103. 間欠性外斜視に対して両眼を遮閉すると偏位量が小さくなる。この結果は,間欠性外斜視の偏位が視覚的フィードバックによって能動的に制御されていることを示す

Bilateral Occlusion Reduces the Ocular Deviation in Intermittent Exotropia

Economides JR, Adams DL, Horton JC. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021 Jan 4;62(1):6. doi: 10.1167/iovs.62.1.6. PMID: 33393972; PMCID: PMC7794258.


目的:斜視の最も一般的な形態である間欠性外斜視は,融像しようとする駆動力が過剰な開散の筋緊張に打ち勝つことで顕在化すると考えられています。この原理を検証するために,視覚がない状態での眼球の位置関係を調べる。我々は,単眼遮閉と両眼遮閉の条件下で,間欠性外斜視の患者の眼球の偏位を比較する。

方法:当研究室に紹介された患者コホートを対象としたこの前向き研究では,よくコントロールされている間欠性外斜視の典型的な所見を持つ患者18名を登録した。57cmの距離にある固視点を見ながら,ビデオアイトラッカーで眼位を記録した。片眼を遮閉して眼球の偏位を測定した。その後,両眼を遮閉して眼球の偏位を再測定した。

結果:大半の患者(11/18)は,両眼を塞いだ方が偏位が小さかった。片眼を閉じた場合,平均外斜位は13.5±4.7°となった。両眼を塞ぐと,平均外斜位は6.0±6.5°に減少し(paired t-test, P < 0.001),偏位は56%減少した。この減少は,長時間の両眼遮閉でも持続したが,見え方が回復するとすぐに元に戻った。

結論:両眼遮閉により,orthotropiaとは異なる固視のないアライメント状態が明らかになり,両眼視時に自然に生じる外斜視よりも小さくなる。この発見は,間欠性外斜視患者の偏位が,固視眼が単独で提供できる視覚的フィードバックによって積極的に媒介されていることを示すものである。

※コメント
両眼を遮閉すると偏位量が減少することから,間欠性外斜視の偏位は視覚的なfeedbackによって制御されているとの考察です。
片眼を遮閉した時に斜視角が増えるのは融像が壊された為と考えると,両眼を遮閉しても同じことが言えるはずですが,その様な結果にはならなかったようです。
以下,文中の考察

*カバー・アンカバー・テストに使用される半透明オクルーダーに似たフィルターを用いて実験を行い,形態と光遮断の効果を区別しようと試みたが,ビデオによるアイトラッキングは不可能であった。そのため,外斜偏位を軽減するためには,両眼の視界を遮るだけで十分なのか,暗闇も必要なのかについてのデータはない。

遮閉によって融像が破壊され,筋肉のトーヌスのアンバランスによって眼球が外側に回転するようになるのであれば,片眼が遮閉していても両眼が遮閉していても違いはないはずである。今回の結果は,外斜視が眼球を外側に引っ張る外眼筋の本質的な異常によるものであるという概念に強く反論するものである。


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