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旧姓併記で合同会社を設立するには?その方法と、思ってたんとちょっと違う結果。

先日、合同会社を作りました。私にとって初めての会社設立です。

私は日常的に旧姓を使用していますので、法人の代表者名は旧姓併記できるように届出をしました。

設立を考えたタイミングで選択的夫婦別姓の議論が盛り上がりを見せていたので、「あれ、もしかしてそろそろ…?」と期待して少し様子見してみたりもしたのですが、案の定裏切られたので、もうさっさと会社を作ることにしました。

「会社設立freee」を使用したので設立の準備自体は簡単にできましたが、旧姓併記のほうは必要な書類など若干ややこしかったのでこのnoteでまとめます。

先に結論を言ってしまうと、代表社名の旧姓を併記したところであくまで旧姓が併記してあるだけで、望んでいたような結果にはなりませんでした。

前半は、旧姓併記の「思ってたんとちょっと違う」結果を、後半はそれでも旧姓を併記したいという方向けに、具体的な方法をお届けします。

なお、私は専門知識は皆無のただの素人です。手続き関連は、こうやったらいい感じにできたよというn=1の方法に過ぎませんので、間違っていたらごめんなさい。

■そもそも旧姓併記って?

履歴事項証明書や法人の印鑑証明書など会社に関する公的書類に記載される代表者や役員名は旧姓併記で登録することができます。私の場合、戸籍姓が「中林」、旧姓が「伹馬」なので、

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【中林 薫 (伹馬 薫)】

このように登録されます。私は仕事の場面ではほぼ100%旧姓である「伹馬」を使用していますが、この【伹馬 薫】だけで登録することはできません。

■思ってたんと違った結果

今回、無事、会社の代表者名を旧姓併記にすることはできましたが、そもそもなぜ旧姓併記にしたのかというと、旧姓を公的に記載することで銀行口座の開設などでも旧姓が使えるかも?と期待したからです。

結論、全然使えませんでした。

旧姓併記はあくまで併記してあるだけで、それ自体にはほとんど力がないんだなぁということを実感することとなりました。

銀行は5社と話しましたが、いずれも旧姓での登録はNG。懇願してみたり、素知らぬ顔で[但馬薫(中林薫)]と申込書に書いてみたりしましたが、いずれも検討のテーブルにすら乗りませんでした。

夫婦別姓がなかなか認められない今、もっと旧姓を公共性の高いところでも使いたいという私の夢ははかなく散ったわけです。

(とはいえ、旧姓が併記されることで、これまで客観的に同一人物と判断することが難しかった人はそれが可能になったという良い面はもちろんあります。)

私のような一人合同会社のレベルであれば、括弧書きで表記された旧姓によって、若干のアイデンティティが保たれた気分にはなりますが、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。

それでも、旧姓併記で登記したい!という方向けに、ここから先は具体的な方法をお伝えします。

■旧姓併記するために必要なもの

・戸籍抄本/戸籍謄本(姓の変更が確認できるもの)
・旧姓併記での印鑑証明書

↑上記がすぐに用意できる人は、[■事前準備]と[■必要書類をそろえる]は飛ばしてください。

■事前準備

旧姓併記の印鑑証明書を発行するためには、まず住民票に旧姓を併記する手続きをする必要があります。

そして住民票に旧姓を併記するためには、戸籍抄本/戸籍謄本が必要です。(以下、この記事内では戸籍謄本に統一)

あとあとを考え、戸籍謄本を入手したこのタイミングで「旧姓併記のマイナンバーカード」まで作ってしまうのがおススメです。

旧姓の実印も作っておきます。

■必要書類をそろえる

①本籍地から戸籍謄本を取り寄せる。(マイナンバーカードを持っていればコンビニで取れる自治体もあります。)

②戸籍謄本を持って役場に行き「住民票を旧姓併記にして、それでマイナンバーカードを作りたいです。そして旧姓併記で印鑑証明書を発行したいです。」と伝えます。

このとき、旧姓の実印も忘れずに。また、すでに印鑑手帳を持ってる人は持っていきましょう。

③役場の人が色々と書類を出してくれるので片っ端から書いていきます。

④マイナンバーカードは申請書をもらうので、記載の方法に従って手続きをします。できあがりまで2~3ヶ月かかります。

(すでにマイナンバーカードを持っている人は、その場で変更欄に記載してもらえるはず。)

