29. 外傷性片眼性上斜筋麻痺では,外傷性因子よりも,偏位量や眼底回旋などの因子が自然治癒の予測に優れている可能性がある

Spontaneous Recovery of Traumatic Unilateral Superior Oblique Palsy and Ocular Factors for Predicting Prognosis

Park H, Lee D, Kim SY, Kim WJ. Korean J Ophthalmol. 2022 Jun;36(3):179-184. doi: 10.3341/kjo.2021.0149. Epub 2022 Jan 24. PMID: 35067022; PMCID: PMC9194726.

目的:外傷性片眼上斜筋麻痺(SOP)患者の予後と自然治癒に関連する臨床因子を検討すること。

方法:2015年1月から2020年6月までに2病院(嶺南大学校病院、大邱カトリック大学医療院)を受診した外傷性片眼SOP患者の診療記録を後ろ向きに検討した。外傷性片眼SOPが少なくとも1年以上の経過観察で回復しない場合,自然治癒はないと判断した。外傷性因子と眼球性因子の両方を評価し,自然治癒との関連を評価した。

結果:59名の患者(平均年齢52.6歳,男性48名)が本研究に登録された。外傷から初診までの平均間隔は3.9カ月であった。初診時の平均上下偏位は6.34±5.22⊿(範囲,0~25⊿)であった。平均24.1ヵ月の追跡期間中に,28名(47.5%)の患者が自然治癒した。13人の患者がSOPの外科的治療を受けた。初診時の上下偏位6⊿未満,非麻痺眼と両眼の眼底回旋が小さいことが,自然回復と有意に関連していた(p<0.05,ロジスティック回帰分析)。外傷の種類,頭蓋内病変の有無,意識消失,Glasgow Coma Scaleスコアなどの外傷性因子は,自然回復との関連はなかった。

結論:この多施設共同研究において,外傷性片眼性SOPの47.5%で自然回復が得られた。軽度の頭部外傷であっても永続的なSOPを引き起こす可能性がある。外傷性片眼性SOPでは偏位量や眼底回旋などの眼球因子が,外傷性因子よりも自然治癒の予測に優れている可能性がある。

※コメント
Fundus torsion (º)
Paretic eye   9.82 ± 4.72 (0.45 to 26.36)
Nonparetic eye  8.60 ± 4.72 (0.0 to 23.44)
Sum       18.42 ± 6.65 (6.00 to 40.26)

どのくらいの回旋がデッドラインなのかが気になりましたが,上記の結果から対象者には相当大きな回旋が存在する方もいたようです。50代の(他覚的)眼底回旋は片眼およそ7~8°(extrosion)ですので,それを基準に考えてもいいかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?