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自慢の弟と妹は一番最初に...後編


蓮加:○○に言わなきゃいけないことがあるの

○○:...へっ?

蓮加:実は...


小さな命が宿ったの



○○:えっ?今日の式は大丈夫だったの?

蓮加:あんまり食べなかったし大丈夫だったよ

○○:そっか...
ギュ

蓮加:///

○○:嬉しい...嬉しいよ蓮加

蓮加:うん!私も!

○○:つらいこともあるだろうし、蓮加をサポートすることしかできないからあまり力になれないかもだけど...

蓮加:そんなことないよ
蓮加は○○が近くに居てくれるだけで安心するし、心強いから

○○:...そうか
つらくなったらすぐに言ってね

蓮加:うん、ありがと


小さな命を身ごもった蓮加

2人の宝物ができたとわかった時、○○は決めたことがある
それは...




『久保○○、日本球界復帰!?』



ワールドシリーズで大活躍した○○だったが、次の年FAになることが確実となっていた
メジャー球団によるマネーゲームによって取り合いが起こるだろう
誰もがそう思っていた...

その矢先の日本復帰


メディアはこぞって速報で報じ、号外すら配られるレベル
まぁ詳細は載っていないんだけどね...



蓮加:ほんとにメジャーはいいの?

○○:うん
もうメジャーで経験したいことは大体経験できたしね

蓮加:でも...

○○:いいの
慣れないところに来て、初めての出産は嫌だと思うし俺も怖いしさ

蓮加:それなら蓮加だけが日本に戻っても...

○○:やだよ...
一緒に居てよ...


蓮加:///
(○○がそんなこと言うなんて///)

ギュ

○○:ね?....だめかな....

蓮加:ううん!一緒に居よ!

○○:ほんと?やった!


俺は自分の力を試すためにアメリカへと渡り、もう野球人生の半分をアメリカで過ごしている
野球の世界最高峰で個人賞にあまり興味を示さず、ただ純粋に本場での野球を楽しんでいた

でも蓮加と結婚し身ごもったことで、野球をすることに責任が付いた
家族を養い守り抜くという責任が

そこからずっと考えていた
アメリカにいることで野球を楽しめているのは本当だ

だけど...日本と違い、アメリカは銃社会でもある
このご時世どこで銃撃戦が起きてもおかしくないのが、悲しい話だけど現実

そこに蓮加を巻き込みたくないし巻き込まれたくもない
夢を追い続けることは日本でもできる
そう考えてこの決断に至った




それからは日本球団の争奪戦
代理人を通じていろんな話が入ってくる
ソフトバンクが4年40億で獲得したいと言ってきたり、巨人が2年25億とか...
様々な球団が獲得に名乗りを上げた





...楽天を除いて



正直、ショックだった
日本に戻るときは楽天だろうって勝手に思っていたところもある

でも...
オファーは最後まで届かなかった...



蓮加:...○○?

○○:...ん?

蓮加:大丈夫...じゃないよね...

○○:...プロの世界だからしょうがないよ


そういって少しだけ笑った
蓮加の好きな笑顔ではないけど...

日本に戻る時は楽天だろうなと私も思っていたからびっくり
○○の精神を追い詰めないように、家ではTVもSNSも見ないようにしていたから情報は入ってこない
だから史緒里に連絡してこっそり聞くと...


メジャー挑戦を表明したあの日、○○はかなりの強硬手段をとっていたらしく...
それを球団側が未だに許していないとのことだった

でもそれもプロの世界
すぐに切り替えて次の球団を探し続けた

本人はピッチャーに専念したい気持ちもあったのか、今までDHのあるリーグを経験していないからなのか、パ・リーグを希望しているらしい


蓮加:もう決めたの?

○○:うん
ここなら蓮加の実家も近いから、安心かなって



ほんとに私の旦那は...
私を大事に思ってくれてる
ほんとにこの人に出会えて...この人と一緒になれてよかったと心から思う


ちなみに日本復帰に選んだ球団は...





『千葉ロッテマリーンズ』


誰もが想像しなかっただろう
白と黒を基調とした、ピンストライプのユニフォームを着るなんて

この年、エースの佐々木朗希が海外FA権を行使し、先発ピッチャーが薄くなっていた
そんな時に市場に流れた、大人気メジャーリーガ

一番熱心に誘ってくれた
それはお金じゃなくて...家族の生活援助というところで...

