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「はたらく」を広げるチャレンジを | 株式会社はたらクリエイト 井上拓磨 × COTEN

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々への対談連載。

今回は「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」をミッションに、長野の拠点で活動している株式会社はたらクリエイト代表の井上拓磨さんです。

井上 拓磨 (いのうえ・たくま)
株式会社はたらクリエイト代表取締役。1980年愛知県生まれ。
2008年に妻の出身地である長野県上田市に移住し、2012年県内初のコワーキングスペースHanaLab.を開設。2017年にはたらクリエイトを設立。「女性が長期的なキャリアを見据えて働くことのできる環境」を核としながら、企業の成長をリモートチームとしてサポートするサービス「banso.」を展開する。2022年には「はたらくが広がる研究所」というコンセプトで運営する「Gokalab」を開設。内閣府の男女共同参画推進委員・地域活
性化伝道師。

友達が欲しくてコワーキングスペースを立ち上げる

COTENインタビュアー(以下、ーー):はたらクリエイトの事業を簡単に紹介いただけますか?

井上拓磨さん(以下、拓ちゃん):はたらクリエイトは、結婚・子育てなどでキャリアチェンジせざるをえなかった女性が、もう一度キャリアを再構築し、誰でも仕事を楽しむことのできる環境を作りたいという思いから事業を開始しました。Webコンテンツ制作やDX支援などを中心に事業を展開しています。もともとは長野県上田市にコワーキングスペースを立ち上げたことから始まりました。

ーーーなぜ長野県上田市にコワーキングスペースを立ち上げたんですか?

拓ちゃん:僕は愛知県名古屋市の出身で、上田市は妻の故郷なんです。福岡で企業勤めをしていたのですが、「上田に帰りたい」と言われたので、仕事を辞め引っ越しました。だから知り合いもいない状態から始まって。

当時、姉が勤めていた名古屋のベンチャー企業を、上田からリモートで手伝っていました。クライアントは名古屋や東京ばかりで、知り合いは妻の家族しかいない。
同性代の若い人たちと仕事の話ができるネットワークを作りたいと考え、コワーキングスペースを開設しました。友達を作りたいというのが、最初のきっかけだったんですよね。

ーー結果、若者は来たのでしょうか。

拓ちゃん:あの時代は今ほどリモートワークできる環境の人も多くなかったですし、地方都市なので若い経営者やベンチャー企業なども少なく、ニーズはなかったですね。どうしたら会員さんが増えるかと考え、創業支援やインターン事業、そのためのイベント企画などに積極的に取り組みました。おかげでバリューブックスさんなど、同年代の経営者仲間と出会えましたし、そこからいろんな人とつながり、ネットワークを作ることができました。「若者が創業しやすいまちづくり」の一端を我々が担えたのではないかと思っています。

ーーたしかに、バリューブックスさんも本社が上田市ですもんね!いろんな活動をして、つながりができたっていうことですね。

拓ちゃん:創業から5年でネットワークづくりはある程度やりきった感じがしたので、コワーキングスペースの事業からは一旦卒業しました。一方で、プロジェクトとして進めていた「子育て中の女性の社会復帰支援」はまだまだ課題が山積みだと感じていたんです。このプロジェクトがスピンアウトして生まれたのが、株式会社はたらクリエイトです。

現在、130名いる従業員のうち96%が女性であり、86%が小学生以下の子どもを育てています。会社設立から6年が経過した今では、子育て経験の有無、年齢や性別を問わず、さまざまな人材が参加してくれるようになりました。心身の不調によりフルタイムではたらけない人も所属してくれています。

地域産業で活躍できるIT人材を育成することを目指し、日本社会に根強く残っているはたらく上でのジェンダーギャップ、特にペイギャップ(男女の給与差)の解消に向けて、さまざまな取り組みを行っています。

方向性に迷った時、COTENに出会う

拓ちゃん:はたらクリエイトでは、経験や環境のハードルを越え、仕事を楽しむキャリアを醸成していく取り組みの他に、「はたらくの可能性をどう広げていくのか」を社会に問いかけるような仕掛けを常に行っています。そして最近、新たにコワーキングスペースを立ち上げました。

場所は、軽井沢の隣にある御代田町(みよたまち)。もともと人口が15,000人台だったところから、16,513人(令和5年8月現在)まで増えています。特徴のある教育を行っている学校が増えているこのエリアに、偏差値教育への疑問を持ち、自然の中で子育てをしたいと考えている人たちが集まってきています。割と有名ベンチャーや大企業に勤めている人、クリエイティブワーカーなど、面白い人が集まっている印象です。

ーーすごいですね。その中で課題はありますか?

