Cafe おままごと③
あのカフェに何か返せるものはないか...
それをずっと考えてる
あやめ:アルバイトって言っても...
園児の子たちが接客じゃ...学生は邪魔だし...
かといってSNSで発信しちゃうといろんな人が来ちゃうから...
どうしよう...
ずっとそれだけが頭の中をぐるぐるしてる
でも...それを考えていられるときは幸せだなと感じる
家に帰れば親の妄想に付き合わされ...
兄を軽蔑こそしないけど...邪険に扱う家族を見て心が疲弊して...
勉強もあまり力が入っていないし...
私って将来何がしたいんだろう
何者になれるのかな...
カランカラン
??:いらっちゃいませー!
えぇっと...初めて見る子だ...
すっごい元気だな...
あやめ:えぇっと...一人です
??:ごあんないしまーす!
凄い元気な子なんだけど...
めちゃくちゃ可愛い
??:こちらへどーぞ!
あやめ:...ありがと
??:こちらメニューです!
あやめ:...はい
ねぇ、お名前聞いてもいいかな?
??:かわさきさくらです!
あやめ:桜ちゃんか
いい名前だね
桜:えへへ//
あやめ:じゃあ注文決まったら、またお願いしていいかな?
桜:はいっ!
ペコッ
すごい丁寧なお辞儀
育ちがいいんだな..
私の5歳の時なんて、礼儀なんて知らなかったもんね...
今日はどれにしようかな...
あっ!これおいしそう...
あやめ:桜ちゃんいるかな...
桜:チラッ
あやめ:あっ!いた
ぴょこぴょこと桜がやってくる
桜:ごちゅうもんどうぞ!
あやめ:えっと...この5番と9番、お願いします
桜:はいっ!おまちください!ペコッ
そういうとまた綺麗なお辞儀を見せてくれて、そのまま裏へとスキップで戻っていった
今日はあの子一人なのかな...
今まで何回かここに来たけど、その時に居た咲月ちゃん、奈央ちゃん、彩ちゃんはいなそう...
その時に聞こえていた保育所の声にはもう少し違う子もいたのかなって思うけど...
桜:おまたせしましたぁ!
こちら5番のコーヒーと...
○○:9番の季節のフルーツとホットケーキです
桜:あぁ~!桜がもってきたかったぁ!
○○:さくたんのはキッチンにおいてあるから自分で取ってきな~
桜:ほんと!?やったー!
○○:落とさないように慎重に持ってくるんだよ?
桜:はぁ~い!
○○:ふふっ
毎週ありがとね、あやめちゃん
あやめ:いえ...
○○:それで...何かあったのかい?
あやめ:へっ?
○○:ずっと下向いてるかと思ったら、キョロキョロしたりして...
何か相談ごとあるなら聞くよ?
あやめ:...あの...ここってアルバイトとかって募集してないですよね?
○○:...うん
あやめ:ですよね...すみません
○○:いや...こちらこそごめんね
でもなんでアルバイトを?
あやめ:いつもここに来ると心が温かくなって...
ここで働いていけたら、何か貢献できるんじゃないかって思って...
○○:...そうか
一つ聞いてもいいかい?
あやめ:はい
○○:あやめちゃん、君の夢は何だい?
あやめ:夢...ですか?
○○:うん
夢...
自分が将来こうなりたいとかあまり考えたことがない
高校も親に決められたし、部活とか趣味とか特にこだわりがあってやっていたわけでもない
こうやって振り返れば、自分って何のために生きてるんだろう...
桜:もってきたぁー!
○○:おっ!じゃあ座って食べたりお話ししたりしようか
桜:うんっ!
ねぇ...きって~
○○:あぁ、はいはい笑
はいどうぞ
桜:ありがとっ!
パクッ
うま~
○○:ふふっ、よかった
桜:おねえちゃん、なにかんがえてるの?
○○:将来の夢について考えてるんだよ
さくたんの夢は?
桜:さくは...フィギュアスケート!
○○:おぉ!いいね~
今もやってるの?
桜:うん!
ママにつれてってもらって!
○○:そっか、楽しい?
桜:うん!すっごくたのしいよ!
高校までの自分の人生
楽しいなんてあまり思ったことがない
親にはテストで90点以上取ったら初めて褒めてもらえたのは嬉しかったけど最近は...
後はレイとお話してるくらいかな...
あやめ:...夢....わかんなくなっちゃいました...
そういって彼女は力なく笑う
あやめ:自分が何をしたいのか...
私も桜ちゃんみたいの時にはあったはずなのに...
○○:...
子供と接する仕事をしているのもあるが親が保育士だったこともあって、いろんな親御さんとお会いするけど...