あとZOZOマリンであの大応援団の声援を受けてプレイしてみたかった
それが決め手だって
なんとも○○らしい



それからは日本への引っ越し・記者会見・お披露目等々、怒涛のように日々が流れていった

もちろん試合となれば○○は相変わらず勝ちを積み上げる
楽天戦はブーイングもあったが、それもお構いなくガンガン稼ぐ三振の山

私もおなかの中の子と一緒に見ていた
あなたもパパみたいにかっこいい人になってねと願いを込めて...


そして...



おぎゃ~...おぎゃ~


私たちの宝が生まれた



○○:かわいい...

蓮加:ね...

○○:ほんとに頑張ったな、蓮加

蓮加:へへっ...

○○:ありがとう
これからは一緒に頑張ろうな

蓮加:うん...
よろしくね、パパ

○○:ふふっ、わかったよ、ママ


○○も試合終わりに駆け付けてくれて、一緒に誕生を喜んでくれた


名前は『蓮希(はずき)』とした
男の子とわかった時から、これにすると決めていたらしい
私の名前の蓮を付けるなんて...○○、私の事好きすぎでしょ...

『蓮』は極楽浄土に咲く花とされ、仏像の台座である蓮華座の「蓮華」は、蓮の花の意味。すがすがしさと穏やかさを持った人に成長してほしいという願いが込められている
私も両親にそう教えてもらった
そこに『希』
○○と私の希望だから、だって...


私の同期3期生たちも毎日のようにお見舞いに来てくれた

美波:やっほ~蓮加

祐希:やほー

蓮加:あっ!梅!与田!

美波:赤ちゃんは...

蓮加:ふふっ...おいで


美波:か...かわいいぃ...

蓮加:梅がとろけた...

祐希:うん、これは誰でもそうなるよ

美波:手が...手が...可愛すぎる

蓮加:…梅ってこんなキャラだったっけ?

祐希:彩ちゃんに対してずっとそんなんだったじゃん笑

蓮加:あ、確かに笑

祐希:でも...小さい子はぐっってしたくなるとかも言ってなかったっけ?


蓮加:...うめ~、それ以上近づくのやめようか

美波:...かわいい

蓮加:おーい、梅澤さん~?

美波:...はっ!

祐希:はぁ...

蓮加:与田にため息つかれてるよ笑

美波:...うぅ...

祐希:名前は...はずきか...すごくいいじゃん!
向井の葉月さんも喜んでそう笑

蓮加:はづはもう、大喜びよ笑
この病室で大号泣したんだから笑

美波:なんかその光景、目に浮かぶね

祐希:うん笑


ガラガラ
史緒里:蓮希ー!


美波:ちょっと!久保!
ここ病院!

蓮加:梅、久保は毎日こんな感じ笑

美波:はぁ...あんたね~

蓮希:おぎゃ~...

蓮加:あぁやっぱり...

史緒里:あぁごめん...

美波:あんたが大きな声出すからでしょ!

史緒里:うぅ...


そういって笑いあう
同期だからこそのこの空気感が病室を暖かく包み込む


蓮加:そういえばみんな、バスラ行く?

美波:私は行くよ

祐希:私も!

史緒里:私は...ドラマの撮影がはやく進めば、かな

蓮加:...そっか...

美波:蓮加は?

蓮加:この子連れていこうかなと思うんだけど...
赤ちゃんに大きい音はどうなのかなって...

美波:確かにね...

祐希:じゃあ挨拶だけ行って、メイク部屋で見てれば?

史緒里:確かに!それがいいよ!

蓮加:じゃあそうするか...


史緒里:ってか今日○○は?

蓮加:今日は試合だって…
きのう来た時にそう言ってなかった?笑

史緒里:あれ?明日じゃなかったっけ?

蓮加:ローテがどうとかこうとか言ってたよ笑

史緒里:あぁ!そうじゃん!今後の10連戦に向けてローテ変えるって報道出てたの忘れてた!
ソフトバンクとの試合じゃん!
私帰るね!じゃ!


美波:...嵐みたいなやつだな笑

蓮加:うん...
それが最近の久保さんよ笑





そして...

咲月:蓮加さ~ん!

蓮加:久しぶり~


咲月:お久しぶりです!!
あぁ!かわいい...

