私記4

 庭のつつじが満開になった。むかしはぜんぶあざやかなピンクだったのがいまは半分以上が真っ白に咲く。土がアルカリ性か酸性かで花の色が変わるらしいがちゃんと調べていない、調べたところでハアーといっておわりなので調べていない。歳とったから白くなったんだ、人間といっしょ、と感覚的にケリつけておくほうが性に合っている。そばでみると白いほうが陽に映えてきれいだ。四月がいつの間にか終わった。いつもの比じゃなくさっさと終わった。三月がだらだら続いて急に五月になった感じだ。不安はあるけど、毎年調子にのってるからだよ、ざまあみろというほうが正直なところで、しっかり顔を合わせずにすんだからしめしめと思っている。さっきたばこを吸うのにベランダに出たら西日が眩しくて暑かった。近所のおばあちゃんたちが犬の散歩を口実に路端で集まってまいにち喋っていて(犬はそのあいだきちんと座って待っている)、大丈夫かなと思う。犬が。同居している祖母が異常に怖がって、洗濯ものを外に干してもすぐ取り込んでしまうから閉口している。飛沫感染が主だから洗濯物は大丈夫なの、と毎度言い聞かす、半日後には忘れている。耳の遠い老人にいまさら安心と安全との違いを話すのもめんどうだし、なにしろ半日後には忘れるので、日に何度も洗濯ものが内外を往復するのに甘んじている。黙ってやっていればどなることもないし、ほかの家族のどなり声や聞こえないのをいいことにした嫌みも聞かずにすむ。めんどうだねえ。することがなくなって、十だったのが五になるもんだと思っていたら、五になってからべつのもので九まではいった感じ。充実と窮屈はちがう。しなければならないと言われていることがなにより先にきて戸をドンドン叩くので、ベランダからその頭上に灰を落として追いはらっている。


本買ったりケーキ食べたりします 生きるのに使います