『ただいま』
ピピピ ピピピ
○○:...ふぁ~
もう朝か...って今何時だ...
10:40
...10時40分!?
アラーム代わりの自分の携帯を見て、脳が一気に目を覚ました
○○:やべぇ...あと5分で授業始まる...
今日2限の授業、一回でも遅刻・欠席したら単位くれない、必修の授業なのに!!
家から大学までは走って15分の距離にあるから...自転車で行くと...
頭の中で一生懸命、時間計算を始める
それと同時に寝巻にしていた高校時代のジャージから、アイロンをかけていないシワが残った白のTシャツと黒のスキニーに早着替え
寝癖なんて気にしてられないし、歯を磨くのなんてガムを噛みながら行けば何とかなる
○○:行ってきます!!
誰もいない空間に言葉を残し、家を出る
ガチャン
愛車のスタンドを外して、いざしゅっぱ...
シューーーーー
愛車から嫌な音...
○○:...くそっ、なんでこんな時に!!
嫌な音の正体は、タイヤのパンク
スタンドから外すときに、焦っていて勢いよくタイヤの側面を擦ってしまったらしい...
そしたら経年劣化で弱っていたタイヤが耐えられなかった...
○○:...もう来年頑張ればいいや
焦っていた時の自分はもうそこにおらず、冷静になって現状を片づけることに頭が切り替わっていた
11:00
○○:あ~あ...
今までの努力が...
一度自室に戻り身支度を完璧に整え、街の自転車屋さんに向かう
店員:いらっしゃせ~
○○:すみません...自転車のパンクの修理ってお願いできますか?
店員:あっ、いいっすよ~
店内にその自転車持ってきてもらっていいっすか
○○:はい...
店員:じゃあ今日の夕方には終わってると思うんで、それくらいに取りに来てくださいね
○○:わかりました...
パンクした愛車を自転車屋に預け、3限の授業のために歩いて向かう
○○:うぃーす
□□:うっす
あれ?2限来てた?
○○:寝坊したり、自転車壊れたりで来れなかった
□□:おっ!落単確定じゃ~ん!笑
○○:はぁ...
□□:じゃあ来年一人で受けなきゃな笑
○○:いつも寝てるお前に言われるのが一番腹立つ...
□□:ははっ
ってか次の講義のノート見せてよ
○○:はぁ...なんでよ
□□:5回目の授業で小テストやるって言ってたし...ダメ?
○○:お前が女の子ならその上目づかいに堕ちてたろうけどねぇ~
□□:ちぇっ、つまんねぇ~
○○:じゃあみせな~い
□□:...ラーメン一杯でどうでしょうか?
○○:...それとジュースな
□□:しょうがない
○○:よし、交渉成立
ノートねゴソゴソ
....あれ?
□□:なした?
○○:ノートが...ない
□□:はぁ?お前家で勉強してる真面目ちゃんだったの?
○○:違ぇわ!ノートなんてトートバックから出したことないし...
□□:じゃあなんでねぇんだよ
○○:そんなの俺が知りたいわ
??:あのぉ...
○○:は、はい!
??:これ、君のノートでしょ?
○○:あっ!そうです!そうです!
でもどこに...
??:私君の後ろ歩いてたからね~
そのトートバックの底から落ちたから、破れてるかも
○○:えっ!?
...ほんとだ、破れてる...
??:私、次の授業あるから行くね
○○:は、はい!
ありがとうございました!
??:ふふっ、いいえ~
□□:おいおいおい!
○○:...
(可愛すぎて、全然顔見れなかった...)
□□:おーい!
○○:はっ!な、何?
□□:あんな可愛い子に拾ってもらってよかったなぁ、おい!
○○:うん...
□□:学部違うんだろうな~
あんな可愛い子いたら、絶対覚えてるもん
○○:それはそれでなんか...引くわ
□□:おい!笑
そうだ!早くそのノート貸してくれよ
○○:...やっぱやだ
□□:おい!約束と違ぇぞ!
○○:うるさいわ!この変態野郎!
□□:なっ!?
○○:あの可愛い子が拾ってくれたノート"だから"早く貸してほしいのか、それとも早くノートを写したいから貸してほしいのか、どっち?
□□:そりゃお前...可愛い子が拾ってくれたノート...
ペシッ
□□:痛った!
○○:変態が...笑
絶対に貸してやらねぇ
□□:悪かったって
??:いいなぁ~あんなにふざけあえる子が大学にいるなんて...
教授:じゃあ出席はオンラインで取るので、アンケートに答えて退出してください
○○:ふぅ...やっと今日の授業終わった...
□□:○○、今日バイトは?
