37. 内直筋の上部は,近見視時は弛緩するが,遠見視時は弛緩しない。この活動は,Sherringtonの法則に反している。

Functional anatomy of human extraocular muscles during fusional divergence

Demer JL, Clark RA. J Neurophysiol. 2018 Nov 1;120(5):2571-2582. doi: 10.1152/jn.00485.2018. Epub 2018 Sep 19. PMID: 30230991; PMCID: PMC6295544.

MRIを用いて,両眼開放下で,20cmで単眼に8ΔBase inと400cmで単眼に4ΔBase inを通したときの正面視の融像と融像性開散を繰り返した際のヒト眼筋収縮力を定量的に評価した。収縮力は後方部分体積(PPV)変化で示され,水平直筋,上斜筋(SO)の内側と外側のコンパートメント,下斜筋(IO)の断面積変化で解析された。
20cmにおいて,10名の被験者の3.1±0.5°(SE)の開散は,外直筋(LR)全体のPPVの4.2±1.5%の増加(P < 0.05)および内直筋(MR)全体の1.7 ± 1.1% 減少(上部コンパートメントの 3.1 ± 1.8% 減少)と関連していたが,下部コンパートメントの変化はなかった(P < 0.025)。400cmでは,9人の被験者が2.2±0.5°の開散外転運動を起こし,LR全体のPPVを6.1±1.3%増加させたが(P < 0.01),MRに変化はなく,LRとMRは同様の弛緩がみられた。輻湊とは異なり,IOやSOの収縮の変化はなく,直筋プーリーの位置も変化しなかった。この結果は,近見の開散ではMR上部コンパートメントの役割を確認・拡大したが,遠見の開散ではMRの役割はない。輻湊の行動範囲が限定的であること,輻湊の際に MR が弛緩しないこと,LR と MR が共に弛緩することは一致する。
新しい知見:ヒトが単眼視,両眼視を行う際に,外直筋は対側の内直筋の継続的な収縮を克服しなければならないことがMRIによって示された。内直筋の上部コンパートメントは,近くの目標に対しては弛緩することでアシストするが,遠くの目標に対しては弛緩しない。この挙動は,Sherringtonの法則と眼球運動系に関する従来の仮定に反している。

※コメント
開散運動の際の眼筋の状態を調べた報告です。
近見ではMRの上部は弛緩する(下部は弛緩しない)が,遠見ではMRは弛緩しないとのこと。
この結果の裏付けとして,開散融像幅は遠見より近見の方が大きいこと。遠見時はLRにより負荷がかかっているものと思われます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?