蓮加:ふふっ...
はず~、咲月ちゃんだよ~

蓮希:ああ...うう

咲月:可愛すぎる....もう私昇天しそう…幸せ…

茉央:さつ...あぁ!蓮加さん!

奈央:ほんとだ!

蓮加:やっほ~

茉央:お久しぶりです!

奈央:赤ちゃん!...かわいい...

蓮希:あう...

蓮加:ふふっ
みんな可愛いね~、はず~


○○:あっ!いたいた
蓮加~、おいてかないでよ~

蓮加:ごめんごめん笑

咲月:○○さん!

○○:あっ!咲月ちゃん...?

咲月:そうです!お久しぶりです!

○○:久しぶり、元気そうだね

咲月:はい!
あっ...同期の...

茉央:五百城茉央です!

奈央:冨里奈央です!

○○:久保○○です、蓮加の後輩ちゃんたちだよね?

蓮加:うん!

○○:ふふっ、頑張ってね

奈茉:はい!

奈央:あのっ!赤ちゃん抱っこさせてもらってもいいですか?

蓮加:ふふっ、いいよ

奈央:やった~♪



それからは5期生大集合
みんな蓮希を可愛がってくれた


これだけ会ったことない人に囲まれてるのに泣かなかった蓮希
大器の片鱗なのか、パパ譲りの美人に好かれる性格なのか...


6期ちゃんたちはリハ中らしく会えなかった...


だけど…


遥香:蓮加さん!

蓮加:あっ!かっきー!

遥香:また一段ときれいになられて...

蓮加:それはかっきーもでしょ?笑

遥香:ふふっ、あっ!○○さんもお久しぶりです!

○○:久しぶり!

遥香:聞いてください!私、また開幕戦の始球式することになったんです!

○○:そうなの!?また神宮?

遥香:いや、東京ドームです!

○○:おぉ!また大きなところで笑
頑張ってね!

遥香:はい!

柚菜:かっきーマネージャーさんが呼んで....あっ!
蓮加さん!

蓮加:柚菜!久しぶり!

柚菜:お久しぶりです!
○○さんは、球場で見てるからあまり久しぶりではないんですけど笑

○○:そうだね笑
いつも挨拶してくれてありがとね

柚菜:いえいえ!だって我らのエースですから!
ほんとにロッテに来てくれてありがとうございます!

○○:それ前に彩ちゃんにも言われたよ笑
こちらこそ、いつも大声援をありがとね

柚菜:だって○○さんが来てくれたから、久しぶりに日本シリーズまで行けたんですもん!
今年もお願いしますね!

○○:うん、頑張るよ

遥香:柚菜~、さっきマネージャーさんが呼んでるって言ってた?

柚菜:うん、言ってた

遥香:わかった
じゃあ蓮加さん、○○さん、楽しんでくださいね

蓮加:ありがと、かっきー
メイク部屋で見てるね

遥香:あっ...そっか...
赤ちゃんいるんですもんね

○○:ごめんね

遥香:大丈夫です!
蓮加さんと○○さんに向けていっぱいレス送るんで!

蓮加:かっきー、やっぱあんたいい子だよ

遥香:やった♪蓮加さんに褒めてもらった!

蓮加:じゃあライブがんばってね!

遥香:はい!


そのライブはとても楽しく、中継映像を見ていても楽しさが存分に伝わってきた


そのライブ会場からの帰り道

蓮加:やっぱ乃木坂のライブは楽しいな...

○○:ねっ!ほんとに

蓮加:...

○○:蓮加?

蓮加:...○○はいつまで現役でやる?

○○:ん?そうだな...
まだちゃんと決めてないかな~

蓮加:そっか...

○○:でもなんで?

蓮加:私がこうやって後輩たちの頑張りを見るように○○にもそういう日が来るのかなって...

○○:寂しくなっちゃった?

蓮加:コクッ

○○:も~、可愛いな~

蓮加:///

○○:あっ!でもこの子が大きくなるまではやってたいな...

蓮加:そっか...
野球はやらせたい?

○○:う~ん...これは悩みどころなんだよね...
野球を楽しいって思ってくれれば、やってほしいなと思うけど...
サッカーでもバスケでもバレーでも、ダンスでもゲームでも楽しいって思ったことをやって居てくれればそれで十分かな

蓮加:ふふっ...
やさしいパパでちゅね~

蓮希:きゃはは



数年後...

蓮希:パパ~、僕の球受けてよ!

○○:いいよ~
さっ!こい!