○○:今日は休み
だけどチャリを取りに行かなきゃいけない
□□:そりゃだるいな
○○:まぁしょうがない笑
□□:そっか、じゃあ俺このままバイト行くから
○○:おう
明日全休だからって、バイトの子とハメを外すなよ~
□□:おっちゃんとヤンキーの男しかいないガソスタでハメなんて外せるか!
○○:ふふっ、お似合いじゃんか笑
□□:うっせぇ!じゃあな!
○○:おう!
○○:俺も愛車を迎えに行くか
...ってイヤホンも家に置いて来てたのか...
街の商店街の中にある自転車屋さんに行くまで、のんびり歩いていると...
♪~いつまでも いつまでも 続いてほしいと願っている...
不意に聞こえてきたメロディ
凄く透き通った綺麗な声の女性の声
引き込まれるように音源の場所まで行ってみると...
○○:あっ...
そう、そこには落としたノートを届けてくれた女の子が路上で音を奏でていた
ある程度人通りのあるところでの路上ライブ
あれだけ人を引き付ける歌声だから人が集まっていてもいいのだが...
その歌を聞いているのは、自分ただ一人
いきかう人は皆、ノイズキャンセリングがついたイヤホンやヘッドフォンをして通り過ぎていく
♪~今日を噛みしめていよう 終わるな 夏よ、終わるな~
パチパチパチ
??:あ、ありがとうございます...
聞き入ってしまった俺は、知らないうちに拍手を送っていた
??:って、あっ!!
○○:あっ...どうも...
??:ちょ、ちょっと待っててくださいね!
そういうと彼女はパパッとギターをケースにしまい、マイクとアンプを片した
○○:今日はもうよかったんですか?
??:はい!聞いてくれてる人も君しかいなかったので!
○○:そっか...
??:ってかノート届けた子だよね?
○○:うん、ほんとに助かったよ
ありがと
??:いいえ~!
○○:あのさ...名前聞いてもいい?
??:あっ!お互いに名前知らない状態で話してたね笑
奥田いろはです!
君は?
○○:北野○○です
いろは:じゃあ北野君って呼べばいい?
○○:う~ん...
いろは:えっ...だめだった?
○○:あっ!違う違う笑
いつも一緒に居る□□も北野だからさ、北野君だと被るかもって...
いろは:なるほど~!
じゃあ○○君って呼ぶね!
○○:うん
いろは:私はいろはって呼んでね
○○:うん...へっ?
いろは:だって私は○○君って呼んでるのに、奥田さんって呼ばれるのは嬉しくないな~
○○:わ、わかったよ...
いろは:じゃあ今呼んでみてよ
○○:い、今!?
いろは:うん!
○○...い、いろは///
いろは:な~に~?
○○:ちょ///
恥ずかしすぎるんだけど...
いろは:うぶだね~笑
○○:うっさい!
いろは:ふふっ
○○君はなんでここに?
○○:あっ!そうだ
自転車を取りに来たんだ
いろは:そうだったんだ!
じゃあ早くいかないとね
○○:う、うん...
いろは:あれ?今、残念みたいな顔したね?
○○:し、してない!
いろは:え~、つまんないな~
○○:い、いろは?
いろは:ふふっ...冗談
一緒に行ってあげるから
○○:お、おう
顔に出さないように必死に我慢したが、大きなガッツポーズをしている自分が自然と想像できた
いろは:あっ!○○君はいろはと行けて嬉しいみたいだね?
○○:へっ?
いろは:顔に書いてあるよ?
○○:うそ!
いろは:うっそー
○○:おい!
いろは:ふふっ、○○君いじるのたのし!
○○:もう...
い○:ふふっ...ははは
そう2人顔を見合わせて笑った
いろは:あ~楽しい!
久しぶりにこんなに笑ったよ
○○:ほんと~?
いろは:それはほんと
○○:なんか意外だったな
いろは:えっ?なんで?
○○:そりゃ...その///
いろは:何よ~
○○:い、いろはは...可愛いから
その...友達とかも多いのかなって
いろは:か、かわいいとか急に言うな!//
○○:えっ?俺なんで怒られてるの?
いろは:なんでもないっ!
○○:え~...
いろは:○○君だって女の子に慣れてるでしょ!?
急に可愛いとか平気で言うし!
○○:...
いろは:あれ?○○君?
○○:...変なこと言うようだけど...
俺...女の子苦手なんだ
いろは:えっ?
○○:小学校の時にさ、クラスの女の子に告白されてさ
小3から小6まで付き合ってた女の子がいたの
いろは:えっ!?長くない?笑
○○:まぁね笑
でも...小学校の時なんてさ、なんかそういう恋模様の感じなんて、みんなしていじるじゃん
いろは:うん
○○:それがエスカレートしてね...
それが嫌になって、俺はその女の子と距離を取って自然消滅を狙うようになったんだ
いろは:...
○○:そしたらね...
