139. 焦点深度を拡張することでより自然な輻湊-調節関係を実現でき,バーチャルリアリティにおける輻湊-調節の葛藤とそれに伴う視覚疲労症状を緩和できる可能性がある

Binocular accommodative response with extended depth of focus under controlled convergences

Lyu J, Ng CJ, Bang SP, Yoon G. J Vis. 2021 Aug 2;21(8):21. doi: 10.1167/jov.21.8.21. PMID: 34415998; PMCID: PMC8383898.


バーチャルリアリティの視聴条件下では,Vergenceと調節が不一致になることがあり,この不一致が視覚的不快感の主な原因の1つと考えられてきた。本研究の目的は,目の光学的条件が異なる輻湊に対する調節反応にどのように影響するかを調べることであった。具体的には,焦点深度(depth of focus:DoF)を拡げることで,スクリーンへの調節に対する制御が弱まり,輻湊によって調節が誘導される可能性があると仮説を立てた。この仮説を検証するために,両眼補償光学(adaptive optics:AO)ビジョンシミュレータで誘発されたゼルニケ球面収差(4次と6次)を用いてDoFを拡張した。21歳から34歳(26±5歳)の健常者9名を募集した。3つの光学条件を生成した:AO条件(収差なし),モノビジョン条件,焦点深度拡大(extended depth of focus:EDoF)条件である。両眼調節反応,両眼視力,立体視を,3つの光学条件すべてにおいて,両眼の輻湊レベルを変化させながら測定した。3Diopterの両眼輻湊では,EDoF条件はモノビジョン条件やAO条件と比較して,過剰な調節反応を最も効率よく誘導した。視力は,他の2つの条件と比較して,EDoFで低下した。EDoF条件での平均立体視(0 vergence)は,AO条件と比較して低下したが,モノビジョン条件より優れていた。したがって,視覚性能に多少の妥協はあるものの,DoFを拡張することでより自然な輻湊-調節関係を実現でき,バーチャルリアリティにおける輻湊-調節の葛藤とそれに伴う視覚疲労症状を緩和できる可能性がある。

※コメント
VR視聴時に,EDofで調節をかけさせない事で逆に輻湊からの調節を惹起させ(輻湊性調節),輻湊-調節のクロスリンクの正常化を図れる可能性があるという内容です。
奥深いです。

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