28. sagging eye syndromeでは3-step testがしばしば陽性となるため,臨床的なアライメントパターンはSESと片眼性上斜筋麻痺(特に後天性SOP)を混同する可能性がある

Can Binocular Alignment Distinguish Hypertropia in Sagging Eye Syndrome From Superior Oblique Palsy?

Wei Q, Clark RA, Demer JL. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2022 Sep 1;63(10):13. doi: 10.1167/iovs.63.10.13. PMID: 36136043; PMCID: PMC9513738.


目的:上斜筋麻痺(SOP)の診断には一般的に3-step test(3ST)が用いられるが,sagging eye syndrome(SES)には臨床的に類似した点がある。我々は,アライメント測定によって片眼SOPとSESを区別できるかどうかを調べた。

方法:表面コイル型MRIを受けて,SO断面が減少している先天性または後天性の麻痺(SOP群)または外直筋のたるみ(SES群)のいずれかを示した上下斜視患者を調査した。アライメントはHESSとプリズムカバーテストによって測定した。診断精度を評価するために複数の教師あり機械学習法を採用した。3STを満たすSES症例では直筋プリーの座標をもとめた。

結果:23名がSOの萎縮を伴う片眼性SOPであった。他の18名はSOの大きさは正常であったが,MRIでSESの所見を認めた。SO麻痺筋の最大断面積は,対側およびSESに比べ非常に小さかった(P < 0.01)。下斜筋の断面積はSOPとSESで同程度であった。SOPとSESのいずれにおいても,上下偏位は健眼(下転眼)側への注視(側方視)で増加し,反対側で減少した。頭部傾斜による上下偏位は,対側より同側で大きくなった。SESでは,9名(50%)が3STを満たし,下転眼において内直筋プーリーよりも外直筋プーリーの変位が大きくなっていた。アライメントデータの教師あり機械学習は,受信者動作曲線下面積(ROC曲線)が最大0.93で診断を区別し,優秀ではあるが不完全な鑑別診断であった。

結論:SESでは3STがしばしば陽性となるため,臨床的なアライメントパターンはSESと片眼性SOP,特に後天性SOPを混同する可能性がある。機械学習は分類精度を大幅に向上させるが,不完全である。

※コメント
臨床ではSOPなのかSESなのか判断に苦慮することは多いです。
今回の結果からSESでも3-step testが陽性になることがわかったので,この情報は臨床に活かせそうです。

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