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好きなものは...


ここに1つのリモコンがある

これ一つで、TVをつけることができたり、エアコンをつけることができる便利なものだ


ただ...


柚菜:今日はロッテの試合見るの!

○○:だから!今日は代表戦あるから家で見ろって言ったよな!

柚菜:それじゃ意味ないじゃん!

○○:どういう意味があるんよ

柚菜:それは...
とにかくロッテの試合にして!

○○:だから家で見ればいいじゃんよ

柚菜:いや!!

○○:おい!柚菜!
リモコン返せ!!

柚菜:やだよーだ!
悔しかったら取り返してみな~

○○:こいつ....



はぁ...めんどいな...
あっお見苦しい所をお見せしました
中西○○といいま...


柚菜:あっ!ついた!
さてと、今日のスタメンは...
あっ!荻野選手出てる!!よしよし
○○何そこに突っ立ってんの?早く隣来なよ

○○:...



この暴君...


柚菜:今柚菜の悪口言ったでしょ!

○○:...言ってない

柚菜:ほんとかな~

○○:...うん

柚菜:間があるんだよな~

○○:...ほら始まるぞ

柚菜:ほんとだー!



こいつは柴田柚菜
小さい時から一緒にいた...いわば幼馴染だ
毎日何かと理由をつけて俺の部屋に来るんだけど...


柚菜:キャー!藤原選手打った!
ほら○○も早く隣座って!!

○○:...はいはい

柚菜:いけー!

○○:...スマホで代表戦のスタメンみよっと...
今日は...三笘...鎌田...久保...上田
うわ...見たかったな...

柚菜:○○見た?今のゲッツー!

○○:ん?...うん

柚菜:すごかったよね~
打ったバッターもすごく足が速いんだけどね!

○○:そーなんだーポチポチ

柚菜:...ちゃんと聞いてる?

○○:うん、聞いてるよ
(やべっ...柚菜がこのモードに入るとめんどい...)

柚菜:さっきから携帯見てたの知ってるからね

○○:...

柚菜:ねぇ...柚菜と一緒にいるのつまんない?

○○:...んなわけないじゃん


柚菜:...もう帰る

○○:ちょ...おい!

柚菜:来ないで!!



やっちゃった...
あぁなった柚菜はしばらく口すら聞いてもらえないんだよな...





○○の家を出て、2軒隣の私の家まで歩く道中...

柚菜:なんで○○の事も考えてやれなかったんだろ...
私ただの自己中な女じゃん...

一人反省会を脳内でしながら帰る
○○と好きなものを共有して、一緒に見ていたかった...


『来ないで!!』

ほんとは言いたくなかったこの言葉
あの時に見せた○○の悲しそうな表情
何度も何度も頭の中に再生される

柚菜:はぁ...


ガチャ
柚菜:ただいま...

弟:おねーちゃん、お帰り!
〇兄の所にいってたんじゃなかったの??

柚菜:...予定があったみたい

弟:そうなんだ!
じゃあ僕と遊んでよ!!

柚菜:...ごめん宿題あるから

弟:...そっか...


家族にまで八つ当たりして何やってんだろ...
はぁ...もう何もかもいやだ...


ピリリリ

ん?あっ、かっきーだ

柚菜:もしもし...

遥香:ヤッホー!

柚菜:かっきーはいつも元気だね笑

遥香:まぁね~
柚菜、○○君と喧嘩したんでしょ?

柚菜:...なんでかっきー知ってるの?

遥香:○○君から連絡来たのよ
『柚菜を怒らせちゃったから明日めんどいかもしれんけどよろしく』ってね

柚菜:...

遥香:柚菜の事だから、○○君と一緒に何かしたかったけど、強引にやっちゃった感じかな?

柚菜:...うん

遥香:やっぱね~

柚菜:かっきー...私○○に嫌われたよね...

遥香:嫌われてるなら明日めんどいかもなんて私に連絡する?笑
ずっと柚菜の事、気にしててくれてるんだよ、○○君は

柚菜:...グスッ

遥香:柚菜が○○くんの事、大好きなのはすごく伝わる
でもね...
相手の事も考えてあげたらもっとよくなるんじゃない?

柚菜:...柚菜にできるかな...

遥香:いきなりは難しいかもね笑

柚菜:うぅ...
どうすればいいかな...

遥香:柚菜がされて嬉しいことを○○君にしていくんだよ

柚菜:私が...されて嬉しいこと...

遥香:そ!
幼馴染なんだから○○君の好きなもの知ってるでしょ?

柚菜:...うん

遥香:じゃあそれをちょっとずつやっていくんだよ?
柚菜できる?

柚菜:...うんやってみる

遥香:よし!
じゃあまず明日ちゃんと謝ってから、ね?

柚菜:うん

遥香:じゃあまた明日学校でね

柚菜:うん、またね


柚菜:ちゃんと謝らなきゃ...


小さい時から常に一緒にいた○○
『幼馴染だから一緒にいたい』
ずっとこう思っていた...

だけどいつからか...

『○○の隣にいたい』
こう思うようになった


でも○○は柚菜の事なんとも思っていないんだろうな...
そう思ったから、柚菜の好きなものを○○にも好きになってもらいたい
だから毎日家に行って柚菜が好きなチームの応援を一緒にしようとした


柚菜:よし!明日○○とちゃんと話そう!




次の日...
柚菜:おはよ!

弟:あっ!おねーちゃんおはよ!

柚菜:昨日はごめんね

弟:ううん!大丈夫!

柚菜:また今度一緒に遊ぼうね

弟:うん!

柚菜母:あら、柚菜が起こしに行かなくても起きてる...

柚菜:おはよ!お母さん!

柚菜母:おはよ
今日なんかあったっけ?

柚菜:ううん!

