327. 若年成人(65歳未満)における複視と高齢成人(65歳以上)における複視の比較-症候、進行および転帰

Diplopia in the Younger Adult (≤65 Years Old) Compared With Older Adult (>65 Years Old) Population-Presentation, Progression, and Outcome

Gindelskhi Sagiv R, Levy N, Huna-Baron R, Leiba H, Paz T, Rappoport D. J Neuroophthalmol. 2023 Sep 1. doi: 10.1097/WNO.0000000000001988. Epub ahead of print. PMID: 37656517.



背景:新たに発症した複視がQOLに与える影響は大きいにもかかわらず、高齢者の新たに発症した複視に関する研究はほとんどない。本研究の目的は、新規発症両眼性複視を呈する若年成人患者と比較して、高齢者における疫学、病因、予後、さまざまな治療法の転帰について述べることである。

方法:2010年から2021年の間に新たに両眼性複視を呈した18歳以上の患者の後方視的カルテレビュー。収集したデータは、来院時年齢、性別、複視発症からの期間、画像結果、既知の誘因、病因、治療、経過観察などであった。

結果:210人の患者が含まれた。そのうち75例が65歳未満(35.7%、「若年成人群」)、135例が65歳以上(64.3%、「高齢者群」)であった。両群に共通する病因は神経原性であった(54.7%65歳以上 vs 62.2% 65歳未満、p = 0.29)。頭蓋神経麻痺は、高齢者では微小血管性のものが多かったが(96.0% vs 74.1%、p = 0.005)、若年者では腫瘍に関連した頭蓋神経麻痺が多かった(14.81% vs 2.04%、p = 0.03)。制限性(restrictive)の病因は、高齢者群では11.1%であったのに対し、若年成人群では20%に認められた(p = 0.08)。サギングアイ症候群(Sagging eye syndrome:SES)は、若年成人群では1.3%であったのに対し、高齢者群では11.9%と2番目に多かった(p = 0.01)。代償不全型斜位/斜視は、若年成人群では16%にみられたのに対し、高齢者群では11.9%にみられ(p = 0.4)、後者では明らかな誘因(主に白内障手術)がみられた(高齢者群80% vs 若年成人群20%、p = 0.019)。画像所見が陽性であったのは、65歳以上の25.3%に対し65歳以下の46.7%であり(p = 0.01)、複視の完全な自然消失が認められたのは、若年成人の11.8%に対し高齢者の32.1%であった(p = 0.003)。

結論:神経原性複視は両群で最も一般的な病因であったが、高齢者ではより顕著であった。高齢者における顕著な所見は、SES診断、融像障害/複視の誘因の特定、画像所見における陽性所見の少なさであった。高齢者をよりよく管理するためだけでなく、レンズ関連処置後の両眼性複視の症状を最小限に抑えるためにも、これらの違いを知ることは重要である。

※コメント
高齢者で複視を生じた際、MRI, CT等で頭蓋内を確認しても、若年者(65歳未満)と比較したら何もないことが多いよ、という事を述べています。
あくまで割合の話なのであることを念頭に置いておく必要はありますね。
イスラエル🇮🇱からの報告ですが、sagging eye syndromeが多いことは勉強になりました。

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