118. 不同視弱視の小児において,より大きな垂直知覚眼位(perceptual eye position:PEP)と立体視が不良であることは,治療失敗の危険因子であり,治療効果を予測するのに有用である可能性がある

Ocular and visual perceptive factors associated with treatment outcomes in patients with anisometropic amblyopia

Hong J, Kuo D, Su H, Li L, Guo Y, Chu H, Fu J. BMC Ophthalmol. 2023 Jan 12;23(1):21. doi: 10.1186/s12886-023-02770-2. PMID: 36635654; PMCID: PMC9837961.


背景:この観察研究の目的は,4歳から14歳までの不同視弱視の子どもを対象に,屈折矯正と遮閉後の治療結果に関連する眼球および視覚の危険因子を特定することであった。

方法:不同視弱視と新たに診断された小児120人を募集した。弱視治療の成功は,治療期間終了までに最終的な最高矯正視力(best corrected visual acuity:BCVA)が0.1logMAR以上,弱視眼BCVAが健眼BCVAの1 line以内とした。BCVA,調節麻痺下屈折値,立体視,知覚眼位(perceptual eye position:PEP),眼間抑制を測定した。

結果:これらの患者のうち,45.10%が屈折矯正と遮閉を10.5か月間行った後,弱視治療に成功した。平均年齢は,治療に成功した患者と失敗した患者で有意な差はなかった(それぞれ5.50 ± 1.59 歳 vs 6.14 ± 2.19 歳)。治療に失敗した患者は,初回治療時のBCVA(成功群:0.33±0.29logMAR,失敗群:0.65±0.35logMAR)と,屈折矯正後(成功群:0.15±0.13logMAR、失敗群:0.42±0.35logMAR)の眼間差が有意に大きかった。また,弱視眼の等価球面値(SE)が高く(成功群:3.08 ± 3.61 D,失敗群:5.27 ± 3.38 D),SEの眼間差が大きい(成功群:0.94 ± 2.71D、失敗群:3.09±3.05D),立体視の悪化(成功群:2.32±0.37 log seconds of arc,失敗群:2.75±0.32 log seconds of arc),垂直PEP偏位が大きい(成功群:6.41±6.08 pixel,失敗群:19.07±24.96 pixel),眼間抑制が深い(成功群:21.7±19.7%,失敗群:37.8±27.1%)ことがわかった。治療失敗の危険因子として最も影響力があったのは,多重ロジスティック回帰分析において,より大きな垂直PEP偏位[調整オッズ比(OR)(95%信頼区間)1.12 (1.02-1.22) ]と不良な立体視[調整オッズ比 (OR) (95% 信頼区間) 7.72 (1.50-39.85)] であった。

結論:不同視弱視の小児において,より大きな垂直PEP偏位と立体視が不良であることは,最も影響力のある治療失敗の危険因子であった。眼間相互作用を反映することができる垂直PEP偏位と立体視は,治療効果を予測するのに有用である可能性がある。

※コメント
立体視はrandom dotを使用しています。
知覚眼位(perceptual eye position:PEP)とは,偏光眼鏡をかけてタスクを実行。右眼は円,左眼は十字が見える。コンピューターのマウスを使用して十字を円の中心に配置する(シノプトのcyclo slideのようなイメージ)。その時の水平・垂直ずれ(pixel)のようです。

*下記参考文献
Yang C, Li X, Zhang G, Lan J, Zhang Y, Chu H, Li J, Xie W, Wang S, Yan L, et al. Comparison of perceptual eye positions among patients with different degrees of anisometropia. Medicine (Baltimore) 2017;96(39):e8119. doi: 10.1097/MD.0000000000008119.

考察では垂直知覚眼位と治療予後に関しての詳細な記載はありません。

立体視が不良であることと治療予後に関しては以下のように記されています。以下抜粋,
過去の研究では,遠視性不同視の小児におけるbinocular misalignmentと固視不安定性を研究した結果,不同視によって引き起こされる両眼の非相関によって眼の運動発達が混乱する可能性が示唆されている。以前の研究では,眼振のない弱視患者でfixational saccadesの振幅の増加が観察され,弱視眼と健眼の不安定性,fixational saccadesの振幅が大きいほど治療期間が長くなることが示されている。
また,いくつかの研究では弱視患者の固視不安定性と立体視障害との関連が報告されている。固定不安定性は立体視の低下とともに増加した。Part-time occlusion治療の反応が最適ではない患者は,より大きな固視の運動異常を示した。一部の研究者は,固視不安定性が弱視のバイオマーカーとして役立つ可能性があり,治療効果を予測する上で重要である可能性があることを示した。
抑制の深さは弱視の病態に影響(関与)していると思われますが,今回の研究では,抑制の深さが治療失敗の独立した因子ではなかったようです。
最終的な視力予後には関連しなくても,固視不安定性・抑制の深さ・立体視の3つには深い繋がりがあると思っています。


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