・戸籍謄本(姓の変更が確認できるもの)
・旧姓併記での印鑑証明書

が入手できればミッション完了。

登記のための書類は『会社設立freee』でOK。但し…

次に、登記のための書類を揃えていきます。ここでは「会社設立freee」を使いました。入力欄をポチポチと埋めていくと、必要な書類を自動でサクっと作成してくれます。簡単すぎるので解説不要。

アカウント作成のみで無料で使用できます。

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※画像引用:「会社設立freee」スクリーンショット

このとき注意点が2つ。

❶手続きそのものが5分で終わるわけではない。

『会社設立freee』のウェブサイトを見ると「5分で必要な書類を一括作成」と書いてあります。必要書類は5分程度で作成できますが、その後行政書士さんのチェック(3~5営業日ほど)や法務局への持参/郵送などが必要です。

私は、5分で全手続きが完了すると勝手に思いこんでいて、希望する設立日を逃しました(法務局へ書類が届いた日が会社の設立日となります)ので、お気をつけください。

❷『会社設立freee』の標準書類では、旧姓併記はできない

『会社設立freee』では、簡単な入力欄を埋めていくだけで必要書類を作成してくれますが、それ故に旧姓併記などのオプション事項には対応できる項目がありません。

ここでは代表者氏名などは、全て「戸籍姓」で入力をしてください。

『会社設立freee』で作った書類を再編集する

必要事項の入力を終えると、全7種類の書類(+定款)がダウンロード/印刷できるようになります。その中の、

・合同会社設立登記申請書
・OCR用紙

この2種類を編集し、旧姓併記をできるようにします。

■合同会社設立登記申請書

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上の図は、実際に『会社設立freee』からダウンロードした書類の形式です。ピンクの文字で「ココ」と書いている部分に、旧姓併記のための記述(下記)を追記します。

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私は戸籍謄本を添付しましたが、戸籍抄本でも問題ないそうです。難しい書式ではないので、私はワードで書類ごと作り直しました。

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追記部分があるため、1ページの申請書が2ページになっています。このときのワードファイルが欲しい方はDMいただければ差し上げます。

■OCR用紙

また、OCR用紙と呼ばれる【別紙】があるのですが、その中の業務執行社員名、代表者名の後ろにかっこがきで旧姓でのフルネームを記載します。

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こんな感じ。明らかにフォントが違う()部分が追記した部分です。

私はAdobe Acrobat DCで直接、「会社設立freee」からダウンロードしたOCR用紙のPDFファイルに追記をしました。AcrobatDCは有償ソフトなので、お持ちで無い場合は無料のPDF編集ソフトをググってください。

あるいは、ここは同じ行内に括弧書きで書くだけなので、手書きでもいけるのではないかと思います。(確証はない…!)

■全部まとめて法務局に持参/郵送

最後に、必要書類を全部まとめて管轄の法務局に持参するか郵送をします。書類のまとめかたは「会社設立freee」の中に細かく書いてあるので参考にしてみてください。

この書類の提出や免許税の納付はオンラインでも可能ではあるのですが、事前準備がかなり面倒くさいのでサクッと紙で出すほうが圧倒的に楽です。

問題がなければ、特に何の連絡もありません。後日「法人番号公表サイト」で自社の登記が確認できたら、最寄りの法務局あるいは「登記ねっと」で履歴事項証明書を請求しちゃんと併記ができているか確認をしてみましょう。

これで旧姓併記での会社設立の流れはおしまいです。


夫婦別姓、早く当たり前になるといいな。


<参考>
法務局ウェブサイトより
合同会社(設立(役員につき婚姻前の氏の併記の申出をする場合))の記載令


■自己紹介:但馬 薫
ライティング、編集協力からウェブディレクションまで。「想い」を伝わるメッセージに翻訳・編集するのが仕事です。お仕事のお問い合わせはTwitterのDMにて。

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