いい子に育てなきゃ、頭のいい子にさせたくて無理やり塾とかに行かせてる、っていう親の子供には、本来の自分を見失う子が多いと思う
もちろん東大を目指せるような子供は自慢できるだろうし、親としての評価も上がるのかもしれない
じゃあ頭の良さだけで、子供の良し悪しを判断するのか?
持って生まれた才能だけで人を判断するのか?
それは違うだろう
"優秀でいい子"であることが果たして正解だろうか
親に何も言えず、大人の言うことに従順で、顔色を伺って生きることほど生きづらいことはない
あやめちゃんはそういった親の元で育ってきたんだろうな...
完璧主義というか...親御さん自身も優秀に育てられたから、同じように育ててきたのかな
だからこそできない自分とのギャップに違和感を感じてしまう
この世にあなたという存在はあなたしかいないんだから、それぞれの生き方でいいのに…
○○:じゃあ質問を変えよう
あやめちゃんはどうして勉強を頑張って来たの?
あやめ:...お母さんに褒めてもらいたかったから...
○○:そうか...
じゃあ勉強ってなんのためにやってるの?
あやめ:なんの...ため...
○○:すごく意地悪な質問かもしれないけど、数学とか化学とか日常生活で使う?
あやめ:...使わないです
○○:だよね
じゃあなんで?
あやめ:...なんでだろう
○○:ごめんね、こんな意地悪な質問で
でも、これに対するあやめちゃんの答えが欲しいな
しばらく考えた
考えたけど…それが合ってるかなんて自信がない
あやめ:...生きていくため...とかですかね
○○:おぉ!いい答えだね
なんでそう思ったの?
あやめ:...学歴が物をいうこの世の中で、自分の経歴を作っていくには...
与えられた課題に対して答えを出していかないと、証みたいなものを得られないから
○○:学歴のために...ってことでいいのかな?
あやめ:コクッ
○○:じゃあ...さくたんは?
あやめ:えっ?
(この子...園児だから勉強は...)
○○:さくたんはお勉強好き?
桜:うんっ!
○○:どうして?
桜:しらないことをいっっぱいしれるから!
○○:ふふっヨシヨシ
桜:えへへ///
○○:この子の親御さんはね、中学校の先生なんだ
だから家にいろんな教材があってね
それを面白そうに見てるんだって
あやめ:すごい...
○○:だから...この問いは生涯ずっと考え続けながら、生きていかなきゃいけないんだろうなって思うよ
あやめ:そう...ですね...
○○さんは?
○○:俺?
あやめ:はい、どう考えているのかなって...
○○:俺は...
自分の引き出しを増やすために勉強するって思ってるかな
あやめ:...引き出し...
○○:そう
そういった意味ではさくたんの考えに近いのかもしれないけど
知らないことを知って、それが自分自身を表現する何か一つのヒントになるのかもしれない
あやめ:ヒント探し...
○○:そうだね
それに...
あやめ:それに?
○○:...物事をいろんな角度で見れるからいろんな考え方を知れる
文系と理系で物事の観点って違ったりするじゃん?
でもどちらの考え方も自分が生きていく中での、選択肢になり得る
その選択肢を増やすために勉強ってするんじゃないのかなって思ってる
あやめ:確かに...
○○:だからさ...一つの同じ作業でも考え方やものの捉え方は違うんだよね
だから正解なんてないんだよ
あやめ:...
○○:日本人だから答えをどうしても求めたがるけど、何個も答えなんてある
夢に向かって頑張ることももちろん素敵
でも今、夢がないからって生きてる意味がないとかは全く思わないよ
今夢がないなら、まだこれから見つけられる伸びしろはあるわけだし
あやめ:...
○○:だから、もしあやめちゃんがこのカフェで働きたいと思ってくれたなら...お願いがある
あやめ:なんですか?
○○:いっぱいいろんな世界を見て学んで、うちに還元してほしい
あやめ:それって...
○○:"あやめちゃんだけ"の、正社員としての求人ってところかな
夢とまではいかなくても、あやめちゃんの考える将来の自分に近いなら...
ここで働いてくれないかな?
あやめ:いいんですか!?
○○:もちろん
もしあやめちゃんのやりたいことにつながってくれるなら、こちらとしては大歓迎だよ
あやめ:...私...やりますっ!
やらせてください!
○○:ふふっ
じゃあ今度は自分のために勉強して、ね?
あやめ:はいっ!
○○:ふふっ
楽しみにしてるね!
あやめ:頑張りますっ!
この日、自分の将来の目標が一つ決まった気がする
自分が生きる意味...って言っちゃうと重くなるけど
自分が頑張る理由を作ってくれた気がするから
ほんとに感謝しかないな...
To Be continued...
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