蓮希はパパの影響を受けて野球を始めていた
一応サッカーとかもやったんだけどね
「パパといっしょがいい!」言われちゃってね…



蓮希:ふんっ!

バチッ

○○:おぉ~!ナイスボール!

蓮希:ほんと?やったー!

○○:すごく練習しただろ?

蓮希:うん!だってパパみたいになりたいもん!

○○:そっか...

ビュ



ズキッ
○○:(最近投げると肩が取れそうになるみたいな痛みが走るんだよな...)

蓮希:パパ?

○○:ん?あぁ、ごめんごめん
投げてきていいよ

蓮希:うんっ!

蓮加:...



その晩...
蓮加:○○...

○○:ん?どうかした?

蓮加:肩...痛いの?

○○:...蓮加にはごまかしがきかないか...

蓮加:...

○○:この前の試合からそうなんだよね...

蓮加:そっか...蓮加に何かできる?

○○:...このまま一緒に居て?

蓮加:大丈夫だよ、一緒に居るから

○○:...うん...Zzz

蓮加:(○○...もしかして...)


そのシーズン、○○は痛みをごまかしながらプレイを続けた


そして...




久保○○選手が今季限りで現役を引退することとなりましたのでお知らせいたします。
本日10月31日、球団に本人より引退の申し入れがありました。

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...



痛みを抱えた中で13勝していた○○
32歳、まだやれる、息の長い選手となるだろうと
皆がそう思っていた

だけど、体はすでに限界だった
肩の疲労はすでに限界に達し、それを庇っていた肘も痛みが再発
メジャー時代に1シーズン休んだだけだけど早くから活躍していた分、体に蓄積したダメージは癒えなかった



史緒里:グスッ...グスッ

蓮加:...史緒里

史緒里:○○...はやいよ...

蓮加:...

○○:姉...ちゃん?

史緒里:○○ー!

ギュ

史緒里:...

○○:ごめんね、姉ちゃん

史緒里:謝らないでよ...
寂しいけどさ...

○○:...

史緒里:...おつかれさま

○○:グスッ...ありがと

蓮加:...

○○:蓮加...
俺...野球選手じゃなくなっちゃうけど、まだ一緒に居てくれる?

ギュ

蓮加:当たり前じゃん!!ずっと一緒に居るし!!
蓮加の...大好きな人...だから

○○:ありがと...


蓮希:パパ...野球選手辞めちゃうの?

○○:蓮希...

蓮希:...おつかれさま

○○:蓮希...ごめんな

蓮希:ううん...また僕とはキャッチボールしてくれる?

○○:あぁ、もちろん

蓮希:やった!
約束だよ?

○○:うん、約束


野球選手の辞め時は、潔くか、気が済むまでかの2択と言われている
俺は…大舞台に立ってかっこいい姿のまま現役を終えたかった
息子にケガで苦しんでいるところを見せたくなかった…



まだ早いと言われる32歳で引退を決意した
プロである以上、自分の身体の状態は自分の価値に直結する

ケガを受けて向き合って直しながらプレイしていくことも考えた
だけど自分の100%の力を見せれない体の状況で、自分にまだプロである価値はあるのだろうか
そう自分に投げかけた時に、プラスの言葉は自分から返ってこなかった





プロ野球選手 久保○○としての人生は今日まで
でも明日からは次の自分の人生が始まる

野球選手になりたい
将来の夢にそう書く少年は多くいる
だけど実際になれるのはほんの一握り

そんな中、自分は野球選手になれた
好きな野球で酸いも甘いも経験した

だからこそ選手ではなくなることの決断はすごく難しいものだった
蓮加にも何回も何回も相談して…
そして決めた自分の決断
そこに後悔はない


引退後の夢は?
そう聞かれたら、迷いなく野球の良さを多く知ってもらうために自分ができることをすること
そう答える


人は夢を2度見る
乃木坂の楽曲にもある、姉のセンター曲

叶うまで何度でも夢を見よう、そう歌ってる

だけど俺にとっては次の夢
それを叶えるために夢を追いかけ続ける

夢に挑戦することの美しさを教えてくれたこの曲とともに
次の人生をスタートさせる


いろんな人にたくさん頑張れをもらって、夢を見せてもらっていたからこそ、今度は俺が還していく番

野球が大好きだから…
今度は誰かの夢を応援してあげられるように…









…fin


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