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風の記憶、時の雫

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note をはじめてみようと思う。 秋晴れの空を眺めていたら、風がやってきて、 そのときにふと思ったわけです。
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2018年6月の記事一覧

もしもの向こう側

もしも心が折れそうになったら 今より広い景色のなかに行ってみませんか 今まで行ったことのない空にも 雲が悠々と流れています もしも心が張り裂けそうになったら 今より青い景色のなかで叫んでみませんか 今まで通りすぎていただけの夏野にも 草が覆い茂っています もしも伝えられない想いが一杯になったら 誰も知らない空を眺めてみませんか 今まで感じたことのないような 風が吹き上げていきます もしも生きて行くのに疲れたのなら ひとりだけで土手に寝そべってみませんか 今まで踏みつける

青葉若葉の候

沖縄では梅雨があけて夏本番を迎えている。 だが、その他の地域はまだ梅雨真っ盛り。 一時的に晴れ間が続いているだけだ。 雨は降らないまでも雲が覆うような日は、 空に蓋をされているようで蒸し暑い。 こうなると結構閉口する。 少しポジティブに考えをスイッチさせよう。 「青葉若葉」という言葉がある。 似たような言葉がふたつ連なっているが それにわけがある。 古では「若葉」は草の若い葉と木の若い葉と 区別はされていなかったが、近世になって 若葉といえば木の生えたばかりの瑞々しい 葉

梅雨寒(つゆざむ)

今日は朝からこの時期としては気温が低く さしずめ「梅雨寒」といったところ。 いわゆる梅雨冷えだ。 梅雨の長雨の合間にやってくる季節外れの 寒さのことだが、これが体調管理を難しくする。 近くの水田では田植えがほぼ終わった。 植えられたばかりの幼い苗が規則正しく並ぶ。 9月には黄金の穂波にゆれるそのときまで 梅雨寒の雨降る日も、夏のうだる暑さにも 耐えながら、それを栄養として実りを迎える。 同じ時間が流れているようで 実は固有の時間が流れている。 過去を悔いても、現在を嘆いて

無力という力

今朝8時になろうとしているとき 突然揺れを感じ、誰かが地震だ!と叫んだ。 朝の連続テレビ小説を待つ画面が ニュース速報に切り替わる。 大阪府北部で震度6弱! その数字を見るや一瞬、23年前の 阪神淡路大震災のことが脳裏をよぎる。 昨日は群馬県南部で震度5弱の地震が起きた ばかりである。それ以外の地域でも 震度自体は小さいが体感地震が頻発している。 日本列島は地震の多発する国土なのだと 改めて知らされる。 地震や火山の噴火などは人間が押さえ込める ものではないし、またそうす

はかなきこと

時間を止めることが死なら ぼくは死を選ぶかもしれない でもその後で気づくだろう 止まった時間はぼくの時間だけで 周りの時間は止まることはない 死が時間を止めても 周りで進んで行く時間に ぼくは居なくなるだけだ さらに時間が進めば 記憶にすらぼくの時間はなくなる それが安堵につながることはない 独り善がりは 悲しみを超えることはできない 悲しみの広がりさえ気づけない 死は孤独な時間しか招かない 時間を止める方法がないのなら より善く生きることを選ぶしかない 一日でも 一時

君に届け

開け放した窓を突き抜ける風 わずかばかりの時間を串刺す 風が木々の小枝をゆらす音か 蒼空に隠れてさえずる雲雀か 電線に留まって鳴くカラスか それ以外の音はないに等しい 掛けたばかりの白いカーテン レースがフィルターになって 眩しい景色をやわらいでいる ラジオを付ける気も起きずに 読みかけの本の頁をめくる音 それだけが聞こえる昼下がり 私に許された時間いっぱいに 初夏を覆う故郷の風の便りよ 疲れた君に届け 心を病んだ君に届け 笑顔を忘れた君に届け

目的地のない時間

ひとり 電車に乗って 窓側の席に坐る 今日のぼくには 目的地はないが 電車は時間通りに 目的地に向かう 絵巻物のように 景色が移り行けば 目的地のないぼくも 心が躍る 海岸線を走る ローカル電車の軌道に 初夏を突き抜ける 風が走る 鈍行電車は ぼくのようだ 一つひとつ 息継ぎをしながら走る 目的地につなぐ レールが安堵で軋む ぼんやりとした不安は 消えて 期待で膨らんだ 顔が笑う 今日のぼくには 目的地はない それが目的だから

石の角

若過ぎることを言い訳にできるなら ぼくは涙ぐむこともないだろう ただ想いのまま突っ走ることもできた 老いたことを言い訳にできるなら どんなにか心が軽くなるだろう ただ人生の黄昏に身を任せることもできた 青い時代もぶつかっては足掻いていた 色が抜けた時代ももがくことを忘れていない つながった一本の時間のなかで 揺れ動くには一人はさみしすぎる どこかに揺るぎない自然というものがあり 心を重ねることで余熱は沈静化していく 人の考えの及ぶことはたかが知れている 海に流れ着いた石