拓ちゃん:面白い人たちが集まっている一方で、人をつなげる役割を果たす機能がないと感じたんです。例えば、子どもの学校コミュニティには属しているけど、他のコミュニティにはアクセスしにくいとか、「〇〇さんも移住してきたらしいけど、出会うきっかけがない」といった具合に。特に、仕事の話にはつながりにくいという声を聞いていました。

ーー確かにローカルで繋がった人とで仕事の話をするイメージはあまりないです。

拓ちゃん:子どもや暮らしに関する話ももちろん大切だけど、仕事の話からぐっと仲良くなれることも多いじゃないですか。ちょうど御代田町にコワーキングスペースがなかったので、過去の経験を生かして、コワーキングスペースを作ろうと決めました。

ーーまさにコワーキングスペースの出番ですね。

拓ちゃん:一方で、地方でコワーキングスペースを運営するには、従来の場所貸し・サブリースのモデルでは限界があるとも感じていました。どういうビジネスモデルで運営していこうかと考えていたときに、ちょうどCOTEN RADIOの「ポスト資本主義」の回を聞いたんです。COTENさんが法人サポーターの募集を開始する上で、その体系が非常にポスト資本主義的であるといった理由から始まったシリーズです。それを聞いて、僕が頭の中で描いていた点と点がつながり、線になったような感覚を覚えました。

ーーここでCOTENにつながってくるんですね。

拓ちゃん:それで生まれたのが「はたらくが広がる研究所」というコンセプトです。「伍賀」という地名に研究所の「Lab」をくっつけて、Gokalab.(ゴカラボ)という名前にしました。子どもから大人まで「はたらくが広がる」ことに興味のある人が集まり、同じ空間ではたらき、実験し、共有していく場とうたっています。1年で研究員(会員)は70名にまで増えました。

ポスト資本主義の実践研究所を目指す

ーーCOTENのポスト資本主義回に共感した、という部分をもう少し詳しく教えていただけませんか。

拓ちゃん:深井さんはラジオの中で「多くの人たちはお金があっても幸せになれないことを知っているし、自分の人生を豊かにすることにリソースを使い始めている」と言っていたのですが、首都圏からこのエリアに移住した知人たちを見ていて、まさにそうだと感じていました。そうした選択をした人たちが集まるようなコワーキングスペースになれば、きっとおもしろいコミュニティになるだろうし、これからの新しいはたらきかたを模索する研究拠点になりえるだろうと思いました。

また、ラジオの中で紹介された山口周さんの著書「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す」も非常に参考になりました。本の中で触れられている「経済合理性限界曲線」。山口さんは「市場は経済合理性限界曲線の内側の問題しか解決できない」と指摘しています。

ーー投資対効果が得られづらい部分は企業は手を出しにくいですよね。

拓ちゃん:経済合理性曲線の外側の部分は、ビジネスでは解決できない領域とされてきました。でも私たちは、長年未経験者がスキルを身につける機会を作り、キャリアを醸成する取り組みを事業として行ってきました。図で言うと、普遍性が低く(一部の人が悩んでいる)難易度が高い課題(解決にコストがかかる)を、地方で取り組んできたと言えるでしょう。まさに、経済合理性限界曲線の外側から経済活動に入り込んでいくようなアプローチを、これまでもチャレンジし続けてきたと気づいたんです。

ーー経済活動の外側からアプローチすることで、経済活動を広げているんですね。

拓ちゃん:経済合理性限界曲線の内側だけでは、人は豊かに、幸せに暮らせないということを、私たちは知り始めています。資本主義経済の中にいるので、利潤を生むことも大切にしなければいけませんが、同時に意識変革のきっかけとなるような取り組みも重要だと考えます。

オープンから1年を迎えましたが、Gokalabを拠点に多くの取り組みが生まれました。ゲストを招きはたらき方をアップデートする「Gakkai」、各自の研究テーマをディスカッションする「Cogakkai」、月々粗利3万円のスモールビジネスを生み出し収益の足しにする活動「3Biz」、子どもがはたらくことを学ぶ「Gokalab.kids」。サウナやコーヒーなど、興味のあることを仲間と一緒に探究する「研究会」も多数発足しました。これらはほんの一部ですが、多くの取り組みが誰かの「やりたい」「面白そう」から生まれています。

拓ちゃん:Gokalabを通じて豊かさに目を向けることが、多くの人の、そして社会全体の「はたらく」を広げることにつながるのではと思っています。

ーーGokalab.を通じて、ポスト資本主義の可能性を実践で研究活動をされているんですね。今後の研究結果が楽しみです。ありがとうございました!

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:Irikida Moe


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