318. 遠視性不同視弱視眼の全遮閉時間に影響する因子

Factors affecting the total occlusion time in eyes with hyperopic anisometropic amblyopia

Utamura K, Wakayama A, Matsumoto F, Shiraishi Y, Narita I, Tanabe F, Kusaka S. BMC Ophthalmol. 2023 Nov 20;23(1):469. doi: 10.1186/s12886-023-03206-7. PMID: 37981663.


背景:健常眼を遮閉させる弱視治療は、感受性の高い臨界期に有効であることが知られている。本研究では、弱視眼が正常視力1.0(0.0 logMAR相当)を達成するのに必要な全遮閉時間(total occlusion time:TOT)の要因を明らかにすることを目的とする。これにより、遠視性不同視弱視眼の効率的な治療計画に貢献できる可能性がある。

方法:対象は、遠視性不同視弱視患者58名(男児26名、女児32名、年齢範囲3.6~9.2歳、平均5.8±1.3歳)であった。対象者は全員、2007年1月から2017年3月までの間に、近畿大学病院を初診し、弱視眼のVAが1.0以上に向上した遮閉療法を終了していた。被験者のカルテを用いて、TOTの5つの要因(治療時の年齢、弱視眼の初期VA、弱視眼の屈折、不同視差、微小斜視の有無)をレトロスペクティブに調査した。また、遮閉治療の効果を確認するため、治療1か月後の患者のVA向上も評価した。

結果:弱視眼の初期VAは0.1~0.9(中央値0.4)であった。TOTは140~1795時間(中央値598時間)で、1日の平均遮閉時間は7時間であった。弱視眼の初期VAと微小斜視の有無がTOTの有意な因子であった(p<0.01)。1.0以上のVAを達成するためには、弱視眼の初期VAが0.3以下の患者は、より長いTOTを必要とした。さらに、微小斜視を合併している患者は、微小斜視のない患者に比べ、1.7倍長いTOTを必要とした。

結論:初期のVAが不良な患者や微小斜視の患者が、感受性の高い臨界期内に遮閉治療を完了するためには、1日の遮閉時間を長くし、早期に治療を開始することが必要である。

※コメント
微小斜視(microstrabismus)の定義は、偏心固視or10Δ未満の斜視のようです。
内容に関しては同意です。

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