277. 外転麻痺における眼球(Globe)移動のMRI

Magnetic Resonance Imaging of Globe Translation in Abducens Palsy

Kim C, Demer JL. Am J Ophthalmol. 2023 Sep 27:S0002-9394(23)00382-3. doi: 10.1016/j.ajo.2023.09.016. Epub ahead of print. PMID: 37774994.


目的:直筋麻痺は、能動的な後方への張力の低下により前方への突出を引き起こすと考えられてきた。本研究では、外転(神経)麻痺における水平ひき運動時の眼球移動を評価することで、この命題を検証することを目的とした。

デザイン:前向き、単施設、健眼対照、ケースシリーズ。

方法:他の眼球運動障害を伴わない孤発性片眼外転神経麻痺患者の眼窩MRIを用いて、水平方向の眼球回転と平行移動を定量化した。眼球運動障害のない健眼を対照とした。デジタル画像解析を行った。

結果:平均年齢52±15歳の女性5名、男性2名が対象となった。平均内斜視は39.0±9.7⊿であった。平均内転角は、麻痺眼で54.9±10.4°、健眼で52.0±7.1°と同程度であった。しかし、麻痺眼の外転は-11.4±7.1°と、健眼の-37.1±11.4°より有意に小さかった(P=0.0023)。内転の平均前後移動量は、麻痺眼窩で0.46±0.42mmであり、健眼窩の0.35±0.47mmと同程度であった(P=0.90)。外転の前後移動は、麻痺眼窩で平均0.17±0.53mmであり、健眼窩の0.27±0.73mmと同程度であった(P=0.80)。麻痺眼窩の平均内転水平移動量は-0.32±0.23mmで、健眼窩の-0.12±0.44mmと統計学的に同程度であった(P=0.54)。麻痺眼窩における外転の平均水平移動は0.19±0.18mmで、健眼窩の0.33±0.15mmと同程度であった(P=0.38)。

結論:外転麻痺は水平方向の眼球移動に影響を与えない。

※コメント
外転神経麻痺は外直筋を弛緩させるため、拮抗筋である内直筋の弛緩時に眼窩結合組織の受動的弾性反動によってのみ外転が達成される。 片側の筋が麻痺すると、後方に向かう外直筋の総力は必然的に減少するため、眼球を支える受動的弾性力は眼球を前方に移動させると考えられる。
しかし、本研究の結果では眼球の前方移動は麻痺眼と健眼でほぼ同程度であった。つまり、眼窩結合組織が非常に強いという証明となった。(プリ―の剛性が非常に強い)


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