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メシが食える大人を育てたい | 花まる学習会 高濱正伸 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。

今回は花まる学習会の代表、高濱正伸さんです。

高濱正伸(たかはま・まさのぶ)
1959年熊本県生まれ。東京大学卒、同大学院修了。1993年、「メシが食える大人に育てる」という理念で「花まる学習会」を設立。NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長、算数オリンピック委員会作問委員、日本棋院理事。保護者向けの子育て講演会のほか、『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』など著書多数。2020年から無人島プロジェクトを開始。

子供たちに必要なのは「外遊び」だ!

COTENインタビュアー(以下、ーー)そもそも、高濱さんってなぜ教育に関わる事業をされているんですか?

高濱正伸様(以下、高濱さん:):僕は本当に子供が好きなんです。子供たちが走り回ったりニコニコしたり泣いたり笑ったりしているのが、かわいくて見ていて全く飽きないんですよね。
20代で、映画やお笑いや音楽に教育っていろいろとやっていたけれど、やはり教育が一番いいなと思って。今はそれで間違いなかったなって思っています。

ーーいいですね。学習塾って競合も多い中で、どういうふうに今の花まる学習会さんになっていったんですか?

高濱さん:ただ楽しくてやっていた結果、こうなったんですよ。

ーーそうなんですか?!

高濱さん:戦略や経営ってあまり分かっていなかったんです。ただ、後から分析をしてみると、まだ誰も見つけていないことに目をつけていたのかなと思っています。漢字や計算の練習を繰り返すんじゃなくて、思考力に特化していきましょうとかね。それで最終的に「外遊びがメインだ」ってことになったんですが、塾としてはありえないですよね。

ーー外遊び……。

高濱さん:リスク管理を考えても当然です。でもそこは絶対的な自信がありました。いい若手がいっぱい集まったのもあるし、あと必要なのは思考力と外遊びだと思ったんです。
他の塾も似たようなことを始めるけれど、クレームがくると結局やめちゃうんですよね。でもうちは、それが人生の楽しみの原点だと思っているのでやめなかったんです。

ーーうんうん。

高濱さん:最近、『傷つきやすいアメリカの大学生たち』というアメリカのベストセラーが翻訳されましたが、まさにそのことが書いてありました。
2010年代、アメリカで若者のうつ病と自殺が一気に増えて、どうしてこうなったのか学者たちが分析したという本なんですね。簡単に説明すると「安全イズム」がキーワードになってくる。「それって本当に安全ですか?」という保護者たちに囲まれると、なにもできなくなるんです。例えば雪合戦。久しぶりに雪が降ったから学校で雪合戦をしたら雪玉に小石が入っていてケガをしてしまった。そうなるともうクレームですよね。
そこで学校は決断します。「お母様方ご安心ください。この学校では雪が降っても2度と子供たちには触らせません」ってね。

ーーへえ! アメリカでもそうなんですね。

高濱さん:小学3年生ぐらいだと「人の家の庭を抜けていこうぜ」っていうのも冒険ですよね。小6や中1ぐらいなら「親たちに黙って電車で海に行こうぜ」とかね。もちろん、ちゃんと考えたら確かに危ないし、行って帰ってくるとお母さんたちに叱られちゃうことなんですけれど。でも、子供たちにはすごくいい経験だし、そういう中で主体性や集中力が育つんですよ。今はそういうものも全て「危ない」って管理されていて、たくましさが育っていないんですよね。「正しく・優しく・きちんと」は育つ。でも、心の強さが育てられない時代になっているんです。
そんな中でうちは「外遊び」や「野外体験」が大切だって頑張ってきたのが、生き残れた理由なのかなとは思います。

ーーそれって最初から言い続けていたんですか?

高濱さん:そうですね。30年前に引きこもりの問題に気づいたんです。たまたま同じアパートに精神科のお医者さんをしている友人がいて、「この国は働けない大人を量産してるんだよ」って言っていて。考える力や野外体験、友達を作る力なんかが育っていないのが問題なんじゃないかと。
あと、うちは子供だけじゃなくて親にもアプローチするんですよ。親が変わらないと子供たちも変われないんです。
最初に「塾で野外体験をやる」って言ったら「事故があったらどうするの?」ってまさにリスク管理のことを考えて周囲が言ってくれました。だけど、それこそが今の時代に足りないものだと思うからやるしかない。

ーー親側の反応ってどうだったんですか?

