプロジェクトを進めていくリーダーが求められていると思います。

――自分の中の“矛盾”は、いつから考えるようになりましたか?

広岡さん:そんな大した話じゃないですが、。チヤホヤされたい自分と、意味のない活動に嫌気がさしている自分、理想はあれど努力しない自分など、高校時代からずっと自分の中にあります(笑)

COTENの理解が難しいプロジェクトに惹かれた

――法人COTEN CREWに参加するうえで、どんな部分に共感しましたか?

広岡さん:COTENの取り組みは、最初は率直に「とがってる」と思った一方で「意味づけ難しい」と思いました。それは自分の認識の足りなさなのですが、実は伴走支援でコンテンツを利用させてもらうことが増えてきたというのが実態で、使用料をお支払いしないとと思った方が強いです。

――伴走支援でどう使っているのですか?

広岡さん:そうですね。クライアントさんが陥っている状況を俯瞰的に理解してもらうために、その状況に似ているコンテンツを紹介して聞いてもらっています。COTENのコンテンツはリーダーの意思決定の事例が多くありますから。

――これまでどのあたりのコンテンツを利用されましたか?

広岡さん:文化人類学者のレヴィ=ストロースの回は、もう10回くらいは使っていますね。問いを議論する上で「構造」とは何かを知ってもらった方が議論がしやすいというというのがあります。あとはフランス革命も、結構利用させてもらっています。人が主体的になりその総和が社会を変えていく例として使ったりという感じです。

――そんなにご活用いただいているんですか! ありがとうございます。

広岡さん:新規事業って思いつきだと思われる方も多いと思うのですが、実際は歴史の延長線上に“現在”があるんですよね。また単なるジャストアイデアで「これが流行ります」といわれても、何かシナリオが違った時に振り返ることができなくなります。そういう意味でも歴史に裏打ちされたプロダクトやサービスこそ、次代につながっていくと思います。

――今後、COTENの取り組みに期待することは何ですか?

広岡さん:これからどのようにテクノロジーの要素と掛け合わさるのかが、とても楽しみです。偉大な価値は「哲学」「テクノロジー」「アート」の3つが融合させた状態だと思っているので、なんらかのテクノロジーの取り込みができると凄いものができるのではないかなと。

COTENの哲学的なアプローチをベースに、テクノロジーと結びつけることでさらに強力なプロダクトやサービスを生み出せると信じています。

――本日はありがとうございました!

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:壁谷雪乃)


ここまでお読みいただきありがとうございました!

COTEN CREWに参加しませんか?
「個人COTEN CREW」として、COTENの活動を応援してくれる人を募集しています!ご参加はこちらから
・限定エピソードの配信
・COTEN RADIOをいち早く一気聞きできるアーリーアクセス
・月1で事業進捗をお伝えするニュースレター

「法人COTEN CREW」になって、企業のあり方を一緒に探求しませんか?ご参加はこちらから
・法人COTEN CREWのSlackコミュニティ
・勉強会の開催