付き合ってた女の子と仲のいい女の子のグループが、束で言い寄って来てね
それに耐えきれなくなって、同世代の女の子が怖くなったの
まぁ…俺が悪いんだけどね
いろは:そんなことが...
じゃあ私に対しても...
○○:まぁ、姉がいたから女の子に対する接し方みたいなのは覚えさせられたし、それが咄嗟に出ちゃった感じ?笑
いろは:...そっか
今も女の子と話したりするの怖いの?
○○:少しね...
いろは:そっか...
ごめんね、いろはグイグイいっちゃって...
○○:ううん!むしろ嬉しかった
いろは:えっ?
○○:いろはと話してると怖いとかは一切思わなくてさ
その...心地よかったんだ
いろは:///
○○:って何言ってんだろ//
あっ!自転車屋着いたから、じゃあ!
いろは:あっ!行っちゃった...
ウィーン
○○:ほんと俺何言ってんだろ//
店員:いらっしゃせ~
○○:ブツブツブツブツ…
店員:あのぉ~...
○○:あっ!すみません…
修理お願いしていた北野です
自転車を取りに来ました
店員:は~い
ではお持ちしますね~
結局、タイヤのチューブが裂けそこからパンクしていたことと、長年乗っていたことで後輪のタイヤの繊維が見えるくらい劣化していたことから、タイヤ交換となった
○○:タイヤ交換になって8000円の出費か...
今月はもやしがメインかな~
いろは:あっ!来た!
○○:ブフッ、いろは!?
いろは:勝手に置いてくなし~!
○○:ご、ごめん...
いろは:ほら、乗せてよ
○○:えっ?
いろは:ちょうど二人で乗れるでしょ?
○○:ま、まぁ...
いろは:よいしょ!
ギュ
○○:!?
いろは:ふふっ
じゃあ出発進行ー!
○○:お、おう...
(女の子と話すことですら緊張してるのに、バックハグなんてされたらもう...)
いろは:...○○君?
○○:はっ!な、なに?
いろは:○○君がつらい過去を話してくれたから、私も話するね
○○:う、うん...
いろは:私ね...いじめられてたの
○○:えっ...
いろは:高校でね、軽音部に入ってたの
中々に大きい部活でね、10個ぐらいグループができるくらい大きくて...
私たちのグループもそのうちの一つで...
ツインボーカルでやってたんだけど、もう一人のボーカルの子と合わなくてね
○○:...
いろは:私は音楽がやりたくて、歌が歌いたくてボーカルになった
だけど、もう一人の子はそんなこと1ミリも思ってなくて、仲間からチヤホヤされたくてやってるような子だったの
○○:高校生でよくある感じのやつだよなぁ…
いろは:うん笑
ほんとに典型的なやつ笑
私はそんなのなんとも思ってなかったんだけど、文化祭の時にね...
『点描の唄』って曲あるでしょ?
○○:うん、今日歌ってたよね?
いろは:うん
あれをうちらのグループでやろってなってね、披露したの
そしたら...そしたらね...
キキィッー
○○:...嫌なら無理に話さなくてもいいんだよ?
いろは:ううん…大丈夫
ちゃんと話すよ
○○:そっか…
じゃああそこのベンチに座って話そ?
いろは:うん…そうだね…
○○:はい、ココアでよかった?
いろは:うん…ありがと…
あっ!ってかお金!
○○:いいのいいの!
気にしないで
いろは:あ、ありがと…
○○:それで…
文化祭で?
いろは:うん…
その目立ちたがりの女の子は声が低かったから、男性のパートをやったの
女性のパートを担当してた私と、男性パートを担当してたその子
どちらが歓声を受けたかというと...
○○:...いろは、だった
いろは:そう...
私としてはハモリもうまくいってたし、私だけに向けられた拍手じゃないって思ってたんだけど、向こうはそんなこと思ってなくて...
当然その子からすれば面白くもなんともない
そっからかな、みんなから無視されて教科書が無くなるようになったのは
○○:...
いろは:大学に来れば何か変わるかもって思ったけどね...
心に住み着いた恐怖心は簡単に溶けてくれなかった
友達というか大学で話せる人ができなかったの
○○:じゃあ...
いろは:でもね、○○君は違ったの
ノート、拾ったらすぐ渡せばいいのにって思わなかった?
○○:まぁ...少しは...
いろは:ノートを拾ってから、少しだけ君の様子を見てたんだ
君なら友達になれるかもって思ってね
私からすれば、自分から声をかけに行くなんて死んでも無理って思ってたけど…
○○:そっか...
いろは:でも...声かけてよかったな
○○:えっ?
いろは:君に出会えたから
○○:...
いろは:いじめにあっても歌だけは私と一緒に居てくれる感じがしてね
あそこの路上で歌い続けた
でも見てくれる人なんてほんとわずかで...
○○:...
