27. 片眼上斜筋麻痺に特徴的な3-step testは,Masquerading SO palsyがあらゆる点で模倣している可能性がある

Masquerading Superior Oblique Palsy

Demer JL, Clark RA. Am J Ophthalmol. 2022 Oct;242:197-208. doi: 10.1016/j.ajo.2022.05.017. Epub 2022 May 23. PMID: 35618024.


目的:上斜筋(SO)麻痺の診断が付いた上斜視患者を評価し,3-step test(3ST)が滑車神経病変に特徴的なSO萎縮とmasquerading conditions(マスカレード;仮装,成りすましている状態)を区別できるか確認した。

デザイン:前向き横断研究

方法:臨床的にSO麻痺と診断された83名の患者に対して,冠状断,表面コイルMRIを行った。アライメント,SO断面積,SO収縮性,直筋プリーの位置などを評価した。

結果:平均年齢39歳(SD=21歳)の57人の患者は,SO萎縮のある片眼SO麻痺であった(先天性22人,後天性35人)。平均年齢39歳(SD =16歳)の26名の患者のSOサイズは正常であり,マスカレードが考えられた(先天性8名、後天性18名)。SO麻痺の最大断面積は平均9.5±3.8mm2であり,対側18.4±3.9mm2より小さかった(P < 0.01)。マスカレードでは,上斜視眼の最大SO断面積は20.7±3.1mm2であり,下斜視眼のSOやSO麻痺の対側(健眼)と差がなかった。マスカレードにおけるhead tilt testはSO麻痺と区別がつかなかった。SO麻痺では,正面視の上下偏位は平均13.2±9.4Δ,麻痺側への傾斜で21.1±14.0Δに増加し,健側への傾斜で4.3±5.3Δに減少した。マスカレードでは,正面視の上下偏位は平均13.1±8.7Δ,上斜視眼側への傾斜で17.7±11.1Δ,対側への傾斜で4.9±5.1Δに減少した。正面視の上下偏位は先天性では17.7±9.9Δと後天性SO麻痺の12.0±8.4Δより大きかったが(P = 0025),先天性のマスカレードと区別がつかないほどであった。SO断面の収縮性変化はマスカレードで両側とも同様であった。直筋プリーの関連座標はマスカレードで両側とも類似していた。

結論:片眼SO麻痺に特徴的な3STは,マスカレードがあらゆる点で模倣している可能性がある.

※コメント
*SOの収縮性は上方視と下方視時のMRI撮影画像から判定
上記まとめ
先天性および後天性の片眼上斜筋麻痺の古典的な臨床診断基準を満たす患者83人へのMRIの結果,大多数の患者は同側のSO筋が異常に小さく,SOの脱神経と一致するため明らかなSOの弱化が見られたが,26人(31%)は同側のSOサイズが健側と同じで,SOの脱神経と一致しない所見であった。この後者のグループでは、SO断面において,視線に関連した同様の収縮性の変化が見られ,上斜視眼および下斜視眼においてSO収縮性が同様であることが示された。すべてのアライメント測定がSO麻痺患者と同じであるが両側のSO筋が正常であるこれらの患者群を "masquerading SO palsy "とみなすことにした。masqueradにおける軽度の直筋プリー位置の異常は,両眼で対称であった。

そしてこの報告から言えることは,paks 3-step testで上斜筋麻痺様の結果が示せたとしても,SO筋のサイズや機能を明確に反映することはできないということです。

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