ひゃくおくまんえん 2024/07/18(p.108)#69

『インスマスの影』を読みおえて、次はそのまえに読んでいた『渇きと偽り』の続篇『潤みと翳り』を読むつもりでいたが、このところ海外文学ばかり読んでいて、少し疲れた。ここいらで一冊、はじめから日本語で書かれたものを読みたいなあ、と手に取られたのは横溝正史『三つ首塔』(角川文庫)であった。

古谷一行主演の金田一耕助シリーズの再放送をBS11でやっていて、ずっと録りためているが一本も観ていない。そろそろ容量を圧迫しはじめて消化していきたくおもい、まずは原作を読んでから、とちょうど今週放送されていた『三つ首塔』から読んでいくこととなった。

主人公・音禰の手記という形式で書かれている。『八つ墓村』の女性版といったところか。美女を取り巻く遺産相続、という話自体は『犬神家の一族』めいてもいる。前半の都会的な雰囲気は、江戸川乱歩的な猥雑さが前面に出て、ツッコミながら読んでいくのが愉しい。

「あっ、金田一先生、あなたどうしてここへ……」

p.52

金田一耕助はあまり出てこないのかとおもっていたら、けっこう早いうちから登場する。音禰の視点であるせいか、はじめのうちは「敵」として描かれる。

百億円の遺産相続人……? この私が……?

p.22

「な、な、なんですって! ひゃ、ひゃ、百億円の遺産ですって?」

P.51

それにしても、百億円て笑。小学生の云う「ひゃくおくまんえん」みたいではないか。そりゃあ等々力警部も吃驚である。

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