柚菜母:...ふふっ
お弁当、もう作ってあるから早くご飯食べていきな

柚菜:うん...えっ?

柚菜母:行かなきゃいけないところがあるんでしょ?
大丈夫、柚菜ならちゃんと伝えられるから

柚菜:...うん!
ありがと!お母さん!





○○:ふぁ~、おはよ~姉ちゃん



アルノ:おはよ~

○○:今日大学は?

アルノ:今日は2限だけ~

○○:そっか

アルノ:でもゼミの研究してくるから帰り遅いと思う

○○:わかった~

アルノ:夕飯お願いしてもいい?

○○:うん
姉ちゃんのも作っておけばいい?

アルノ:うん、お願い

○○:わかった
じゃあ行ってきます


アルノ:○○...パジャマで学校行くの?

○○:えっ.../////

アルノ:ふふっ...ははは

○○:はっず///

アルノ:あ~、声かけなきゃよかった~笑

○○:うっせ!

アルノ:でもいつもしっかりしてるあんたが...珍しいね

○○:俺にもいろいろあるの!

アルノ:ふ~んニヤニヤ

○○:何?ニヤニヤして気持ち悪い

アルノ:お姉ちゃんに向かって気持ち悪いとはなんだ!

○○:...着替えてくる

アルノ:ついに我が弟にも春が来そうだ
あっ!これをゼミの俳句のテーマにしよう!



○○:じゃあ行ってきます

アルノ:いってらっしゃい~


ガチャ


○○:...あ

柚菜:お、おはよ...

○○:おはよ...

柚菜:あ、あのさ昨日は...

柚○:『ごめん』

柚菜:えっ?

○○:昨日、ごめんな

柚菜:なんで○○が...

○○:別に柚菜と一緒に居たくなかったわけじゃないんだ...
なんていうか...その...

柚菜:ふふっ、やっぱ○○は優しいね

○○:そんなこと...

柚菜:昨日は柚菜が悪かった
ほんとにごめんなさい

○○:...

柚菜:柚菜ね...
○○の優しさにずっと甘えていたの

○○:...

柚菜:その優しさに惹かれて...
○○がただの幼馴染ではなく...その...
異性として意識するようになったの

○○:...

柚菜:でもね...○○はそんなこと思っていなそうだったから...
だから柚菜の好きなものを知ってほしかった
でも...押しつけちゃってたね
ごめん


○○:...柚菜の好きなものは何でも知ってるつもりだったんだけどな

柚菜:えっ?

○○:地元が好きで、野球が好きで、バスケが好きで、具無しのクレープが好き

柚菜:...

○○:柚菜の事ならなんでも知ってるつもりだった
だけど...俺にとって一番大事なものに気づいていなかったんだな...

柚菜:それって...

○○:柚菜、ここまで言わせて...やらせてごめん

柚菜:ううん

○○:でもね...
俺も柚菜の事...好きなんだ

柚菜:嘘...

○○:毎日俺の部屋に来るし、柚菜可愛いのに彼氏全然作んねーし
来たら来たでわがまま多いし...

柚菜:...


○○:でもね...昨日『来ないで!!』って言われたとき...
自分の中にある何かが無くなった感じがして、すごく悲しくなったんだ
胸がキュっとした
そこで気づいたんだ...柚菜のこと好きなんだって

柚菜:○○...

○○:こんな閑静な住宅街で雰囲気も何もないけど...


柴田柚菜さん、あなたの事が好きです
付き合ってください!




柚菜:...グスッ

○○:えっ?

柚菜:...遅いよバカ!

○○:え~ここまでやってバカ呼ばわり?笑

柚菜:もう...
こちらこそよろしくね、自慢の彼氏さん?

○○:ふふっ
こちらこそ!




アルノ:あの~お二人さん?
家の前でイチャイチャラブラブするのはいいけど、時間大丈夫?

○○:えっ///

柚菜:///

○○:全部聞いてた?


アルノ:さぁ~?

○○:聞いてたな!!?

アルノ:ほれほれ
後10分で学校始まるぞ

○○:えっ!やば!
柚菜!行くぞ!

柚菜:う、うん!

ギュ

柚菜:///


アルノ:彼女の手をギュッと握って...
くゎぁ!青春だね~





それから...

柚菜:うわー!サッカーのスタジアムってこんなに大きいんだ!

○○:うん笑
あっ!ほら、応援始まるよ

『行け札幌! 勝利信じ 最後まで闘え!』

柚菜:すご...

○○:野球とはまた違った文化だからね
これを前後半ほぼ休みなくやるんだもん

柚菜:すごいね!
これだけの大合唱...
こんなところでプレイできたら楽しいだろうな


〇〇の好きなサッカーを観に行ったり...



『駆け抜けろホームまで 荻野貴司!』

○○:野球って一人一人応援歌あるのいいよね

柚菜:ね!
柚菜、ロッテの選手なら全員分歌えるもん!

○○:マジで?笑
俺も覚えよ...


お互いの好きを共有して、学んで...





○○:柚菜...


柚菜:ふふっ...いいよ


大人の色気を纏った柚菜と好きを重ねて...



彩:パパ!起きて!

○○:ん?…おはよ、彩

彩:おはよ!!


二人にとってかけがえのない宝物もできた






ここに1つのリモコンがある
これ一つで、TVをつけることができたり、エアコンをつけることができる便利なものだ


柚菜:○○...今日何見る?

○○:う~ん...こういう映画とかどう?

柚菜:いいね!じゃあそれにしよ!
彩が起きないようにイヤホンで、ね?

○○:ふふっ
じゃあ片方ちょうだい?

柚菜:うん!




相手を想いやり、好きなものを共有することで相手への理解が深まる

リモコン立ての近くには、式場で3人で撮った写真が飾られていた




...fin

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