いろは:でもね、君は気がついてくれたんだ
今日勇気を出して声をかけた君が
○○:いろは...
いろは:ねぇ...○○君
○○:ん?
いろは:好き...って言ったら迷惑?
○○:...
いろは:出会ったのは今日、関係性も大して深くはない
君の背景なんて話を聞いてたところの少ししか知らない
それでも...君といると心が温かくなるの
君の隣を一緒に歩いていちゃ...だめ…かな…?
○○:...
いろは:そ、そのごめん!わ、私何を言っ...
○○:ありがと、いろは
いろは:…
○○:俺もいろはと今日出会って、ほんの少ししかいろはの事を知らないよ
でも、俺もいろはと話をしてると楽しくて、離れたくなくて...
いろは:○○君...
○○:先に言われちゃったけど...
いろは、君のことが...好きです
俺と一緒に居てくれますか?
いろは:グスッ...うん!もちろん!
○○:ふふっ
いろは、こっち向いて?
いろは:ん?
恥ずかしくてすぐにそっぽむいちゃったけど…
我ながら大胆なことをしたと思う
まだ唇に残る感触と、彼女のいい匂いを忘れたくない
だけど、このまま流れで…っていうのは避けたいとどちらも本能的に思ったのだろう
2人して下を向いて、駐輪場へと向かう
ここに来るまでとは違って、離すまいと堅く手を繋ぎながら…
それからはいろはと常に一緒に居るようになったもんだから...
□□:はぁ...俺の春はいつ来るんだ...
○○:お前は酒とパチンコをやめないと...笑
□□:うっせぇ!リア充なんて!リア充なんて...
○○:うぇーい
□□:あー!うぜぇー!
もういいや!授業なんて受けてらんねぇ!4パチ行ってくる!
○○:お前...ほんとにバカだな
いろは:○○ー!
○○:おう!
いろは:一緒に授業受けよ?
○○:ふふっ、うん!
2人で一緒の授業を選択して受けるようになった
そして、毎週末はどちらかの家で過ごしていたから…
いろは:ねぇ...○○
○○:ん?
いろは:あのさ...その...
○○:どうした?
いろは:い...
○○:い?
いろは:い、一緒に...暮らさない?
○○:///い、いいよ
(可愛すぎんだろ...)
いろは:やった♪
2人で暮らすようになった
いろは:ただいま~….バフッ
○○:こ~ら、帰ってきてすぐにベットにダイブしないの!
いろは:え~…
これが至高の時間なのに…
○○:もう…
せっかく可愛い服着てるのに、シワついちゃうよ?
いろは:それは…やだ
○○:じゃあハンガーにかけようか?
いろは:うん!
暮らすようになってわかったこともある
正直いろはって完璧人間ってイメージがあったから、そこのギャップを知れて嬉しくなったり…
いろは:○○!なんで昨日ごみ出してくれなかったの?
○○:だって、玄関にまとめてなかったじゃん!
いろは:ねぇ!ゴミ出し行くだけが家事だと思ってないよね?
まとめるのもゴミ出しの仕事の一つでしょ?
○○:なんでそんなに言われないといけないんだよ…
いろは:なんでって…
○○:はぁ…寝る
いろは:はぁ?デート行くって言ってたじゃん!
○○:そんな状態で行っても、2人ともきついだけだよ…
いろは:もう…知らない!
些細な事で喧嘩もするようになった
だけど…
○○:いろは…昨日はごめん
いろは:いろはこそ…ごめん
だけど、次の日には必ず2人共謝る
互いに相手の事を想えてるからこそ、一時の感情だけで物事を決定しない
それが2人で決めたルールだから
それから色々なことに最低限のルールも決めた
使った食器はは食べ終わったら必ずシンクに持っていく
トイレ掃除は一週おきに交代
寝るときは二人で一緒
とか...
でも俺たちがなにより一番大事にしてるルールがある
それは...
いろは:『ただいま~』
○○:『おかえり!』
無事に帰ったことを知らせる言葉と、迎える言葉
この幸せの言葉を言い合える関係性
これが聞けるだけで、安心するから必ず帰宅時は言うようになった
いろは:ねぇ!聞いて!
今日こんなのもらっちゃった!
○○:えぇっと...
△△芸能事務所...芸能事務所!?
いろは:いつもの所で歌ってたら、女の人がこの名刺を渡してくれたの!
うちで曲を出してみないかって
○○:すごっ!
ギュ
○○:おめでと!いろは!
いろは:うん...うん!ありがと!
『ただいま』からいいお知らせがあったら、嬉しいですよね!
...fin
お久しぶりです。
本日資格試験受けて、無事終了しましたので、
本日この更新を持ちまして活動を再開いたします。
他の作品はなにも書けておりませんので、
かなり不定期での更新となると思いますが、よろしくお願い致します。
スーパーサブ
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