高濱さん:それがね、「わかってもらえた」ってお母さんたちが多かったんです。お母さんたちは追い込まれているんですね。人の目を気にして、「こんなことしたら変なお母さんだと思われないかな?」と思いながら一生懸命やっているけれど自信はなくて。そんなお母さんたちの現場に入り込んでそれを言葉にしていったら、「わかってくれた」と。 

社員の「言葉」を鍛えるオリジナル研修

ーー塾を全国に広げていったとき、均一した授業の内容や親との関係を同じレベルでやっていくってすごく大きなハードルがあったんじゃないかなと思うんですけど。

高濱さん:その通りですね。やはり全国に広がっていくときにはそれが大きな壁でした。
最初の5校は僕が前に立ってやっていたんですけれど、塾の数が増えていくとなかなか行けないところも当然出てきます。そうすると「高濱さん来てくれない」ってなってしまう。

ーーそうですよね。

高濱さん:勉強のために塾に預けようっていう親たちは、やはり実力もあってトップの人たちばかりですよ。だから、うちの社員がどのくらいの人材かってすぐわかっちゃう。彼らが、親側から見て魅力的じゃなくちゃいけないんですよね。もちろん見せかけじゃなくて。それで、彼らの言葉の力を上げるということをやってきました。

ーー具体的にはどんなことをされていたんですか?

高濱さん:毎日書く日報に「今日はつつがなく終わりました」なんて書くのはダメですよね。何でもいいからスケッチをしてねと言っているんです。
例えば、Aちゃんは大人しい子だなと思っていたら、今日はとてもはしゃいでいた。そこでお母さんに電話をして「なにかありましたか?」と聞く。「単身赴任の夫が帰ってきたからなんですよ。パパ大好きですから」ってね。そういうことがあるんだなって知る、それがひとつのスケッチなんです。そういう一つひとつの変化をちゃんとキャッチして書いていくんですよ、自分の目で見たニュースを。
いいことを書こうとか褒められようとかじゃなくて、誠意を持って教育にかけている気持ち、もちろん親への思いやりなんかも書いていく。そうすると「この先生は頑張ってるんだな」って認めてもらえるし、若者でも応援してもらえる人になれるんです。
うちではそういった形で、言葉を鍛える部分の研修がとてもオリジナリティ高いんです。これはちょっと自信がありますね。 

ーー面白いですね。本に書いている言葉じゃなくて、自分の経験から得た、経験して実際に見て書こうとしないと出てこない言葉ですね。

高濱さん:そうなんですよね、そういったところに気づくクセみたいなものをつけてあげると、確実にみんな力をつけてくるんです。

教え子が「メシの食える大人」になる喜び

高濱さん:最近はね、教え子だった子の子供が入会してきたりするんです。しかもものすごく手のかかった子が、ちゃんと自立して「先生!」って来てくれることがたくさんある。
この間も、1期生の子から電話をもらって、一緒に食事をしたんですね。1期生ってやはりすごくよく覚えているし、その中でも手のかかった子だったんです。そんな子がお母さんになって、赤ちゃんを抱っこしながら来てくれて。帰りに支払いをしようとしたら「先生やめてください、メシが食える大人になったことを見せたくて来たんだから」って私の分まで払ってくれたんですよ。

ーーうわあ、嬉しいですねそれ。泣けますね。

高濱さん:嬉しいですね。そういった話が山ほどあります。そういうことのオンパレードで、毎日本当に面白くてしょうがないんですよ。

ーー高濱さんの『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』という本の中に「3つの自立」や「5つの基礎力」といったキーワードが出てきて、もしかしてCOTEN RADIOと何かしら通じるものがあったのかもと思いました。その辺り、高濱さんの視点から聞いてみたいです。

高濱さん:算数なら算数の面白さをどれだけ教えられるか、歴史なら歴史の面白さをどれだけ伝えられるかっていうのが先生の力量だと思うんです。
でも、今の学習の仕方って評価基準が外にあるんですよ。「テストに出るから」「ここは記憶しなきゃいけない」なんかがそう。もちろん偏差値と点数で評価されるものとして歴史の学習もしますが、COTEN RADIOは歴史への愛があるんですよね。徹底して調べ上げてくるところもすごいし、実際に聞いていても面白い。出てくる話がセレクトショップのような選び具合なのも楽しいんです。子供たちには、COTEN RADIOみたいな面白いものに触れて大人になってほしいなと思います。

ーーありがとうございます。

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:森まゆみ


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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